ファッションや言葉など、若い世代を中心にさまざま影響を及ぼしてきたヒップホップカルチャー。最近では、環境や食、福祉といった分野にもヒップホップの要素を役立てようとする動きもあるようです。
以前にもgreenz.jpでは、貧困状態の子どもたちにベジタリアンフードを届ける「Hip Hop is Green」やダンスで福祉をデザインする「SOCIAL WORKEEERZ」などの活動を紹介してきました。
今回ご紹介するのは、アメリカ・サンフランシスコを拠点に活動するヒップホップ集団、「Hip Hop for Change(以下、HH4C)」。一体、どのような組織なのでしょうか。
HH4Cは、ヒップホップという“文化”の持つポテンシャルを活かして、子どもたちへの教育を中心に、世の中にポジティブな変革をもたらそうというビジョンのもと、活動している団体です。
まずは、教育面。これまで、延べ40以上の学校において2,500人の子どもたちにヒップホップの歴史や文化、「愛・平和・団結・楽しみ」といった思想を共有してきました。さらに、ラップ・ダンス・DJ・グラフィティアートといったヒップホップを構成する4大要素を実際に体験させることも、重要な取り組みのひとつとしています。
彼らが教育に力を入れているのは、ヒップホップの正しい知識を子どもたちに習得してもらうだけでなく、クリエイティブな活動を通して自分の考えや想いを表現することを、もっと楽しんでもらいたいという願いから。一方で、子どもの成長過程にヒップホップが重要な役割を果たす可能性を、保護者や学校関係者に理解してもらおうという狙いもあるのだとか。
実際に、普段の生活において悩みを打ち明けることができなかった生徒が、ワークショップでの経験をもとにラップ調の詩を書いたことで、自身の思いを上手く言葉にできるようになったといいます。
ヒップホップ界にはスーパースターも数多く存在しますが、HH4Cはそういった人びとに頼るのでなく、地元の無名なアーティストたちが集まるイベントなどを開催し、自身の人生ストーリーや苦悩、将来への希望といった想いを自由に表現するための機会を提供しています。
テレビを賑わせる有名なミュージシャンの影響力に頼るのではなく、あくまでも草の根の活動を基本とする理由について、
文化としての本質を理解し、自分たちのリアルを伝えようとするアーティストにもっと光をあてたいと思ったのさ。
と発起人のKhafre Jayさん(以下、ジェイさん)は話します。
自身もアーティストとして長年活動してきたジェイさんは、企業の商業目的にヒップホップが利用され、文化としての価値がしっかりと世間に伝わっていないことに危機感を抱いていました。
映画やMTVなどで見るヒップホップの世界が全てではない。ヒップホップの本質は、表現の文化なんだ。
俺はヒップホップの哲学や思想を通して、人権や貧困格差、環境や食糧問題といった社会課題の解決に貢献したいと考えているよ。それによって、世の中におけるヒップホップカルチャーの意義を再認識してくれたらうれしいぜ。
かつて、社会の片隅に追いやられ、肩身の狭い思いをした若者たちが、それでも社会と対話するための術を探るなかでつくりあげてきた「ヒップホップ」という自己表現の文化。
表現というスキルの習得は、社会における若者たちの居場所づくりにつながっているんですね。
もし、音楽や映画など、ストリートカルチャーに触れる機会があったら、アーティストたちのメッセージにも耳を傾けてみませんか?
[via Hip Hop for change, The Mercury News, San Francisco Bay View,SF GATE, Oakland North]
(Text: 竹内謙二)