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住んでいるまちは面白い方がいいに決まってる。個人の想いをまちとつなぐことで始まった、新世代による武蔵新城のムーブメントとは

「いま、シンジョウが面白い」

ある日私の耳にそんな情報が飛び込んできました。ここで言うシンジョウとは武蔵新城のこと。神奈川県川崎市中原区にある、JR南武線・武蔵新城駅周辺のエリアのことです。タワーマンションが立ち並び、開発が進む武蔵小杉の2駅隣。一方で武蔵新城は商店街が栄え、昔ながらのお店が立ち並ぶ、親しみやすい雰囲気のあるエリアです。

このまちで暮らす、中村文香(なかむら・あやか)さん片山浩一(かたやま・こういち)さん外山友香(とやま・ゆか)さんはその変化の台風の目となる存在。本業の傍ら、このまちで活動する3人は、武蔵新城で3人はどんなうねりをつくりだしているのでしょうか?

訪れたのは第六南荘。築50年近くになる建物ですが、1階部分の青い外壁が明るく、部屋にはベランダがなく、外から階段で直接入ることができるテラスのようなつくりにリフォームされています。この1階のチーズ屋さんとシフォンケーキ屋さんに並んだ一部屋が、レンタルスペースとして貸し出されています。

実はこの場所もまちに点在する、地域へ開かれたスペースのひとつ。この他にも、レンタルスペースのPASAR BASE(パサールベース)、地元の憩い場カフェ新城テラス、ブックカフェShinjo Gekijoなどのスペースがあります。

レンタルスペースであるパサールベースは、ワークショップや展示会、マルシェなど様々なイベントに利用されています。

こうした場所を使って開催されているのは「しんじょう朝ごはん会」や「夜ごはん会(マチ談義@新城〜遊びを耕す〜)」と呼ばれる食事をともにするイベント。

「朝ごはん会」「夜ごはん会」どちらも、武蔵新城に暮らす人たちの関係を育むことが目的だそうです。気合いの入った大々的な地域イベントではなく「一緒にごはんを食べる」というシンプルだからこそ誰でも参加できる企画にすることがポイント。そして、同世代だけのつながりではなく、武蔵新城に長く住んでいる方とのつながりをつくるのも大事なことです。

最近は「新城マガジン」というnoteをプラットフォームにした、武蔵新城の魅力を発信するウェブマガジンの取り組みも始まりました。

左から、中村文香さん、外山友香さん、片山浩一さん



「夜ごはん会」を主催するのは片山さん。団地の建設・管理・運営を行う会社に勤める傍ら、週末の時間を使って、2019年から武蔵新城の活動に参加するように。現在は第一子の子育てのために育休中。

片山さん 「夜ごはん会」はポットラックパーティですね。一人一品持ち寄りで。毎月開催していて、多いときは15人ぐらいの人が集まります。友人が友人を連れてきて、宅飲みみたいな感じで盛り上がっていますね。

「夜ごはん会」の様子。ときにはまちづくりに関して深い話になることもあるのだとか

片山さん 実は僕がこのイベントをはじめたのは、中村さんがやっている「朝ごはん会」に参加したことがきっかけなんです。

そう話す通り、中村さんは「朝ごはん会」を主催しています。中村さんはメーカーの研究職、人事を経験した後に、キャリアカウンセラーとして独立して活動している方。そんな本業の傍ら、武蔵新城に関わりはじめ、月に一度、週末の朝にイベントを開催するように。「夜ごはん会」が持ち寄り形式である一方、「朝ごはん会」では中村さんの手づくりの朝食が振る舞われます。

朝ごはん会で振るまわれたごはん。川崎で取れた野菜を使った具沢山豚汁、きのこの炊き込みご飯。見ているだけで良い香りがただよってきそう。

中村さん 「朝ごはん会」に参加してくれる人は30〜40代ぐらいの人が多いかな。私の友達で朝活したいっていう人が電車に乗って来てくれたり、一方で近所に住んでいる人が顔を出してくれたり。片山さんも近所に住んでてふらっと来てくれたひとりですね。ご飯と汁物とおかずを何品か出しています。親戚の集まりみたいな感じで、他愛もない話をしています。

朝ごはん会の様子。

外山さんは、都内のIT企業に勤務しながら、週末の時間を活かして駅前のブックカフェShinjo Gekijoで読書会を企画するほか、これまでのキャリアの中で培った編集・ライターの経験を生かして、noteで「新城マガジン」の連載を始めました。

