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太陽光パネルの大量廃棄が予想されるのは2036年頃。私たちが今できるのは、パネルのリユースやリサイクルが当たり前の未来をつくること

気持ちよく使えるエネルギーとともに暮らしたい。

そう願い、再生可能エネルギーへのシフトを歓迎している人はたくさんいると思います。しかし、どんな物事にもメリット・デメリットは必ずあるもの。2012年にFIT法(固定価格買取法)が施行され、日本でも太陽光発電が急速に普及し始めると、多くの課題が見えてきました。

そのひとつが、太陽光パネルがいずれ膨大な量のゴミとなり、多大な環境負荷がかかるのではないかという懸念です。資源エネルギー庁の「出力低下およびFIT買取期間終了パネルの排出量予測」によれば、2036年ごろには、なんと17~28万トンという大量の太陽光パネルが廃棄される見込みとなっています。こうした状況を踏まえ、2022年5月には、環境省が使用済みパネルのリサイクルを義務化する検討に入ったと発表されたばかりです。

今回ご紹介するのは、こうした動きに先駆け、太陽光パネルのリユース・リサイクル事業を手掛けている「株式会社NPC」。NPCは、独自の技術「ホットナイフ分離法」などを活用し、太陽光パネルを分解してリサイクルするための全自動解体ラインを開発・製造している企業でもあります。NPCの取り組みと、国内の太陽光パネルのリサイクル・リユースの現状を、環境関連事業部・事業部長の土居大亮さんに伺いました。

太陽光パネルの再資源化率96.9%

まずはこちらをご覧ください。NPCが開発した「自動太陽光パネル解体ライン」は、リサイクルが難しいと言われていた太陽光パネルを徹底的に分解することで、再資源化を実現する装置です。

まずパネルの裏についているジャンクションボックスをスクレーパーで切り取ります。次に、ガラスを割ることなくアルミフレームを取り外します。さらに「ホットナイフ分離法」という特殊な技術を使って、300℃に熱したナイフでガラスとシートを分離するんです。

リサイクルで重要なのは、部材を細かく丁寧に分解すること。そうすると、ジャンクションボックスについている銅線は銅として販売ができるようになり、アルミフレームは200~400円ほどという高値で買い取られます。きれいに分離されたガラスは、そのままガラスとしてリサイクルが可能。割れガラスも、ガラス砂などに応用できます。また、シート部分も、焼却することで銀などの金属類を抽出できるようになるそうです。

その結果、産業廃棄物としての処理が必要になるのは、プラスチックでできた端子ボックスと、破損がひどくて金属が入り込んでしまった一部の割れガラス程度になります。NPCの装置を使った場合の再資源化率は96.9%。つまり、すでに太陽光パネルは、適切な処理さえすればほとんどの部材をリサイクルに回すことが可能となっているのです。

しかも処理費は、ガラスが割れていないパネルでキログラムあたり150円、割れているパネルでもキログラム当たり180円。割れなしパネルなら、1枚約20キロと仮定して3000円で処理できる計算です。この程度であれば、けっして捻出できない金額ではありませんよね。パネルのリサイクルは、技術的にもコスト的にも十分に実現可能な領域に達しているのです。

松山工場に設置された自動太陽光パネル解体装置

始まりは、パネルの製造装置づくり

土居大亮さん

ところでNPCは、なぜどこよりも早くパネルのリユース・リサイクルに着目し、解体装置を開発することができたのでしょうか。これにはNPCの歴史が大きく関わっています。

NPCはもともと1992年に創業した、東京・御徒町にある小さな自動機製造メーカーでした。

当社はもともと真空包装機といって、ハムやソーセージをパッケージングする機械をつくっていました。この真空包装の技術が太陽光パネルをつくるためのラミネーションという工程で使われる特殊な技術なんですね。1994年に日本国内のあるパネルメーカーから、太陽光パネル製造用の真空ラミネーターを開発してくれないかと依頼され、それをきっかけに一連の製造ラインをつくるようになりました。

当時、日本では太陽光発電はそれほど普及していませんでしたが、欧米ではすでに大きな市場が形成されていました。そこでNPCは、1996年にはNPC America Corporationを設立し、世界中に多くの製造装置を提供していきました。

そして2011年の東日本大震災と原発事故、2012年のFIT法施行によって、日本でも太陽光発電が注目され、パネルの需要が爆発的に伸びていきました。

パネルメーカーも一気に多額の設備投資をするのは大変なんです。そこで、NPCでパネルの製造もやってくれないかという話になり、大手メーカー2社のパネルをOEM生産という形で、松山工場でつくることになりました。

