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地域に生きる中学3年生へ教師が贈る最後のプレゼント。リアル循環型社会で活きるエネルギーを大人の本気と子どもの自由で考える。

今回、再生可能エネルギーを楽しく学べる『グリーンパワーブック』(グリーンパワーブックの記事についてはこちら)と『グリーンパワースクール』を3年前から取り入れて授業をしている、岡山県真庭市の落合中学校を訪れました。

学んだことを生徒がアウトプットする場として、「2050年、日本のエネルギーベストミックスはずばり、こうだ」をテーマに発表会をするとのこと。真庭市といえば、バイオマス利活用による循環型社会創出を目指すまち。そこで生まれ育った子どもたちが思い描くエネルギーベストミックス、楽しみです。

中学3年生がエネルギーのことを考える

岡山市内から車で1時間15分ほど北上したところにある真庭市立落合中学校。
吉備高原に囲まれ、その面積の大半は山林に囲まれています。美しい清流をたたえた川も流れています。

昨年、建て替えられたばかりの校舎は構造体や仕上材に木材が多用されていて、森林のまちらしい地域柄を感じさせます。

今回、『グリーンパワーブック』や『グリーンパワースクール』を活用して、落合中学校で再生可能エネルギーの授業を受けたのは中学3年生。

彼らが受けた授業は主に、
1. 地元企業・真庭広域廃棄物リサイクル事業協同組合による窒素循環の授業
2. 真庭広域廃棄物リサイクル事業協同組合、リサイクル現場の見学
3. 生ゴミプラントの見学とそこでできた液肥を使ってのレタス栽培(循環を実体験)そして実食
4. Think the Earth上田さんによる出前授業
  【1日目】 宇宙からの視点やSDGsなど持続可能な地球を考える
  【2日目】 5つのグリーンパワーや日本・世界のエネルギー事情を学ぶ

上記にプラスして、理科、家庭科、技術科と教科を横断して、再生可能エネルギーについて学びました。彼らは、学んだ現在の問題点と地域の良さと特徴を合わせて、どんなエネルギーを使って暮らすべきか、2050年「未来のエネルギーのフィクション」を描きます。

落合中学校の3年生を対象に『グリーンパワースクール』の出前授業を行った、一般社団法人Think the Earthの上田壮一さん(写真中央)、笹尾実和子さん(写真右)も東京から駆けつけました

当日は『グリーンパワースクール』で出張授業をした真庭広域廃棄物リサイクル事業協同組合や実際にまちのエネルギーを考える真庭市役所生活環境部環境課のみなさんも子どもたちの言葉に耳を傾けます

発表会では全クラスから選ばれし5組が、真庭の大人たちへ2050年のエネルギー活用についてプレゼンテーションします。

「自分たちは生き物に迷惑をかけないことを大事にしたい」
「国立公園の問題や温泉観光地の景観、自然環境への影響などが、地熱発電がなかなか進まないひとつの大きな理由」
「山から降りてくる風『おろし』は山に囲まれた日本で有効であることに注目」
「地域のことを徹底的に調べて、岡山独自の再エネを増やす」
「真庭のバイオマス発電で日本の再生可能エネルギーを増していきたい」
「真庭を日本の再生可能エネルギーの中心地にしよう」

自分たちの言葉でプレゼンテーションをする生徒たち。若者が未来を語ると、本当に実現するかもしれない期待感が高まります。

プレゼンテーションの合間には生ゴミプラントの液肥をつかったお米でつくったおにぎりが振る舞われた。環境に優しい上、美味しくてハッピーという食欲旺盛な生徒にわかりやすい再エネの素晴らしさをアピールできた。「これが地域のリアル循環型社会です」(谷本先生)

「エネルギーの地産地消を目指して、再エネ率100%とかもっと大きな夢を語ってほしい」と感想を述べる真庭市役所のみなさん。子どもたちも自らが住むまちに希望が膨らむ良コメント

「知識を蓄えるだけではなくアウトプットする力を養ってほしい」と校長先生

地域資源が豊富にあるまちに生まれ育った生徒たち。『グリーンパワースクール』を通して学んだことは、再生可能エネルギーや持続可能な社会の実現の大切さはもちろん、「地域の良いところを総動員すれば、良い未来が待っている」ことでした。