外山さん 武蔵新城のお店やそこで働く人にインタビューをして記事を書いています。この町ってオンラインのコンテンツにはなっていないけど魅力的な人やお店がいっぱいあるんですよ。

3人ともそれぞれの得意なことややってみたいことを持ち寄りながら活動している様子。どんなきっかけでそれぞれの活動がはじまったのでしょう。

自分の住んでいるまちは、面白いほうがいいに決まっている

3人の活動のはじまりとなる、中村さんの「朝ごはん会」が始まったのは2018年の11月。きっかけは、大家さんの一言でした。

中村さん マンションの大家さんである石井さんに「朝起きるの苦手なんですよね」って話をしたら、「みんなでご飯食べたら起きられるんじゃない?」って言われて。じゃあやってみるかって始まったんです。

ここで言う「大家の石井さん」とは、武蔵新城のまちのキーパーソンで、セシーズイシイを展開する石井秀和(いしい・ひでかず)さんのこと。

第六南荘をはじめとした、賃貸マンションの共用部をコミュニティスペースやレンタルスペースとして地域に開き、空き店舗を活用して新たな集いの場として展開。さらにFacebook内に「ふらっと武蔵新城」というグループ(2020年3月現在の登録者数は5300人程!)を立ち上げるなど、オフラインからオンラインまで武蔵新城の地域活性に取り組む仕掛人です。

以前は静岡の伊東市に住んでいた中村さん。その頃関わっていた熱海のリノベーションまちづくりのプロジェクトで石井さんと出会い、首都圏へ引っ越しを検討する際に物件を紹介してもらうことに。

中村さん せっかくならコミュニティがある場所で暮らしたいなと思って、それでこのまちに引っ越してきました。友香ちゃん(外山さん)もコミュニティがあるところに来たいなと思ってたんだよね?

外山さん そうです。私はそれまで都内のシェアハウスに住んでたんですけど、コミュニティのあるまちに引っ越したいなと思って。知人に石井さんをつないでもらって、物件を見てすぐ、このまちに住むことを決めました。

そうして石井さんが開く場を使いながら、イベントを開催してきた二人。その会にふらっとやってきたのが片山さんだったのは先述の通り。

片山さん 僕は石井さんとはつながっていなかったのですが、3年前に結婚するタイミングで、奥さんとお互いの職場の中間のところがいいなと思ってここに来ました。

まちに何の縁もゆかりもなかったのですが、歩いていると、新城テラスだとか面白そうな場所がある。もしかしたら武蔵新城って面白いまちなのかもしれないと思いましたね。

そんな片山さんがなにか活動してみたいと思ったきっかけを伺いました。

片山さん 僕は「コミュニティの教室」という講座に参加していたんです。その時は住んでいる場所ではなくて、別のプロジェクトベースでコミュニティをつくれないかと考えてました。

でも、その講義の中で、自身が暮らす地域で楽しそうに活動している講師の話を聞いて、いいなぁと思って。自分の住んでいるまちが面白いほうがいいに決まっている、自分のまちでやってみよう、と思ったのがきっかけです。

「ひとりでもいいからなにかやってみよう」そう思っていた矢先に、Facebookで「朝ごはん会」を発見。先に活動をしていた中村さんや外山さんに出会うことができました。そうして2019年の4月から「夜ごはん会」を主催し始めます。

お互いのニーズを共有し、まちとつながる

3人だけではなく、例えば外山さんの友人が「本のある部屋をつくりたい」と言ったときにも、石井さんとつながることで実現しました。現在、寄贈や持ち寄りで集まった200冊の本があるその部屋は、会員制図書館になっています。

どうやら、「まちに点在するスペースを管理する大家さん」がいて、そこに「住まう人たち」が「やってみたい!」を寄せ合うことを重ねることで、武蔵新城のムーブメントが始まったようです。

でもただ物件を持っている大家さん、というだけでは、こうした活動は生まれなさそう。それぞれ自主的に動いている、という3人と大家の石井さんは、どのように連携しているのでしょうか。

外山さん 定期的にメッセンジャーで情報共有をする他、石井さんも含めて「朝活」と呼ぶ近況報告も兼ねた集まりを月に1回しています。朝活では、月に1回週末の朝8時から石井さんの事務所に集まって、1ヶ月の振り返りをしています。今月の「朝ごはん会」何をつくろう、とか「新城マガジン」で誰を取材しようとか、そうした相談の他に、プライベートの近況報告もしたりして。

中村さん そう、「朝活」がベースにあるから事が進んでいく感じです。プライベートも含めてお互いの人生を味わうみたいな時間ですね。

片山さん あのお店が美味しかった、みたいな情報も共有しあってるよね。

そうしてお互いの人生まるごと含めたニーズや思いを共有し、場所や人につなげてくれるのが石井さんはさながらカウンセラーのようにも聞こえます。

3人にとって、そしてまちにとって、石井さんとはどういう存在なのでしょう?