今は埋め立て処理されている

「アルミは貴重な資源なんです」と土居さん

さらに、蓄積された知識と経験を生かし、パネルの検査サービスを開始。2014年には「国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)」とのパネルリサイクルの共同研究が決まりました。それもあって、2017年には太陽光パネル解体装置の提供が実現。

長年、太陽光パネルの製造に関わってきたNPCは、廃棄パネルの問題が取り沙汰されるようになったこともあって、廃棄の現状について、大きな課題意識をもっていました。

現在は、屋根からパネルを降ろしたら、産廃用の鉄箱に何でもかんでも放り込んでいき、全部破砕して、混載(混合廃棄物)として処理しています。そうすると、金属やシリコンがガラスに入り込んでしまうので、その後のリサイクルが難しくなってしまうんですね。せっかくアルミや銅などの有価物があっても、粉々にして埋め立てられているんです。

また、太陽電池セルは1枚1枚が直列にはんだ付けされていますが、はんだの材料には有害物質である鉛が含まれています。そのため、ただ埋め立てればいいわけではなく、周辺の土壌や地下水に影響を与えないよう対策が施された管理型の最終処分場に埋め立てる必要があります。

しかし、これすら守られず、認識不足によって安定型の最終処分場に埋め立てられてしまうケースや、まとめて破砕することでリユース可能なパネルまで埋め立てられている実態もあるそうです。

日本には管理型の最終処分場が少ないこともあり、廃棄量が増えていくと処分場の容量が足らなくなって逼迫していくことは明白です。適切に処理されていない現状もあり、おそらく今後は、できるだけ部材を分けてリサイクルしていこうという流れにならざるをえないのではないかと思います。

もともとあった技術を応用して解体装置を開発

きれいに分離するため、剃刀の二枚刃のように、ふたつのホットナイフを通過させる

そこでNPCは、パネルの製造装置で使っている技術が、解体装置でも使えるのではないかと考えました。

太陽光パネルは、ガラス、EVA(エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂)、太陽電池、パネル用バックシートを150℃の熱板の上に持っていき、EVAを溶かしながら真空にして封止しています。そうすると、EVAやバックシートがガラスからはみ出るんですね。

アルミフレームをはめるためには、そのはみ出た部分をきれいに切らないといけません。手でやるとすごく大変なので、ロボットを使って切っているんですが、そこで使われているのがホットナイフという技術なんです。これを活用すればガラスとシートの分離もできるんじゃないかという話になり、解体装置の開発が始まりました。

それは目論見どおり、ガラスとシートをきれいに分離してくれました。長年の技術の蓄積があり、新しいことにもどんどんチャレンジするものづくりの会社だったからこそ生まれた装置でした。

ガラスと分離したシート。白いラインのところに銀が含まれているため、精錬会社が買い取ってくれるそう

さらにNPCは、解体装置の開発・販売だけではなく、リサイクルそのものを推進していく必要があると考え、2019年には産業廃棄物保管場所の許可を取り、松山工場で四国地方を中心に廃棄パネルの受け入れを開始しました。また、廃棄パネルを回収していくと再利用できるパネルもたくさん出てくるため、リユース事業も合わせて行なっているそうです。

未使用品が工場に余剰在庫として残っていたり、高効率パネルへの交換でまだ使えるパネルが不要になったりするんです。あとは、災害にあった場合でも、浸水ぐらいならその後も使えることが多いんですね。それをそのまま捨てちゃうのはもったいない。リユースできれば、それ自体が廃棄物の削減になります。ですから、使えるものはこちらで購入させていただいて、国内外問わず、必要とされるお客さまに販売させていただいています。

実績として、すでに9万1000枚をリユースしているそう。また、松山工場の屋根にリユースパネルを設置してLED電球を灯し、レタスを栽培する植物工場を始めるなど、ユニークな事業展開も行なっています。徹底したリユース・リサイクルにこだわり、なるべく廃棄に回さないよう工夫しているのです。

気づけば太陽光パネルに関して、揺りかごから墓場までの全部のプロセスに対応できる会社になりました。

松山工場の屋上に設置されたリユースパネル(200kW)

植物工場で使うLED照明は、リユースパネルで発電した電気を使って点灯。現在、日産で1,200株を栽培。「はこひめ」というブランドで、レタス3種類を1週間あたり540キロ出荷し、愛媛県内のスーパーを中心に販売している。売上は好調で、まもなく日産2,400株まで増産予定だそう