エネルギーを通して、地域を見渡す機会を得た中学3年生。貴重な体験を経て、エネルギー問題を自分ごとにできたようです。

本気な大人を見せていることが、社会で生きる力になる

落合中学校新設の際、自らがプロデュースしたという理科室。MacやiPadを駆使した授業を進める。ムービー製作、写真撮影などもプロ並みの腕前、と感動するわたしに「ごく一般的な田舎のおじさん教員、日本の教員の平均値です」と謙遜

理科の教科書、中学3年生最後の単元に「自然、科学技術と人間」というものがあります。そこに絡めて、『グリーンパワー』を活用して、授業をはじめた理科担当の谷本薫彦先生。やろうと思ったきっかけは、3年前に『グリーンパワーブック』の存在を知ったことでした。

4年前、先輩がたまたまThink the Earthさんの『グリーンパワーブック』のことが書かれたチラシを僕の机の上に置いてくれたんです。再エネの授業をする教育機関に本が届くと書いてあり、申し込んでみました。

そうしたら40冊送られてきて「わあ、当たっちゃった!」って慌てました(笑) でも中身を拝見したら、真庭市の銘建工業が載っていて興味を引きました。

岡山県真庭市では、地域資源を活用して自立型社会の実現を目指す地域ぐるみの構想があり、その理念のもと、まちづくりをおこなっています。

そして、地元企業の銘建工業は、木材事業協同組合や森林組合など、地元の木材関連団体とともに電力会社「真庭バイオマス発電」を設立し、2015年4月、木質バイオマスで国内最大級となる1万kW(10MW)の発電インフラを正式稼働。その試みが『グリーンパワーブック』に掲載されていました。

『グリーンパワーブック』をもらったからには、再エネ授業をしなければと思い、調べてみたら、東京学芸大学附属世田谷小学校の沼田先生が「グリーンパワー」の五つのキャラクター(サンちゃん、ミズリン、ばいおん、風子、ちね蔵)を使って総選挙をやっていたんです。

うちも同じように、総選挙をしようと思って、その前に「あなたが内閣総理大臣になって、エネルギー政策を考えなさい」というお題目で生徒に作文を書かせました。そして、再生可能エネルギーの授業をやって、調べさせて、ゆるキャラ総選挙をして、もう一度、最初と同じお題目の作文を書かせたら、作文の質がまったく違って、すごく良くなりました。それを僕、報告書に大げさに書いたんですね(笑)

そうしたら、Think the Earthさんが真庭へ来たいとおっしゃられて、さらに慌てました。本当にみなさんが視察にいらして。そこから上田さんたちとご縁ができて、次年度以降継続的に再エネの授業を行うようになりました。こうして、地域とつながる発想ができたんです。

経済産業省資源エネルギー庁が進める再生可能エネルギー普及促進事業「グリーンパワープロジェクト」では、地域と再生可能エネルギーを結ぶことを目標としていることから、真庭市は「バイオマスタウン」という地域の素地があり、「バイオマスタウン」で行っている再エネ授業という観点に注目が集まります。

2014年に行われた、再生可能エネルギーへの取組を通じて地域や暮らしを豊かにする活動・人材を応援する「グリーンパワー大学」のプログラム「ティーチャーズサミット@東京大学」に登壇。再エネの授業をするだけではなく、他教科の先生や地域を巻き込んだ再エネ授業を進めていることを話した

2015年度の再エネ授業を模索していたとき、地域で生ゴミ再利用によるプラント事業が始まりました。業者さんが落合中学校の給食の端材を取りにくるようになりました。これは、地域とつながるチャンスだと考えて、業者さん自身に授業をしてください、見学行かせてくださいとお願いしました。そうしたら、みんなフットワークが軽くて、あっという間に実現しました。

そして今年は上田さんに授業していただける話になって、題材はなにがいいかなと考えていたときに、2050年、彼らが大人になったときのエネルギーのベストミックスを考えてもらうことを思いつきました。

