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効率ではなくつながりに比重を置いた教育を。「シューマッハ・カレッジ」に行って、僕が体験してきたこと。 #ソーヤー海の共生家革命日記

ハロー! ソーヤー海だよ。今回は僕たちが6月に行ってきた、「Schumacher College(シューマッハ・カレッジ)」での体験を紹介するね。

シューマッハ・カレッジは、イギリスの思想家サティシュ・クマールと仲間たちが始めた議論や研究の場で、ダーティントンホール財団というところが母体となって、イギリス南西部のトットネスで1991年に始まったんだ。サティシュの提唱する「Soil(土)」「Soul(心・魂)」「Society(社会)」の3つの「S」に加えて、「Heads(頭・頭脳)」「Heart(心・精神性)」「Hands(手・実践)」の3つの「H」も理念に掲げている。

大学院とアシュラムが融合しているのも特徴で(つまり、「少人数でともに生活する」ってやつ)、食べものを育てるガーデンや宿泊施設もあるんだ。そのなかで開発・発展、食、経済、組織運営、精神的成長、持続可能性、平和、平等、アート、デザインなどについて、これからの時代をつくるために学んでいるんだ。

それぞれに細分化して特化した専門分野を研究して全体像を捉えようとするいまの教育とは根本的に違って、まず全体性(ホリスティック)をとらえ、つながりのある多様性を通して、より深い学びと理解を目指しているというわけ。テスト前に暗記して詰め込む教育とは全然違うよね。

ちなみにシューマッハ・カレッジという名前は、『スモール イズ ビューティフル』(講談社学術文庫)っていう革命的な本を書いた経済学者、Ernst Friedrich Schumacher(エルンスト・フリードリッヒ・シューマッハ)にちなんで付けられたらしい。物質至上主義と科学への信仰に警鐘を鳴らし、より小規模で、人を大切にする経済にシフトしようっていうシューマッハの思想を受け継いでいるんだね(ちなみにこの本では、物質と効率を追求する資本主義とは対照的に、「みんなの心と地球全体が満たされる」ことを目指す「仏教経済学」についても書いているよ。興味のある人は読んでみてね!)。

シューマッハ・カレッジでは、地球をひとつの生命体としてとらえる「ガイア理論」を提唱した科学者のジェームス・ラブロックや、タネを守る活動で有名なインドの活動家ヴァンダナ・シヴァも教えていて、先進的な思想家や活動家が集まる総本山のひとつみたいになっているんだよね。かなりオルタナティブなんだけど、いわゆる大学院大学としてちゃんとイギリス政府に認められていて、世界中から学生が学びに来ているのがすごいところ。

それ以外に数日間~3週間のショートプログラムや集中講義もあるんだけど、僕は4年前からシューマッハカレッジで、日本人向けのショートプログラムに参加してもらう機会をつくったんだ。滞在中はシューマッハカレッジの授業を体験するほかに、森や海岸に出かけて体全体で学んだり、サティシュ・クマールとプチ巡礼したりしたよ。

右端にいるのが、サティシュ。

今回のツアーは僕を含めて30人が参加した。非暴力や経済にがっつり取り組んでいる活動家とか、「どうしてもサティシュに会いたい!」っていう人とか、逆になんとなく参加して「みんなすごい人ばっかり……」って圧倒されている人もいて、最初はみんなそわそわして、不安とか恐れが多かったと思う。だけどみんなと一緒に時間を過ごしながらプログラムに参加するにつれて、みんながキラキラし始めて、最後はみんなで肩を組んで歌ってた(笑) すごい変化だったね!(どんな変化だったかは……次回のお楽しみ!)

どんなプログラムを体験したかを紹介する前に、シューマッハ・カレッジの1日の流れを見ていこう。これも面白いんだ。

例えば、朝一番には7時過ぎから自由参加の瞑想の時間がある。朝食の後は、学生もスタッフも教授も朝のミーティングに必ず集まって、最初に詩を読んだり歌を歌ったりして、効率ではなく関係性やつながりに比重を置いてコミュニティを深くつなげていく。

それから大学で何が起きているかをシェアして、最後にアクティビティをしてから解散する。そのあとはみんなで皿洗いとか掃除、昼食の支度、ガーデンの手入れとかを手分けしてやるんだ。もちろん僕らもこういう生活を実践したよ。

基本的にはアシュラムのなかの小さなコミュニティで一緒に暮らしながら学びを深めていくのがコンセプトだから、資本主義システムに消費者として参加することを前提とした普通の大学とは全然違うんだ。いまの社会は、自然やコミュニティのように大切なものから僕らを切り離して、その結果、僕らはすべてを商品やサービスととらえてお金で何とかしようと思ってしまうけど、シューマッハカレッジにはちゃんと自然や社会との接点があるんだ。自分たちがつくろうとしている世界を、まずは自分たちが体現しているわけ。

シューマッハカレッジのプログラムには、例えば「トランジションの時代の経済学」、宗教や精神世界と身を委ねた詩の力、神話とエコロジー、サティッシュの新しい本『Elegant Simplicity: The Art of Living Well(エレガントに、シンプルに 健やかに生きるというアート)』のプログラム、有機農法やパーマカルチャーの6ヶ月プログラム――とかいろいろあったんだけど、今回は特に「経済」についての学びも大事にした。これは、人類が直面している大きな社会問題(環境破壊や戦争、いろいろな格差)の根本的な原因のひとつは経済システムにある、と、僕は思っているからなんだ。

ひとつめは、「幸せの経済学」のヘレナ・ノーバーグ=ホッジのグローバル経済システムの難しい講義。内容はこんな感じ……経済や権力の格差、環境破壊、戦争みたいないろいろな問題は、グローバル経済システムによってどんどん加速してしまった。僕が受け取った大事なポイントは、グローバル経済システムとは何か理解しない限り、いくら個人で頑張っても困難から抜け出せないこと。

仕組みに目を向ければ、自分や他人を責める必要もなく、大切なもの(時間とか、人や自然とのつながり)を取り戻せるんだ。もうひとつは、環境再生運動、有機農業やローカルビジネスは世界規模でものすごい運動になっているのに、メディアが取り上げないために、「そんな小さな規模でやっても」と過小評価されてしまうこと。こういうローカリゼーションの動きを可視化するだけで、勇気づけられるし、いい方向に進んでいることに気づけるんだ。

スクリーンに映し出されているのが、ヘレナ。

シューマッハ・カレッジでのツアーの内容はまだまだ続くけど、今回はとりあえずこの辺で。次回はこの続きで、もうひとつの経済のセッションの話や、そのほかのプログラムを紹介するよ!

(編集: 岡澤浩太郎)

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