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ジョアンナ・メイシーさんに学んだ、地球とつながりを思い出す「全生命の集い」 [Re-member Journey 002]

コクリ!プロジェクト(以下、コクリ!※)」そして「地球コクリ!」の提唱者である三田愛さんと、いけばなの叡智をビジネス界につなげる活動をしている華道家の山崎繭加さん。友人同士ふたりの対話を通じて、「地球コクリ!」で今まさに起きていることを描き、それが社会やビジネスにどのような意味合いがあるのかを考えていくコラム連載「Re-member Journey」。

第1回では、コクリ!から地球コクリ!(地球中心・生態系全体のコ・クリエーション研究)へ、人間中心から地球中心へと進んでいった経緯から対話を始めました。そのときにも示された、「Re-member」という世界観。今回は「Re-memberってなんだろう」という問いを持ちながら、対話を進めていきます。

※地球コクリ!での探究の様子は、連載「Re-member 人間中心から地球中心へ」をご覧ください。

山崎繭加(やまざき・まゆか)

山崎繭加(やまざき・まゆか)

華道家。マッキンゼー、東京大学助手を経て、2006年から10年間、ハーバード・ビジネス・スクール(HBS)日本リサーチ・センターへ勤務。2017年、華道家として独立し「いけばなの叡智をビジネス現代の社会に伝える」を理念としたIKERUを立ち上げ。同時に、DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー特任編集委員、上場企業2社の社外取締役を務めるなど、経営・経営学の分野にも身を置き続けながら、東洋的叡智と経営の統合を模索している。2020年より軽井沢在住。
東京大学経済学部、ジョージタウン大学国際関係大学院卒業。


 三田愛(さんだ・あい)

三田愛(さんだ・あい)

「コクリ!プロジェクト」創始者/株式会社リクルートじゃらんリサーチセンター研究員 兼 サステナビリティ推進室/英治出版株式会社フェロー
集合的ひらめきにより社会変容を起こす「コ・クリエーション(共創)」の研究者。地域イノベーター、首長、企業経営者、官僚、農家、クリエイター、大学教授、社会起業家など、約300名のコミュニティメンバーと共に実証研究を行う「コクリ!プロジェクト」創始者。現在は自然と人間の分断を超えた共創をテーマに「地球生態系全体のコ・クリエーション(地球コクリ!)」の研究に取り組む。米国CTI認定プロフェッショナル・コーチ(CPCC)。内閣官房、国土交通省、経済産業省など官公庁での各種委員を歴任。

Re-memberが地球コクリ!の核になった理由

繭加 前回、愛ちゃんから、人間もあらゆる生きとし生けるものと同じように地球をつくる一部だ、ということを思い出すためのRe-memberというアニメーション動画をつくったという話を伺いました。そもそもこの「Re-member」、思い出すことが大切、という考えはどこから来たのですか?

 社会活動家で仏教哲学者でもあるジョアンナ・メイシーという方が、「つながりを取り戻すワーク」を提唱されています。それは、感謝し、世界の痛みを受容し、自分が世界と他のあらゆる生き物とつながっていることを感じ、行動する、という個人と社会の変容を促す方法論です。

中央(右)がジョアンナ・メイシー。左隣が愛さん

 ジョアンナからこの方法論を直接学ぶインテンシブコースに6年前に参加し、中でもとりわけ印象的だったのが「全生命の集い」というワークショップでした。

自然界にある植物、動物、鉱物などの中から自分が代弁者になりたいと感じるものを選び、そのものになりきって対話をするというワークショップです。とても素晴らしい経験で、いつかコクリ!でもやってみたいとずっと思っていて、地球コクリ!についてブレストしていたコアメンバーで、まず全生命の集いをやってみたのです。

代弁者となる生命のお面をつくり、その生命体として生きる気持ち、嬉しさや痛みなどを対話していきます

もともとのワークショップのエッセンスを大切にしながら、完全オンラインでの実施にチャレンジしました。オンライン開催だからこそ、短時間で効果的に、また各自の没入度も高い場が作れたと思っています。普段の「人間」の立場にいたら出てこない発想が生まれました。

オンラインで実施した「地球コクリ!版全生命の集い」ワークショップの様子

いけばなもRe-memberの体験

繭加 人が花と無心で向き合い花をいかす、というのがいけばなの原点で、そこから長い歴史の中でさまざまな型や理論、作法が確立されてきました。私がIKERUでやっているのは、型や理論などからいったん自由になり、花をいかすという行為をただ純粋に楽しむ、つまりいけばなのシンプルでプリミティブな原点に立ち戻る場をつくる、ということです。そして、いけばなの原点に立ち戻ることで、自分自身も本来ある状態に戻っていく、という感覚があります。これも「Re-member」の体験なのかも。

