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地方に移住して見つけた「コミュニティで起業する」ことの意義-千葉県いすみ市で次々に生まれる「コミュニティベンチャー」の秘密(後編)

この記事のテーマでもある「コミュニティベンチャー」について知ることができるイベントとフィールドワークを開催します。詳細は記事末をご覧ください。

千葉県いすみ市を訪れると、「やりたかったこと、やっちゃおうかな」と思わせる力の存在を感じます。そんな力のせいか、いすみ市ではローカル起業が次々に生まれていることをご存知でしょうか。

いすみ市で「やっちゃおうかな」という気持ちが湧いてくる理由を探っていくと、“コミュニティベンチャー”とも呼べるような、つながりを通じたローカル起業が生まれる生態系があることが見えてきました。

いすみ市で生まれる“コミュニティベンチャー”とはどんなものなのか。そして新たに始まることになった「いすみコミュニティベンチャースクール」とはなにか。前編と後編を通してご紹介します。

「いすみコミュニティベンチャースクール」や、その背景にある「一緒にやろうよ!」という気風についてお伝えした前編に続き、後編では実際にいすみ市でコミュニティベンチャーを立ち上げた湯川伸也さんに話を聞きました。

前編:なぜか起業したくなる。移住者が活躍するまちの不思議な力-千葉県いすみ市で次々に生まれる「コミュニティベンチャー」の秘密

いすみ市に「ベース」をつくるコミュニティベンチャー

そもそもコミュニティベンチャーとは、「コミュニティを育み、コミュニティに育まれる起業」を刺す造語。いすみ市で次々に生まれるローカル起業に共通する特徴をあらわす言葉です。

「いすみローカル起業部」のメンバーの活動拠点および商品取り扱い店舗をまとめた「いすみローカル起業マップ」を見ると、このエリアで多彩な取り組みが行われていることがわかります。

古民家を活用したゲストハウスやケーキ工房、建築士事務所など、取り組みは多岐に渡りますが、そのどれもが「コミュニティを育み、コミュニティに育まれて」きたものです。

今回はその中でも、「株式会社外房ベース不動産」を営む湯川伸也さんに話を聞いてみることにしました。

湯川さんは「株式会社外房ベース不動産」で、いすみ市を含む外房エリアの物件紹介のほか、空き家再生事業や民泊のプロデュースなど、地域活性化につながる事業を行っています。

湯川さん いすみ市の特徴は、なんといっても里山・里海のある豊かな自然。そして、そんな環境のもとに空き家や古民家がたくさんあるんです。そんなエリアで、空き家や古民家などをリノベーションして新たな価値を生み出し、ひとりひとりに「ベース(Base)=拠点・起点」のある暮らしを提案しています。

さらに、自他共に認めるスポーツマンである湯川さんは、サイクリスト仲間たちと「外房サイクルサポーターズ」の活動も。空気入れや水の補給ができるサイクルエイドステーションを、飲食店などの加盟店(いすみ市を中心に市街も含め78店)に設置することで、サイクリストが訪れやすい環境を提供することにも取り組んでいます。

また、里山の体験型ツアー事業への協力も行うなど、ジャンルにとらわれず精力的に活動している湯川さん。「いすみ市はコラボレーションが生まれやすいので、本業以外でも仲間と意気投合して活動が始まることが多いんですよ」と笑顔で語ります。

昔からのコミュニティを守り、新たなコニュニティをつくる

不動産業や空き家再生事業は、他の地域でもできること。なぜ湯川さんは、あえていすみ市で活動しているのでしょうか。

湯川さん いすみ市に移住する方ひとりひとりに、人生の主役になってもらいたいって気持ちがあるんです。僕も東京で会社員をやっていた時、売り上げ目標に追われるような日々をすごしたことがありました。でも、いすみ市で起業をして、自分の人生を歩み始めた感覚があるんです。

