食材を使い切れず、余らせてしまったことはありませんか?
以前の私は、そうでした。
日本での食品ロス(フードロス)は年間で612万トン(出典元: 農林水産省) 。廃棄処理の二酸化炭素や埋め立てといった環境への負荷を考えると、食品ロスはもったいないだけではなく、将来の食物をつくる環境にも影響を及ぼします。
あるとき、農家の方から野菜をもらうことがありました。その際にいただいた「皮も全部使えるからね」というひとこと、そしてその野菜の美味しさに感動し、「捨てるなんてもったいない! 食べられるところは隅々まで食べよう!」と工夫する生活をスタート。そうして食の貴重さや尊さを感じ、豊かな食環境を子どもやその先の代にも残したいと思うようになりました。
今回は、さまざまな事情で余ってしまった食材や料理を活用して、新しい価値を生み出している事例をいくつかまとめてご紹介します。
”あまりもの”を再利用し、企業内で食品ロスをゼロにすることを実現させた商品が「Bloody Mary Mix」です。
この商品を一言で表すと、ジュース状の野菜ミックス。商品製造のために新たな食材の入手はせず、キュウリをつけていた液や、ピクルスを製造する過程で出てきたさまざまな野菜の切れ端を再利用しているのだそう。
おいしいのはもちろん、使用方法がとても豊富で、主商品であったピクルスを抜いて、今では1番の人気商品になっているのだとか。あまりものにも「何かいい使い道があるかもしれない」という気づきが、本来捨てられるものに新しい価値を与えた事例は、廃棄する前に考えることの大切さを教えてくれます。
『Rock What You’ve Got:Recipes for Preventing Food Waste』は、家庭の食べものの無駄を減らし、食事を楽しめる栄養価の高いレシピが載ったレシピ本。
残った料理を新しい料理に変換するレシピ、さまざまな食材を使い切るための冷蔵庫の掃除レシピ、野菜のすべての部分を使い切る「廃棄物ゼロ」レシピに分けられています。
食品ロスや食育について学びながら、子どもと一緒に料理をすることができますし、食材を使い切るという点では、子育て世帯にも一人暮らしにも嬉しいですね。
「Bristol Skipchen」は、廃棄された食料を使って料理を提供している”材料費0円”レストラン。
食料廃棄にスポットを当てたこのレストランでは、スーパーのゴミ箱に廃棄されていたものや地元の食品店から譲り受けたものから調達しているため、「その日に何が”収穫”できるか」次第でメニューが決まるのだそう。
メニューは、エビのサラダやロブスター、ソーセージやトマトをのせたトースト、フルーツのスムージーなど多くの種類があり、どれも日替わり。そして、料理に値段はついておらず、お客さんが払いたいだけ払う仕組みなのだとか。
The Real Food Project代表のSam Josephの「食料を無駄にしないでほしい」という思いが伝わってきますね。
アメリカのElkhart Community SchoolsのWoodland Elementaryが地域の非営利団体「Cultivate」と協力してはじめたのは、学校のカフェテリアで残った料理を、家庭の事情で週末に家で食べるものがほとんどない生徒たちに提供する活動。
学校のカフェテリアで余ってしまった食料を、シェフ、地元の仕出し業者、病院、企業から「救出」してきたほかの食べものと栄養バランスを考えて組み合わせ、バックパックにつめるのだそう。
バックパックを受け取った生徒は、週末には朝食にフレンチトーストや赤いベルベットマカデミアナッツパンケーキ、ランチには、骨付きの肉とホットドッグを食べることができました。食べられずに空腹な子どもたちがいるのに、その一方でたくさんの食べものが捨てられている。そのギャップをうめ、食べものも人も救うことのできる活動ですね。
「夜のパン屋さん」とはパン屋さんから売れ残りそうなパンを購入し、別の場所で再販する取り組みです。
お店側にとっては、こだわりの素材で丁寧につくったパンを無駄にすることなく買い取ってもらえ、再販先でパンを買う方にとっては、仕事帰りに各所の人気ベーカリーまで行くことはできないけど、最寄駅の近くで販売してもらえたら買いやすい。そして食料廃棄を防げる。
シンプルでありながら、売り手と買い手と社会が得する「三方よし」の仕組みですね。
飢餓に苦しむ人は世界に約6億9000万人もいる(出典元: unicef)のに、本来食べられるものが捨てられ、環境に悪影響を与える不均衡な現代。
家庭で、学校で、パン屋で、レストランで、食品会社で食品ロスを減らす事例を見ると、食品ロスは至るところで発生している反面、身近なところから食品ロス削減に取り組めることに可能性を感じます。
食料が過不足なく分配され、無駄にせず美味しく食べきることで地球の環境が良くなる。時には食物に感謝し、つくり手に思いを巡らせて食事をしてみてはいかがでしょうか。
(Text / Curator: moriyamayuko)
(Top Photo: Unsplash)