適切なリサイクルができる企業を増やしていく

ちなみに実際に持ち込まれる廃棄パネルの数はまだ多くはありません。現時点ではそこまで廃棄パネルの数が多くないこともありますが、リサイクル技術が確立され、実際にリサイクルを行なっている企業があることがあまり知られておらず、これまでどおり、埋め立て処分に回されているのではないかと土居さんは話します。

いちばんの課題は、太陽光パネルはリユースやリサイクルができるのだと多くの人がまだ知らないことです。2年ほど前に、環境省が太陽光パネルはリユース・リサイクルができるという内容のチラシをつくり、僕らもその制作に携わらせてもらいました。しかしいまだにそれがちゃんと伝わっていないと感じています。まずはひとりひとりにその認識をもってもらわないと、いつまでもパネルは埋め立てに回されて、リサイクルの動きは広がっていきません。

では、なぜ周知されていかないのでしょうか。その理由は、現時点ではあくまでリサイクルが可能であるというだけで、リサイクルの義務化までは踏み込めていないからだそうです。

たとえばフランスでは「SOREN(ex.PVサイクル・フランス)」という団体が、事前に処理費用を集めてプールしていて、パネルが廃棄されるときにその費用を使って処理するという仕組みができています。そのため、廃棄パネルの95%を回収できているそうです。やはりリサイクルを推進していくための仕組みがないと、どうしても安く済まそうという方向に流れていってしまう。日本でも、早くフランスと同じような仕組みをつくってほしいと思います。

冒頭でご紹介したとおり、ようやく日本でもリサイクルの義務化の検討が始まりました。NPCでは、制度化に向けて国に働きかけることはもちろん、パネルの廃棄量がピークになる2030年代までに自社の解体装置を広めていき、適切なリサイクルができる企業を全国に増やしていきたいと考えています。

NPCだけですべてのパネルをリサイクルするのは当然不可能です。ものすごい量がありますし、不法投棄防止のため、県外搬入や県外搬出の審査もとても厳しくなっています。そもそも輸送費がかかると採算が合わなくなるので、その県で発生した廃棄物はその県内で処理することが基本なんです。弊社の装置が普及し、適切なリサイクルができる会社が増えることによって、全国各地で、パネルが埋め立てに回らないようになればいいなと思います。

すでに環境意識の高い産廃業者は国の省CO2補助金などを活用し、NPCの分解装置を導入して、2030年代の廃棄パネルの急激な増加に対応できるよう備えているそう。これはひとつ、安心材料ではないでしょうか。

希望をもって問題に向き合う大切さ

太陽光パネルの廃棄問題は、環境負荷を減らすはずの再生可能エネルギーが環境負荷を増大させてしまうかもしれないという、皮肉で、頭の痛い問題でした。しかし、問題は永遠に問題のままではないのだと、今回強く感じました。多くの人が、こうした課題に立ち向かい、解決しようと努力し続けてくれているのです。世界は少しずつでも着実に変わっていく。そのことを、私たちはもっと信じてもいいのではないでしょうか。

太陽光パネルのリユースは増えつつあり、リサイクルの技術もすでにある。あとはこの先、本格的なリユース・リサイクルにつなげられるかどうかだけです。まずは知ること。国も企業も個人も、それぞれの立場でできることをやっていくこと。そうすれば、プラスのスパイラルは自然と起きてくるはずです。

再生可能エネルギーがますます気持ち良く使えるエネルギーになる日は、すぐそこまできています。

これまでの連載では風力発電や営農型太陽光発電など「エネルギーをどのように生み出すか」というテーマで、実践者のインタビューを中心に記事を掲載してきました。
しかし今回の記事においては、エネルギー問題を考えていく上で、「エネルギーを生み出したあと」にも目を向けることが重要だと気づかされました。

NPCでは震災後、太陽光発電が拡大する中で、いち早くパネル廃棄問題にも目を向けて技術を開発してきました。
これから予見される廃棄問題も、こうした技術によってパネルリサイクルが進めば、未然に防ぐことができるかもしれません。
そのためにまず私たちができることは、「リサイクルできることを知ること」だと土居さんは教えてくれました。

太陽光発電だけではなく他の発電方法についても、「エネルギーを生み出したあと」について考える事は非常に大切です。
享受しているものの上流、そして下流を知る事は、新たな課題にいち早く気づくことができる重要な視点であると感じます。

(Text: 生団連)

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(撮影:池田礼)
(編集:増村江利子)