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お金をもらいながら働いている場合なのか? 社会人2年目の私がサティシュ・クマールの言葉に感じる、戸惑いと共感。

仕事にやりがいを感じてがんばること。
自分のペースを保つこと。

そのバランスを取るのがとってもむずかしいと思う最近。

食に関心のあった私は大学卒業後、「ここで働きたい!」と思えたオーガニックレストランでアルバイトを始め、自分のペースで文章を書きながらこの1年、活動してきました。

大学時代から、お金を得るために週5日、決まった時間に働くことに対して違和感を感じていた私は、つねにエネルギーが湧くような心とからだの状態で生き、働きたい。自分のやりたいことをいつでもできるよう、時間の融通が利く働き方をしたいと思っていたのです。

実際に1年過ごしてみて感じるのは、どのくらい働いて、時間をどう使うか、良くも悪くも、想像通りにはいかないということ。

意外にもレストランでの仕事はおもしろく、「もっとお店に深く関わりたい!」という気持ちが芽生えていったのです。そして正社員になれば、給料も上がり責任も持つことで、挑戦できることも増えていきそう。

順調に見える社会人生活ですが、あるひとつの言葉を思い出すたびに、特定の仕事をそんなにがんばる必要はあるのだろうか? という疑問を抱き、気持ちにブレーキがかかります。

お金を稼ぐために働かない勇気を持て!

2017年、「しあわせの経済」国際フォーラムにサティシュ・クマール(Satish Kumar)が登壇したときの言葉です。以前greenz.jpで記事になったタイトルの一部でもあります。

インドで生まれたサティシュは、マハトマ・ガンディーの非暴力と自立の思想に共鳴し、2年半かけて核大国の首脳に核兵器の放棄を説く1万4千キロの平和巡礼を26歳の時におこないました。

40年にわたってエコロジー&スピリチュアル雑誌『リサージェンス(再生)』の編集長を務め、1991年からイギリスにて、大学院大学「シューマッハ・カレッジ」を創設。ちなみにこの学校は、「3H=HEAD(頭で考えること), HEART(心で感じること), HANDS(手を使ってつくること)」を学びの軸としています。

サテイシュの経歴を知った当初は、なんだかすごいひとだな…と、自分とは違う世界の人のように感じていました。それでも彼が発する言葉から、彼自身の行動との重なりを感じ、真実味があって、惹きつけられる私がいました。

「働かない勇気を持て」。まだ働き始めていない大学生の頃の私に、この言葉はとても大きな衝撃があったといえます。

自分自身や家族や友だちとの関係を疎かにしてまで、たくさん働くことに意味はあるんだろうか? でも、もしそんなことをしたら、私が自分自身を置いてけぼりにしてしまっているような感覚になってしまいます。

『エレガント・シンプリシティ「簡素に」美しく生きる』

自分の頭で考え、つぶさに感じ、自分の手でなにかをつくってみたい。
生きている実感を感じながら生きたい。
「働かない勇気を持て」という言葉がずっと胸に突き刺さっている。

そんな私は、サティシュの言葉に触れたいと、『エレガント・シンプリシティ「簡素に」美しく生きる』を読んでみました。

サティシュの生い立ちから、彼が大切にしている考え方などが語られるこの本。一部これまでの著書と重なるメッセージもありつつ、何度か目を通しているうちに、心惹かれる表現がいくつも見つかりました。

・世間に見せられている現実をもとに動くのではなく、自分自身の基準と理想を持つこと。
・すでにある職業や職種の枠に無理に留まろうとせずに、自分の生き方をつくろうとすること。
・ありのままの自分以上の何かを求めないこと。

シンプルに書かれているけれど、よくよく考えてみると、意識してやってみないとなかなかできないことだと感じてしまいます。

そして、いざそこに書かれていることを自分に問うと、まだまだ私は周囲の環境に流されているなぁと気づかされます。

お金をもらいながら労働している場合なんだろうか?