例えば、IKERUの活動の一つに、野草を摘んでいけることを日常の習慣にする「野草一会のリズム」があります。子どもの頃、道端の花を摘んでコップにいけたり家に飾ったりしていた人は多いはず。そういった行為を再現することで、そこにあった大切な何かを思い出してもらえれば、という願いでやっています。

 自分、さらには人類の原体験を思い出すきっかけは人それぞれなので、いろんなRe-member体験を用意していくことで、より多くの人を巻き込んでいけるかもしれないですね。Re-memberのプロジェクトでも、アニメーション映画だけでなく、歌、詩、食、アートなど、さまざまな表現手段を取り入れています。

自分が変わることで世界が変わる

繭加 「全生命の集い」などのRe-memberの体験を重ねてきた中で、愛ちゃん自身の考え方に変化はありましたか?

 「人間」以外の部分に感覚が届くようになったと思います。たとえば、温泉に行った時も、温泉がどうやってできたかに思いを馳せたら、そこに深い感謝が生まれました。長い時間をかけた自然の活動があるからこそ、私たち人間は温泉を楽しめている。太陽や自然のおかげで、地球上に住む私たち人間が生きていける。感謝が人間や時間軸を超えて広がっていくようになりました。

繭加 その感覚があることで、日々の過ごし方や目の前の仕事、組織への向き合い方も変わりましたか?

 自分が整っていることで、相手との関係性も変わってきているかもしれません。私はリクルートの社員として働きながらコクリ!をやってきていて、これまでは会社に受け入れられるためにどうやったらコクリ!をよく見せられるか、どうしたらわかってもらえるか、という意識で会社ともコミュニケーションをしていたところがあったな、と思います。

今は自分自身がそのままの状態で伝えて、同時に相手の文脈や意図もそのまま受け取るようになってきていますね。それが結果として、自然と社内での認知やサポートにつながっている感覚がある。実際、社内のポジションとしても、地域研究を行うじゃらんリサーチセンターの研究員に加えてサステナビリティ推進室も兼務になりました。サステナビリティ推進室のメンバーは地球コクリ!を個人としてだけでなく仕事としても応援してくれていますし、リクルートの中に地球コクリ!のエッセンスをいれていく活動を進めています。気づけば、組織の中で堂々と自分の直感に従って地球コクリ!の活動を進めていける環境ができてきた、という気がします。

繭加 リクルートの未来にとっても必要な変容がそこから始まりそうです。まさに自分が変わることで自分のまわり、さらには世界が変わっていく、という実例ですね。

これまでの資本主義世界では、途上国での非人間的な労働環境や森林伐採なども、利益の最大化という正義のもとで黙認されていたところがありました。消費者側も、サプライチェーンがどんどん長くなる中で、自分の手にするものがどこでどうつくられているのかわからなくなり、ある程度の質のものが安く買えるならそれでいい、という感覚になっていた。私もそういう消費者の一人です。でも、このところの世界の変化は大きく、自分の会社さえ利益をあげればいいという企業からは、ヒトもカネも離れていくようになってきています。

「全生命の集い」のようなRe-memberの体験を提供するワークショップは、一人ひとりが地球とつながり直すのを助けるだけでなく、企業がこれからのビジネスのあり方やビジネスと社会の関係性を考えていくためのパワフルなツールになるんじゃないかな、と思います。

これまでビジネスとして当たり前にやってきたことは、本当に当たり前なのか? 自分の会社が作っている商品やサービスは使っている人やつくってる人を幸せにしているのか? そういう本質的な問いから企業はもう逃げられないし、この問いに深く向き合った企業こそが、新たな時代をつくっていくんじゃないかな、と思っています。

 まずはサステナビリティ推進室のメンバーでワークショップができたらいいなあ。

繭加 今までリクルートはコクリ!の後援者という立場だったけれど、これからはリクルートが丸ごとコクリ!的に変わっていくのかもしれないね。

(対談ここまで)

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(企画・文章:梶川奈津子)

ライター:梶川奈津子(かじかわ・なつこ)

ライター:梶川奈津子(かじかわ・なつこ)

ビジネス・スポーツ領域において、主に人材育成・キャリアをテーマに取材記事やケースの執筆を行う。平日はメディア事業会社の会社員としてHRを担当し、2017年より個人事業として執筆業を展開。早稲田大学文学部卒。