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NPOブームや市民活動が広まる中で、ソーシャルデザインはどのように多様化した? greenz.jp編集長・鈴木菜央による「ソーシャルデザイン進化論」【第3回】


100万人のキャンドルナイト Some rights reserved by saikocamera

9月末についに完成した「ソーシャルデザイン白書2016」。greenz.jpを寄付で支えてくださる「greenz people」にだけお届けしていますが、読者のみなさんにも一部をお見せします!まずは編集長・鈴木菜央が書き下ろした第1章「ソーシャルデザインの歩み」をお楽しみください◎

2002〜2006年 NPOブーム、オープンソース、多様化

2002年、僕は当時感じていた「市民活動の世界で何かが始まっている」という予感を一枚の企画書にまとめ、雑誌『月刊ソトコト』を出版する「株式会社木楽舎」に入社しました。

その企画書が通り、入社後すぐに担当したのが、2002年9月号の特集「スローライフ!笑顔で生きるためのNPO100選」でした。先述の「ソーシャルデザインの誕生」で紹介した団体を軒並み掲載しています。日本のメディアにおいて、「市民活動とは、楽しいものである」と定義したのは、僕が知っている限り、この特集が初めてではないかと思います。

大変な反響があり、日本の市民活動を取り巻く気分をアップデートできたのではないかと、密かに嬉しく思っています。ここからは、この頃に多様に進化した「ソーシャルデザイン」の考え方、性質、仕組みなどの特徴を、ミームの見出しに分けて紹介していきます。
 

【非営利メディア】

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ジャパン・フォー・サステナビリティ
同年、「持続可能で幸せな未来へ向かう日本の動き」を世界へ発信する「ジャパン・フォー・サステナビリティ」(2002)が始まりました。市民が集うやり方で【非営利メディア】を運営しながら、社会に本質的な考え方を提案するというカタチは、greenz.jpを設立するときに大いに参考にしました。

【非営利メディア】は特に2010年代以降、「介護ライブラリ」(2012)、「トジョウエンジン」(2013)、「ヨレヨレ」(2014)、「LITALICO発達ナビ」(2015)など、多様に発展しつつあります。
 

【環境ネイティブ】

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ap bank fes’12 some right reserved by shinji_w

2003年頃になると、さらに新しいタイプの活動がどんどん登場してきました。まずは小林武史さん、櫻井和寿さん、坂本龍一さんの3人が拠出した資金を環境保護や自然エネルギー促進事業、省エネルギーなどさまざまな環境保全のためのプロジェクトへ低金利で融資する非営利団体「ap bank」(2003)。

音楽フェス「ap bank fes」(2005)を通じて、セレブリティたちが社会活動をする道をひらきましたが、僕個人としては、普通の人(特に当時20~30代の女性)が環境社会問題について気負いなく考え、行動する機運、すなわち【環境ネイティブ】を醸成したのは、数年にわたって行われた「ap bank fes」の大きな成果ではないかと思っています。
 

【オープンソース】


打ち水大作戦

そして2003年は、誰でもその活動の担い手になれる、言わば【オープンソース】型の活動が多く生まれた年でもありました。日本中、そして海外の何百万人もの人が一斉に打ち水をする「打ち水大作戦」(2003)は、実際に打ち水による温度低下の社会実験を行うなどしながら、アニメやコスプレなど秋葉原カルチャーと融合して、日本の夏の風物詩としてマスメディアにも普通に登場するくらい一般化しました。

同じく2003年に始まった、夏至と冬至に一斉に明かりを消してキャンドルで過ごす「100万人のキャンドルナイト」(2003)も、数百万人が参加する、日本の歴史上最大規模の市民参加型ムーブメントになりました。

打ち水にしてもキャンドルナイトにしても、誰もが参加できるカタチで、これほどまでの規模で社会に対して影響力を持つ市民活動は、今までありませんでした。

この【オープンソース】型の活動はどんどん広がりつつあり、「グリーンバード」(2003)、「森のようちえん」(2005)、「green drinks」(2007/発祥はイギリス2004年)、「せんきょCAMP」(2012)、「SOW!政治」(2015)など、たくさんの活動が生まれています。
 