いすみ市には僕の他にも、もともと会社員だったけど移住して起業している方が多い。ある意味、自分が主役の人生を歩み始めた人たちです。だからそんな方々が、このエリアで「ベース(Base)=拠点・起点」を持つことを僕がお手伝いして、人生の主役になることをサポートしています。

また湯川さんは、「昔からのコミュニティを守り、新たなコニュニティをつくる」ということも意識して活動しているそう。

湯川さん 僕には今、1歳と4歳の子どもがいるんですけど、子どもたちにとっていすみ市を故郷にしたいんですよね。いつか外の地域に出たとしても、喜んで帰ってこれる場所になったらいいなと思っていて。いすみ市でも少子高齢化が進むなかで、次の世代のために故郷を残してあげるのは僕ら世代の役割かなって思ってます。

湯川さん そのために大事なのが、コミュニティだと思うんです。いすみ市にある、人と人との豊かな関係性は、次世代に残していかなきゃいけないなと。もともと地域にいた人たちの想いをきちんと汲み取りながら、移住者の新しい風をうまく乗せていく。そのバランスは意識していますね。

物件を貸したり、空き家を再生したりといったことは他のエリアでもできること。しかし、それが人生の主役を増やし、コミュニティを豊かにし、そのコミュニティが次世代まで引き継がれていく……という循環につながっている手応えがあるのは、いすみ市ならではかもしれません。

サポートは、想いと覚悟があってこそ

湯川さんは1977年生まれ、千葉県松戸市育ち。大学卒業後、都内大手不動産会社で10年以上勤めたのち、夫婦で世界一周の旅に出ました。2年間の旅を経て帰国後、「自然豊かな場所で子育てをしたい」という想いで移住先を探していたところ、いすみ市の地域おこし協力隊の募集と出会います。

湯川さん 学生時代からしていたサーフィンができるところがよかったので、最初はハワイなども考えたんです。そしたら、サーフィンをするためによく訪れていたいすみ市で地域おこし協力隊の募集があることを知って、興味を持って。

地域で仕事をつくることを考えると、地域おこし協力隊として3年間活動費をもらえるのは心強い。なおかつ、東京からアクセスが良いので、なにかあった場合にはまた会社員に戻りやすいという思いもあって、協力隊に応募しました。

湯川さんは、2015年に千葉県いすみ市に家族で移住。移住前は不動産業に取り組むつもりはなかったと言いますが、いすみ市に空き家や古民家がたくさんあることを知り、遊休不動産のリノベーションに取り組むように。そこでまちづくりに関わる楽しさを知り、2018年6月に株式会社外房ベース不動産を設立しました。

今でこそ様々な活動に取り組む湯川さんも、移住した当初は「地域のこともわからないし、何をやったらいいかもわからない」状態だったとか。そんななか、行政や先輩移住者、協力隊の仲間とのつながりによって、だんだんと活動がひろがっていったと言います。

湯川さん 僕らみたいに移住してきて、特に家族も連れてきて地域のために頑張る人は応援してくれますよ。行政のみなさんも、「なにかやりたい」と相談したら親身に話を聞いてくれました。

あとは、コラボレーションも生まれやすいかもしれないですね。ある先輩移住者がゲストハウス事業をやっていて、僕も興味あったので声をかけたら、一緒にやることになりました。僕と同じ年にいすみ市に来た協力隊10名のうち、5名が関わってましたね。

湯川伸也さんと、協力隊を支える市役所企画政策課の海老根良啓さん(左)、尾形和宏さん(右)、いすみ市在住のグリーンズ代表・鈴木菜央(右から2番目)

いすみ市の特徴として、ローカル起業を育むつながりがあることを挙げる湯川さん。自身も、同じ想いを持つ方が来たらコラボレーションやサポートをしていきたいと考えているそうです。

湯川さん いすみ市で古民家再生や空き家活用などの不動産事業、民泊などに取り組みたい方がいたら、ぜひ一緒にやりたいですね。都市部よりもお客さんとの距離が近い分、誰かの役に立っている感覚は得られるはずです。