片山さん 場所はあるから、何でもやっていいよっていうスタンスなんですよね。あとは交通整理をしてくれる。

外山さん 物件や人につないでくれた後は、好きにやっていいよ、っていうスタンスで見守ってくれているんですよね。お金とかのマクロのことと、人を見るっていうミクロのことと、両方できるのはすごいバランス感覚だなと思っています。

中村さん 石井さんはまちの使い方も教えてくれているような気がします。ニーズをキャッチするのがうまいんですよね。私たちが何かやりたいっていうニーズを拾い上げて、物件や人につなげてくれる。そして、例えば「この施設を使うときにはこうした方がいいよ」ってお作法も教えてくれるんです。

石井さんは、そこに新しく来た人たちと長く暮らしている人たち、どちらにもとても丁寧なコミュニケーションをしながら、ニーズを汲み出し、場をつないでいる様子。なるほど、そうして媒介者となる人がいるからこそ、3人も自分のニーズでまちに関われて、まちを盛り上げる継続的な活動を生み出すことができるのかもしれません。

と、そんな話をしているところになんと噂の石井さんが登場! 3人に取材をしていると聞いて、お仕事の合間に駆けつけてくれました。

顔を出してくれた石井さんは、「自分が前に出ない形で武蔵新城が伝わるのが嬉しい」と笑顔です。

石井さんは3人の動きをどのように見ているのでしょうか。

石井さん 武蔵新城では、僕と同世代のコミュニティはできてきたんだけど、それより若い20〜30代ぐらいのコミュニティができてないな、というのが課題感として3年ぐらい前からあって。僕が持っている物件のほとんどは単身世帯向けだし、社会課題としても、その世代のコミュニケーションが圧倒的に不足していると思っていたんですよね。そんなときに彼らが動き始めてくれたのが嬉しかったですよね。

「朝ごはん会」や「夜ごはん会」にも必ず顔を出すようにしているのだとか。

片山さん 石井さんは必ず来てくれるんですよね。8月はみんな帰省していていなくて、僕と奥さんと子どもと石井さんだけだったときもありましたね(笑)

中村さん いつも来てくれるから親戚のお兄さんがちょっといる、みたいな。石井さんがいるおかげで、武蔵新城が第2の故郷のように感じます。

石井さん 必ず顔を出すのは、一生懸命頑張っている人たちが疲れてないよね!?って確認です(笑) 疲れていなくなっちゃったらさみしいからね。

自分が前に出てやるだけでなく、自分の後ろに付いてきてくれた人たちが自主的に動き始めているのが嬉しいですよね。自分の動きがちゃんとまちや誰かに響いてきたかなって。この地域で耕してきたコミュニティが形になってきたのかもしれないですね。

せっかくなので4人で記念撮影。非の打ち所がないくらい頼りになる石井さん。石井さんが帰られた後に「これは変えてほしいな…みたいなところはある?」とこっそり3人に聞いてみたところ、「とにかく付き合いが良すぎて飲みに行き過ぎ。石井さんの肝臓が心配」とのことでした。

愛着をもって暮らせるまち、武蔵新城

とはいえ、若手のコミュニティは動き出したばかり。3人もまだまだ課題はあると感じています。

中村さん 20-30代の若い人も結構いるんですけど、やはり仕事が生活の中心で、まちに関わろうと思っている人はそんなに多くないかもしれないです。私のマンションですれ違う人に挨拶しても、まだ返してもらえないこともあって。そういうつながりはこれからできたらいいなと思います。

一方で、ずっとまちに住んでいる人は、まちの魅力に気づかないことも。まちに住んでいる人が愛着を再認識してもらえるような動きもできたらと感じているそうです。

外山さん 「新城マガジン」をすることで、武蔵新城の外に住む人たちには、まだ何も伝わっていない状態から魅力が伝わって足を運んでくれる人が増えたらいいなと思っています。一方で、まちの人にはお店やそこにいる人の思いを知ってもらえる。思いを知ったうえでお店を訪れたら、きっと生まれるコミュニケーションやそのお店への愛着も変わると思うんですよね。

実際に3人が住んでみて、武蔵新城はどんなまちなのでしょうか。

片山さん 生活する上でも、ドラッグストアやスーパーも駅前に何店舗かあるし、生活の基盤は整ってますよね。単身向けの物件が多いかもしれないけど、ファミリーでも暮らしやすいです。

