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不平等を黙認している私は、抗議される側なのか。自省の念に襲われて、人種差別を扱う映画を見直し、考えてみた。#BlackLivesMatter

George Floyd(ジョージ・フロイド)さんの殺害事件をきっかけに世界中で巻き起こっている #BlackLivesMatter運動。人種差別反対にはもちろん賛同しますし、運動という形で世界に平等の意識が広まっていくのは喜ばしいことです。

などと書きましたが、私は今回の抗議行動を見ながら、抗議される側にいるかもしれないと気づきました。今回人々が抗議しているのは、不平等な社会に対してですが、不平等な社会をつくっている人には、その構造を積極的に維持している人に加えてそれを黙認している多くの人々も含まれます。

私は不平等を黙認しているのではないか、だとしたら抗議されているのは私なのではないか、そんな自省の念に襲われたのです。

私はそんな自分自身の内なる疑問に答えるために、人種問題、特に黒人差別問題についてこれまで考える材料になった映画を見直してみることにしました。そして、見直してわかったことをみなさんにシェアすることが、私にとっての #BLM であると思ったので、こんな文章を書いてみることにしたのです。

あなたが抗議する側なのか、抗議される側なのかはわかりませんが、いま問題になっていることの根っこは何なのかぜひ考えてみてください。

暴動を起こさせてしまうアメリカ社会の構造を見る

最初に上げたいのは、他でも言われていますが、スパイク・リーの『ドゥ・ザ・ライト・シング』。

1989年のこの映画は、ブルックリンの黒人街の1日を描いた作品です。30年前の映画のネタバレを心配するのもおかしな話ですが、ぜひ観てほしいので内容についてはここでは詳しくは書きません。

ただ、この映画はアフリカン・アメリカンたちのいいところもだめなところも丹念に描いていて、あまりきちんとアフリカ系の人々と接したことがない私でも「こういう人たちなんだ」ということがわかるようになっている、すごくいい映画です。見ることで彼らの立場に立つところまでは行かないものの、隣に立つくらいの心境になることはできるのです。

そして、それだからこそ終盤はただただ悲しくなります。そして、今回のようなこと、殺害、抗議、暴動がなぜ起きたのか、それが少しわかります。今回のような事件は暴動のきっかけに過ぎません。ずっと醸成されてきた不満やいらいらがひとつのきっかけで爆発しただけなのです。

この映画は暴動を起こさせてしまうアメリカ社会の構造を小さな街に置き換えて私たちに見せてくれます。理不尽な出来事には違いないのですが、その理不尽な出来事が起きてしまう理由が見て取れるのです。

恐怖が憎しみを生み、憎しみがまた恐怖を生むという悪循環

次に取り上げたいのはマイケル・ムーア監督の『ボウリング・フォー・コロンバイン』です。

この映画はコロンバイン高校銃乱射事件を契機にマイケル・ムーアが「なぜアメリカ人は銃で殺し合うのか」を解きほぐすドキュメンタリーです。一見、黒人差別とは無関係そうですが、この映画では殺人が起きる理由として「恐怖が憎しみを生み、憎しみがまた恐怖を生むという悪循環」があげられています。

なぜ差別が起きるのか、その理由は定まっていませんが、理由の一つに「存在論的恐怖」があると言われています。これは自己の存在が脅かされるという恐怖が、恐怖を与える対象に対する憎悪や差別を生むというもの。近年で言えば9.11の同時多発テロ以降、米国で起きた“アラブ人”に対する差別とヘイトクライムがこれに当たります。

さらに身近なもので言えば、新型コロナウイルス感染者(やその恐れがある人たち)への差別や攻撃も、うつされるかも知れないという恐怖から生じたものと言えます。

そして、この映画の中でも「アメリカの歴史を振り返るアニメ」というのが出てきて、その中でアメリカの白人は恐怖から先住民を殺し、解放された黒人の反乱を恐れて武装したと説明されています。さらに、さまざまな事件で「黒人男性」が犯人とされることから、白人の中に黒人に対する恐怖心が植え付けられ、それが利用されているという事実を指摘します。

この映画の焦点は「銃」ですが、アメリカで黒人殺害事件が繰り返し起きる背景には差別に加えて銃の問題もあります。誰が銃を持っていていつ殺されるかわからない恐怖が警察官に過剰な防衛行動を起こさせる事実も否定できないからです。

この映画は黒人への差別と殺害事件を生むアメリカの社会構造を批判的に捉えるのに非常に有用な作品なのです。

私たちの心のなかに、差別意識は一切ないと本当に言えるのか

次に取り上げるのは『ハーフ』、日本に暮らす“ハーフ”の人たちについてのドキュメンタリーです。この映画を見れば、黒人差別はアメリカの出来事で、私たちにはあまり関係ないだろうという考えが覆されます。