想いと覚悟を持ってくれる人がいれば、僕ができる限りのサポートはするつもりですし、いすみ市のコミュニティもうまく活かしながら活動したら、おもしろいことができるんじゃないかな。

ただ、コミュニティによるサポートがあることは、「受け身でいても助けてくれる、ということじゃない」と付け加えます。

湯川さん 想いがなく「助けてくれるでしょ」みたいなスタンスだと、うまくいかないと思います。結局、最後のひと頑張りは自分でやるしかないんです。その覚悟と、「これをやりたい」という想いを持っていれば、みんなサポートしてくれるはずですよ。

ローカル起業がコミュニティを育み、コミュニティに育まれる

マサチューセッツ工科大学の元教授、ダニエル・キム氏が提唱した、「組織の成功循環モデル」という考え方があります。組織において、関係性の質を高めることが、思考の質や行動の質、そして結果の質の向上につながるというものです。

いすみ市は、まさにこの「成功循環」がまわっているまちなのではないでしょうか。つまり、豊かなコミュニティがあることでアイデアが生まれ、次々にアクションが起き、地域の課題が解決されていき、またコミュニティが豊かになる……というサイクルがあるのです。

いすみのローカル起業のさきがけでもある「ブラウンズフィールド」の中島デコさんも、次のように語っています。

「『一緒にやろう』と言ってくれる仲間や、ご近所や役所の人たちの協力があって、なーんとか、のろのろと続けさせていただいています。でも時間をかけてきたからこそ、地域に少しは貢献しているってね、最近実感するんです。」

(「『直感を磨くのは、良い環境と良い食べ物』ブラウンズフィールド・中島デコさんに聞く『つながり』が育む場所づくり」。また、『いすみローカル起業ガイドvol.1』3頁にも掲載)

中島さんの言葉からも、「ローカル起業がコミュニティを育み、コミュニティに育まれる」というサイクルがまわっていることが見えてきます。

ときにはしがらみのように、自分の望む選択を阻むものとして立ち現れる、人と人との関係性。しかしいすみ市においては、人と人との関係性が自分の望む選択を育むものになっています。

そうした豊かな関係性のもとで、2021年に「いすみコミュニティベンチャースクール」が始まります。その場から、どのようなコミュニティベンチャーが生まれるのか。きっとそれは、取り組む方の人生も、このまちのコミュニティも豊かにするようなものになるはずです。

前編:なぜか起業したくなる。移住者が活躍するまちの不思議な力-千葉県いすみ市で次々に生まれる「コミュニティベンチャー」の秘密

「いすみコミュニティベンチャースクール」について

2021年から始まる「いすみコミュニティベンチャースクール」は、地域おこし協力隊のプログラムを活用した起業支援プログラム。エントリー検討期間と、地域おこし協力隊として活動する3年間を通して、コミュニティベンチャーの立ち上げをサポートする仕組みです。

募集の詳細やエントリーに向けたフィールドワーク、合宿など、詳細情報は公式ページをご覧ください。また、最新情報はFacebookページでお届けするので、こちらもぜひ「いいね」をお願いします!

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イベントのお知らせ

また、グリーンズといすみ市は、9/24にオンラインイベント「コミュニティに育まれる、自由で豊かなローカル起業『コミュニティベンチャー』とは?」を開催します。

「コミュニティベンチャー」について、実際にいすみ市で活動する方のトークや、「いすみコミュニティベンチャースクール」の説明も行う予定なので、興味を持った方はぜひご参加ください!

イベントの詳細・申し込みはこちら

さらに、10/9と10/10には、実際に現地で「コミュニティーベンチャー」という生き方のリアルに触れ、将来のイメージを描くことができるフィールドワークも開催予定。こちらもぜひご参加ください。

フィールドワークの詳細・申し込みはこちら

[sponsored by いすみ市]