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人々の健康を考えない奴は、クールじゃない! 貧困状態の子どもや若者にベジタリアンフードを届ける、最高にヒップな奴ら「Hip-Hop is Green」

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みなさん、ヒップホップと言うと何が思い浮かぶでしょうか? 「よく聞く音楽のジャンルだね」とか、「ラップやダンスのことでしょ?」という意見がきっとほとんどなのではと思います。

しかし、実は奥深いヒップホップの世界。ラップ、DJ、ブレイクダンス、グラフィティの4大要素を軸に、知識、ビートボックス、言語、服装、起業精神まで、実に9つの要素で構成される思考体系なのだとか。

そんななかアメリカ西海岸では、この9大要素の次に「Health and Wellness(健康と福祉)を新たに組み込もう」という目標を持って活動に取り組む、最高にクールな奴らがいます。
 
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今回ご紹介するのは、「Hip-Hop is Green」という2009年に立ち上がったチーム。彼らは、自身のヒップホップの考え方を通して、子どもや若者たちに、栄養バランスのとれたベジタリアンフードを無料で振る舞う「Hip Hop Green Dinner」という食事会を行っています。

これまでにアメリカ西海岸に住む、約4000人もの貧しい若者や子どもたちに食事を提供。現在では10以上の都市で食事会を開催する「10th Elements Tour」というツアーを行い、健康な食事はもちろん、多くのアーティストたちによるヒップなパフォーマンスを提供してきました。
 
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「Hip Hop Green Dinner」を楽しむ子どもたち

この活動を立ち上げたのは、活動家のKieth Tucker(以下、キースさん)。自身の叔母が死刑制度の反対を訴えた活動家であることに誇りを持つキースさんは、「自分も社会に対して何かできることはないか」と常々考えていたそうです。そんな時にヒップホップというカルチャーに対して、健康に着目した要素を組み込むことを思いついたのだとか。

その背景にはアメリカにおける、肥満率の上昇という社会課題があります。中でも、ヒップホップのルーツを生み出した黒人系人種の約6割が糖尿病を発症する傾向にあると言われ、キースさんは食生活の偏りがどれだけ健康に悪影響を与えるか、ヒップホップを通して多くの人々に呼びかけ続けています。

「Hip-Hop is Green」が立ち上がってから、賛同するヒップホップアーティストが多く名乗り出ることに。実際、ニューヨークで行われた「Health and Wellness」をヒップホップの10番目の要素として宣言するセレモニーには、伝説的なオールドスクールのグループ「The Crush Cold Brothers」のMCであったEasy A.D.をはじめ、Styles PやJadakissなどの大御所MCたちが出席したのだとか。
 

Easy A.D.が在籍していた、Crush Cold Brothersの楽曲『The Weekend』

さらに、人々の食生活の改善だけでなく、有機栽培の環境問題から社会正義の観点にまで活動の幅を広げた「Hip-Hop is Green」はアメリカ大統領夫人であるミシェル・オバマ氏に注目され、ホワイトハウスに招待されることに。最近ではアメリカを飛びだし、ロンドンでも食事会が開催されるなど、その活動は日に日に広がりを見せている様子。

キースさんは、こう話します。

ヒップホップにおいて欠かすことのできない要素の一つとして、Health and Wellnessを正式に組み込む。そうすることで、あらゆる世代に健康であることが生きる上でどれだけ大切なことかを思い起こしてほしい。それがオレたちのゴールなんだ。

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Hip-Hop is Greenの活動は、ファストフードなどによって偏った食生活を送る人々に、もう一度、健康について考え直す良い機会になっています。

実際に、アメリカ国内のベジタリアン人口を見ても、キースさんが活動を始めた2009年には1%という低さでしたが、食生活を見直す動きが強まってから2014年には5%となり、人口にして1600万人にまで増加したそうです。

「You Are What You Eat」ということわざがあるように、食べたものがあなた自身の一部になっているということを忘れてはいけません。みなさんもこれを機に、日々の食生活について今一度考えてみてはどうでしょうか?

[via takepart,Hip Hop is Green,BLACK VEGANS ROCK,Madame Noire,The Raw Food World,One Green Planet,The State Of Obesity]

(Text: 米津琢磨)