【アドボカシー】


カタリバ

もうひとつ、2005年ごろから本格的に盛り上がったのが【アドボカシー】です。

それまでも日本のNGOによる政策提案を含むアドボカシー活動は行われてきましたが、2005年にイギリスから始まり、世界各国のNGOが連携して政府に「貧困を世界の優先課題に」と求めるグローバルアクションを受けて日本で展開された「ほっとけない世界のまずしさ」キャンペーンは、日本では初めて大規模に行われたアドボカシーキャンペーンとなりました。これ以降、「カタリバ」(2001)、「育て上げネット」(2004)、「フローレンス」(2004)、「RCF」(2011)など、多様な団体が【アドボカシー】を重視する流れができていきました。

以上、2003~2006年の動きを見てきましたが、環境と文化が出会い、基本的な考え方を提案する活動が多かった2003年までと比べると、活動テーマも手法も多様性が増したことを感じていただけるのではないでしょうか。また、実際的な活動が増えたのも特徴ではないかと思います。

鈴木菜央(すずき・なお)
greenz.jp編集長/NPOグリーンズ代表理事
76年バンコク生まれ東京育ち。2002年より3年間「月刊ソトコト」にて編集。独立後06年ウェブマガジン「greenz.jp」創刊。07年よりグッドアイデアな人々が集まるイベント「green drinks Tokyo」を主催。メディアとコミュニティを通して持続可能でわくわくする社会に変えていくことが目標。著作に『「ほしい未来」は自分の手でつくる』

第1章「ソーシャルデザインの歩み」の続きはこちら

【第1回】「ソーシャルデザインってなんだろう?」(11/14公開)
【第2回】「ソーシャルデザインはどこから生まれた?」(11/15公開)
【第3回】「ソーシャルデザインはいつ多様化した?」(11/16公開)
【第4回】「greenz.jpが生まれたのはどんな時代?」(11/17公開)
【第5回】「東日本大震災をきっかけに、何が生まれた?」(11/18公開)

「ソーシャルデザイン白書2016」を読みたくなった?

この記事でご紹介している「ソーシャルデザイン進化論」ほか、ソーシャルデザインの過去・現在・未来を1冊にまとめた『ソーシャルデザイン白書2016』は、People’s Booksチームが、これまでの以上の苦難を乗り越えて手がけた本です。「気になる、読んでみたい!」という方は、これを機に「greenz people」に参加してくださると嬉しいです。そして、本を手に取りながら、一緒にソーシャルデザインについて考えませんか?

『ソーシャルデザイン白書2016』の目次

■第1章 ソーシャルデザインの歩み
ソーシャルデザイン進化論 by 鈴木菜央(greenz.jp編集長)
■第2章 ソーシャルデザインの現在地
暮らし×ソーシャルデザイン by 増村江利子(greenzシニアエディター/シニアライター)
選択×ソーシャルデザイン by 赤司研介(greenzシニアライター)
未来へ残す言葉×ソーシャルデザイン by 磯木淳寛(greenzシニアライター)
自分らしさ×ソーシャルデザイン by 池田美砂子(greenzシニアエディター/シニアライター)
スタディ×ソーシャルデザイン by 兼松佳宏(greenzシニアエディター/シニアライター)
移住×ソーシャルデザイン by 平川友紀(greenzシニアライター)
パーマカルチャー×ソーシャルデザイン by 鈴木菜央(greenz.jp編集長)

■第3章 ソーシャルデザイン 未来への仮説
対談:暮らしの未来[わたなべあきひこ×徳永青樹×増村江利子] by 石村研二(greenzシニアライター)
対談:言葉の未来[島田潤一郎×磯木淳寛] by 新井作文店(greenzシニアライター)
対談:スタディの未来[中原淳×兼松佳宏] by 兼松佳宏(greenzシニアエディター/シニアライター)
対談:日本の未来[鎌田華乃子×鈴木菜央] by 村山幸(greenzシニアライター)


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greenz peopleご入会と本が届くタイミングについて

11月30日までの入会で、12月15日頃にBooksをお届けします!お早めにご入会ください◎