上田さんはこちらの要望通り循環型社会・持続可能社会をテーマにフィットした授業をしてくださいました。その時に生徒たちに語ってくださった「フィクションをつくる」というキーワードがすごくフィットしました。

実際には、フィクションがつくれていない班もいくつかありました。でも、クラスにひとつふたつはあるんです。みんなをひっぱっていくような夢を語る班が。その夢を引き寄せる言葉が「フィクションをつくる」なんです。ずっとそのキーワードを生徒に伝え続けて、今日のような会が開けました。

真庭広域廃棄物リサイクル事業協同組合のみなさんには、窒素循環の授業をしていただきました。授業していただいて、バスまで運転していただいて、プラント見に行って。全部してくれて。

理科の授業内だけではやりきれないので、家庭科や技術科の先生たちと協力して、時間割調整は全部教員のみなさんが協力してやりくりしてくださいました。たくさんの方に再エネの授業のために尽力いただきました。

こうして、教員ひとりだけではとても実現しない、中学校での再エネ授業を続けた先生。3年連続、入試を控える中学3年生に授業を持続するのは並大抵のことではなかったはずです。どうしてそこまでして『グリーンパワースクール』を行ったのでしょうか。

実際に社会に出ている大人たちのなかで「持続可能」を一生懸命考えているひとたちがいるじゃないですか。そんな本気な大人を、社会に出る一歩手前の生徒に見せてあげることが僕らから彼らへ、最後のプレゼントかもしれません。

だからこそ、僕が教科書を読むよりも、上田さんや事業者のみなさんという、持続可能を本気で考えている大人に授業をしてもらうほうが彼らにはよほど響くんです。

谷本先生のその思いがこのきめ細やかな再エネ授業に繋がったのかと感嘆すると、谷本さんは「それだけじゃないですよ」と照れ笑い。

もちろん「生徒のために」という気持ちが一番ですが、僕は心の底から生徒のためだけにやっていないです。自分が去年より楽しい仕事をしようと思って、ここまでできたんです。そこが一番の原動力かもしれません。

教員だからといって「生徒のために」だけではない。自分の信念だった、と言い切る谷本先生。それも教員という職能で社会を生きる大人の「本気」の仕事です。生徒たちも「わたしたちのためだけにしているんじゃない。先生も楽しいからやっているんだ」と感じることが、子どもたちの興味の第一歩を促している気がします。

子どもと大人の間である中学3年生に再エネ授業した意義を伺うと、「義務教育を終える段階でのまとめ」としてよくできた、と谷本先生。

落合中学校の生徒たちは地元高校に進学することがほとんど。これからも地域の一員として生きていく子どもたちの背中を押す、いい機会であり、環境問題を考えること、再生可能エネルギーを考えることは「ふるさと教育」だと感じました。

再生可能エネルギーを考えることは自分たちの身の回りのいいところを見つめ直すこと。『グリーンパワースクール』は、それを丁寧にすくい上げて生徒に手渡す「贈り物」なのです。

谷本先生は、東大のティーチャーズサミットで、エネルギー問題に携わる何百人の前で「真庭の子どもたちは、どんなに外でバイオマスタウンだと有名だったとしても、自分たちの使うエネルギーや地域のことなんてこれっぽっちも知りませんよ」と言い放ち、関係者に衝撃を与えたそうです。

地域でがんばっている人たちも次の世代とつながっているかといえば、必ずしもそうではない。それは大きな課題です。そのつながりを担うのが学校なのかもしれません。

谷本先生が言った言葉で印象的なものがあります。
プレゼン資料をつくる生徒たちに「あなたにしか言えないことを誰にでもわかる言葉で書きなさい」と何度も伝えたそうです。

エネルギーのことについて「自分にしか言えない言葉」を持つ人が増えたら、ここがもっと気持ちいい社会になる気がしました。

わたしたちエネルギー」は、これまで“他人ごと”だった「再生可能エネルギー」を、みんなの“じぶんごと”にするプロジェクト。経済産業省資源エネルギー庁GREEN POWER プロジェクトの一環で進めています。エネルギーを減らしたりつくったりすることで生まれる幸せが広がって、「再生可能エネルギー」がみんなの“文化”になることを目指しています。