中村さん 武蔵新城の良さって地味な良さなんですよね。飲食店も多いし、安いし、うまいし。でもあまり知られていない。

外山さん 大正ロマン風のきれいな銭湯もあるんですよ。お酒飲んで、千円で焼き鳥食べて、ふらっと銭湯に行って、とか最高ですよね。

顔見知りができたら、まちは遊び場になる

ご飯の美味しい店があって、ふらりと行ける銭湯があって、買い物にも困らない。さらに、自分で何かをしてみたいと思ったらできる余白のあるまち。3人の話を聞いているうちにすっかり武蔵新城に住みたくなってしまいました。

「朝ごはん会」「夜ごはん会」、そして読書会もオープンなイベント。オンラインでは「新城マガジン」やFacebookコミュニティの「ふらっと武蔵新城」を覗いてみるのもいいでしょう。

その他にこのまちに興味を持った人が参加できる活動はあるのでしょうか。3人におすすめを紹介していただきました。

外山さん 1000Bero(せんべろ)は武蔵新城のいろんな店舗が1000円のメニューを用意していて、お店をはしごできるイベントです。2,6,10月の年に3回開催していて、マップとスタンプカード片手にお店をめぐります。

スタンプラリーになっていて、加盟店にはのぼりが立っているので、ちょっと行きにくかったお店にも入ることができるんですよね。それで行きつけになることもあります。

片山さん マルシェ・ドゥ・ボヌールというマルシェも年に3回、2,7,11月に開催しています。ハンドメイド雑貨の販売が中心です。つくっているのはまちに住むお母さんたち。まちのいくつかの拠点が会場になっていて、いろんな作家さんの作品が並びますね。

中村さん 広く開かれているという意味では、月に1回開催している「いりょう・かいご座談会」にはまちの外から参加している人もいます。医療や介護に関わる人や、地域のことに関心がある人が集まって、障がいのことやがんのことなど医療介護に直接関わるテーマから、今年の抱負や家族で話したいことなど広くその人の人生に関わることまで毎回テーマを決めて対話しています。だいたい15-20人ぐらいの人が参加するのですが、結構盛り上がりますね。

武蔵新城のまちが気になったら、ぜひこうしたイベントに参加してみてはいかがでしょうか。

そこから始まる変化を「自分の住むまちが面白い方がいい」そう思って、一歩踏み出した片山さんはこう話します。

片山さん このまちに引っ越してきたときは知り合いが全くいなかったんですけど、顔見知りができました。実際挨拶を交わすのは5、6人程度なんですが、偶然会ったときに嬉しかったり、お店の人と近い距離感で話すことができたり、それだけで断然暮らしやすくなりました。まちで遊べる場所が増えた、というような感覚です。

今回訪れた第六南荘は、レンタルスペースから「訪問看護事業のカフェ」へとアップデートするそう。今後「朝ごはん会」や「夜ごはん会」は場所を変えて開催することになりそうです。まちに点在するスペースをつなぎ、面にしていく、そんな役割を3人は担っていくのかもしれません。

今回のお話を聞いていて思い出したのは「活動を始める最初の一人目も大事だけど、そんな一人目を見つけて参加する二人目の役割が大切だ」ということ。

熱い想いをもった大家さんの石井さんという「一人目」が居て、彼が住む人たちが自分たちのニーズでまちづくりができる環境を整備することで、中村さん、外山さん、片山さんという「二人目」が誕生しているのが武蔵新城の面白さ。そして、彼らが「ごはん」イベントを続けていくことで武蔵新城のまちづくりに関わる「三人目」「四人目」はこれからも増えていくでしょう。武蔵新城で起こっている変化がムーブメントになっていくのが、これから楽しみです。

武蔵新城の「朝ごはん会」「夜ごはん会」は次回4月26日に開催するそうです!気になる方は、以下のイベントページをチェックしてみてくださいね。

朝ごはん会 4/26(日) 8:30-10:00

次回夜ごはん会 4/26(日) 18:00-21:00

<撮影:Takuya Ogino>

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– INFORMATION –

今回の記事は、人生100歳時代の生き方を豊かなものにするための最初の一歩目を応援する神奈川県と一緒にお届けしました。

神奈川県とPeatixが開設した特設ページ「好きかも!を見つけよう」には様々な生き方、そして参加できるコミュニティ・イベントが紹介されていますのでこちらも是非ご覧ください。

https://feature.peatix.com/100-year-life