この映画では、ハーフの人たちが日本で感じる疎外感や受けてきたいじめや差別について語ります。いわゆる「日本人」はそれをみて、自分の言動を顧みます。そこで私が思ったのは、一対多になったときに生まれる「区別」の問題です。そのことは以前の記事にも書きました。

今回の事件を機にこの作品を思い出したのは、「差別をしている」あるいは「差別意識がある」ことが実は意識に上りにくいことだと気づかせてくれた作品だからです。自分は差別はしていないつもりでも、実はしているんじゃないか、心の奥底には差別意識があるんじゃないか、そんなことを考え直させてくれるのです。

最初に私たちは抗議される側だと書きましたが、私たちの心のなかに差別意識がないと本当に言えるのでしょうか? 私はそんな人はいないと思います。誰しも心のなかに差別意識は持っている、それを認めた上でどうするのか、それを考えなければいけないのです。

怒りのエネルギーを憎しみではなく、愛に使う黒人たちの姿

すでに存在している差別をなくすためにどうしたらいいのか。そのことを教えてくれる映画が『イン・マイ・カントリー』です。

この映画は南アフリカでアパルトヘイトが廃止されたあと発足した真実和解委員会をめぐる物語で、2年にわたる取材をもとに書かれたルポルタージュを映画化したものです。

黒人に対する激しい差別が政策として長年行われてきた南アフリカ、その制度が廃止され、国民の和解と融和が求められるようになったとき発足した真実和解委員会はどうやってそれを実現したのか。

端的に言うと、被害者が加害者を赦すことで問題の解決を図ったのです。被害者側に赦しを求めるのは一見理不尽のようにも思え、実際、主人公の一人アメリカの黒人記者(サミュエル・L・ジャクソンが演じている)はこの解決法が実効的であることが理解できません。しかし、物語が進むに連れ、彼もそれが唯一の解決策であることがわかっていくという物語です。

なぜ、それが唯一の解決策なのか。それも先程の恐怖と憎しみと関係があります。被害者が加害者を憎んだままだと、加害者は復讐への恐怖を拭い去ることはできず、再び悪循環に陥る恐れがあります。そこから逃れるために被害者の赦しが必要なのです。

そんなことで本当に融和が進むとは信じられないかもしれませんが、実際南アメリカでは人種の融和が進んでいます。

私が思ったのは、彼ら(黒人たち)は怒りのエネルギーを憎しみではなく、愛に使うことを選択したのではないかということです。怒りを相手にぶつけるのではなく、そのエネルギーを仲間・味方を愛することに使う。

そう考えると、抗議活動というのは実は憎しみの発露ではなく愛を求める行為とも思えてきます。今回の事件で、ジョージ・フロイドさんの弟さんが怒りを抑えることについて語り、その思いを選挙で発露しようと言いました。それは対立するのではなく共存できる道を探すことを意味するのではないでしょうか。

平等を求める叫びは自由を求める叫び。今こそ私たちは耳を傾けなければ。

最後に紹介するのは『ニーナ・シモン 魂の歌』です。

伝説的女性ジャズシンガーのニーナ・シモンの生涯を描いたドキュメンタリーです。

公民権運動にも参加した彼女が求め続けたのは自由でした。黒人であるためにクラシックピアニストになれず、シンガーとして成功した後も夫のDVに悩まされ、精神疾患を患い、経済的にも困窮していった彼女はそれでも自由を求め続けました。

私がこの映画を紹介したいと思ったのは、人種差別はあらゆる人の自由を奪うものだから。それは差別される側だけでなく差別する側の自由も奪います。むしろ自ら自由を手放そうとする人が差別をするのです。この映画に描かれている差別は黒人差別だけでなく、女性差別、階級差別など様々な形を取ります。その様々な差別の対象となることでニーナは自由を奪われていくのです。

何が人の心に差別心を生むのか、明確にはわかりません。でも、この映画を見て、自由を求め、他者の自由も尊重する人は差別意識を持つことは少ないと感じました。人が自分の利益のために他者の自由を制限しようとしたとき、差別や不平等は生まれるのです。

平等を求める叫びは自由を求める叫びであり、アフリカン・アメリカンたちはずっと叫び続けてきました。今こそ私たちはその叫びに耳を傾け、彼らの自由を尊重するとはどういうことか考えなければいけません。

私は何も持っていないが、この体と魂がある、そして人生があり、自由がある。

と歌うニーナ・シモンの叫びは私にそんなことを考えさせるのです。

(Photo by frankie cordoba on Unsplash)
(Photo by Mike Von on Unsplash)

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