生活するとは、ほんとうにしたいと思う活動をして、そこに生きがいを感じること。(P91)

そんなメッセージを受け取ると、私はどうしても揺らいでしまいます。

「君はそんなに仕事をがんばってどうするつもりなの?」とじっと見つめられながら、サティシュに問われているように感じてしまうのです。

仕事にやりがいを感じること。
この仕事は自分に合っていると感じられること。
正社員になったら、月々決まったお給料をもらえて、いいこと尽くしじゃんと思う私。

一方、お金をもらいながら労働している場合なんだろうか? と感じている私もいます。私は、私自身の使命を認識して、それを実行できているの? と自分自身に対して不信感を抱いてしまうことも。

他者から与えられた仕事をするのもいいけど、自分の心とからだの状態に目を向けてみたり、周りの人との関係性についてゆっくりと考えてみたり、自分の心地のいいペースを感じとることでよりよく生きられるような気がするのです。

同世代の人たちとの焚火。黙っていても火を囲んでいれば、それだけでいい。よく見ると空には星がたくさん。(撮影:佐々昴紀)

誰にも私の時間やエネルギー、生きる力を奪われたくない。私の時間は、自分自身がコントロールできる範囲内にあるからこそ、私が決めたい。すべて私の責任だから、誰のせいにもしたくないと思っています。

未来に、私を、ゆだねてみたい。

得体の知れない不安や恐れにまどわされずに、自分と未来を信頼して、ゆだねてみる。

とってもむずかしくて、やっぱりお金や世間体、安定した土台を求めている私もいます。きっとサティシュの言葉に触れた人たちはみんな葛藤する部分があるかと思います。

こんなふうに迷い、葛藤しているのは、きっと私だけじゃない。そうやって葛藤する機会を得られたから、自分の向かいたい方向が徐々に見えてくるのかもしれません。

『エレガント・シンプリシティ』を含む、サティシュの著書を多く翻訳してきた辻信一さんは、過去のgreenz.jpの取材でこんなことを口にしています。

辻さん こうしかないっていう自分の思い込みがバカバカしい、そうじゃないいろんな生き方があるし、あり得るし、それをしてもいいんだって気づければ笑えてくるじゃないですか。

辻さんもまたサティシュとの交流の中で、自分自身の思い込みに気づき、多様な生き方があることを感じ取ったのではないでしょうか。

風に揺れる木々は、揺らぐ私の心のよう

先日、森のなかでどっしりと根を張っていながらも、風にふかれて揺れる木の葉を見つめ、とても気持ちよく感じました。

(撮影: Koichi Iwai)

そんな木々のように揺れつづけながらも少しずつ姿を変えていく私たちは、きっと自分自身が思っているよりも美しく、まわりの人の心になにかを投げかける存在なのだと思います。私がその木に心揺さぶられたように。

労働者として、消費者として、振り回されているような感覚になることがある。
どういう気持ちで、どんなふうに暮らしていきたいか考えてみたい方は、サティシュの言葉に触れてみてはいかがでしょうか?

きっと自分の人生を生きていくヒントをもらえるはずですよ。

(編集: スズキコウタ、greenz challengers community)
(編集協力: ナマケモノ倶楽部)
(撮影: Koichi Iwai、スズキコウタ、齋藤隆夫、佐々昴紀)

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こころをこめてマインドフルに生きること、それがシンプリシティ。
世界的名著『スモール・イズ・ビューティフル』を著したE.F.シューマッハーの意思を継いで、イギリスのエコロジカル雑誌「リサージェンス&エコロジスト」の編集主幹となった先駆的エコロジスト、サティシュ・クマールが、いま世界に「簡素」に生きることの素晴らしさを説く! 新型コロナウイルス感染症が猛威を振るい始めたとき、カナダの若者たちの共感を得て話題となった本がいよいよ邦訳。
https://www.nhk-book.co.jp/detail/000000818832021.html