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現在の日本の子どもをめぐる環境に、みなさんは何を感じていますか?
孤独を感じずにはいられない都会の子育て環境、子どもも大人も何かが満たされない保育現場、メディアに横行する子育ての“あるべき”論……。もちろん、そうではない環境もありますが、私自身、ひとりの小さな娘の親として、胸が苦しくなるような閉塞感を感じています。
“保育園落ちた”をめぐる様々な議論では、個人の言葉が国をも動かす力になりつつありますし、子どもの育ちの場に世間の注目が集まったという意味では、大きな価値だと思います。でもその中に見られる、「子ども」という大切な存在が抜け落ちた大人の声に、何か本質を欠いたような、モヤモヤしたものを感じずにはいられません。
言い古された言葉ですが、子どもは未来そのもの。子どもの幸せがない限り、幸せな社会は実現できない、私はそう思っています。
「保育園に入れない」ことばかりが問題視されていますが、保育園入園の先に、お父さん、お母さんは、どんな未来を描いているのでしょうか。そこに、子どもの本当の幸せはあるのでしょうか。家族の“ほしい未来”は、いったい、どんな未来?
今、私には、改めて読者のみなさんと共に感じてみたい、5人の言葉があります。彼らの共通点は、常に子どもという存在を中心に据えて物事を考えていること、その先に社会や未来を見据えていること、そして、大人自身もワクワクしながら“子どものとなり”にいること。
大切なものを見失わないために、もう一度、5人の言葉に耳を傾けてみませんか?
まずは保育現場の方々の言葉から。
理想的な子どもの環境をつくることは、理想的な社会をつくること。小竹向原、六本木、吉祥寺。3つの「まちの保育園」ができるまで by 増村江利子さん
2011年、東京都練馬区に開園した「まちの保育園」。地域に開かれたカフェや、地域と保育園をつなぐコミュニティコーディネーターを配置して実践する“こども主体のまちぐるみの保育”は、評判を聞きつけて、地元だけでなく各地から興味、関心が寄せられています。
こちらは、開園から4年を経て3園体制になった「まちの保育園」を改めて紹介した記事にて、代表・松本理寿輝さんが社会を見据えて語った言葉。
松本理寿輝さん 子どもの理想的な環境をつくるって、理想的な社会をつくることと同義だと思うんです。子どもは大人をよく見ている。子どもたちの環境をつくっていくための大事な要素のひとつとして、まず大人たちがどんな信じられる社会をつくっているかということがあります。
子どもたちがその社会に入っていって、面白いと思える社会なら、子どもたちもよく育つんじゃないかと。子どもからたくさんの刺激を受けながら、子どもたちと一緒に大人たちも行動できたらいいと思います。(⇒続きは、こちら)
大人の自由が、子どもの自由を保障する。出版もイベントも、保育者自ら楽しむ「りんごの木」青山誠さんに聞く、”個が尊重される社会”のつくりかた by 池田美砂子
「りんごの木」は、子どもに関するトータルな仕事をする場。個性豊かなスタッフがそれぞれに得意分野を活かして、保育から出版、セミナーやイベントまで、幅広い事業を展開しています。
「りんごの木」の保育部門にあたる「りんごの木子どもクラブ」で“子どもの心に寄り添う保育”を実践する保育者・青山誠さんは、こどもの自由を保障するのは大人の姿勢だと語っています。
青山誠さん 「子どもを自由にしましょう!」と声高に叫んでも、大人が変わらなければ何も変わらないと思います。
大人たちが我慢していると、子どもにもきびしくなっちゃったり。まずは大人が楽しんで、自由で心安らかでいられる社会をつくること。すると気付いたらその隣で、子どもの自由が保障されるのだと思います。(⇒続きは、こちら)
そこは、多様な子どもと大人が集う小さな村。シェアオフィスもDJブースもある「しぜんの国保育園」齋藤紘良さんに聞く、“強く生きる”ために必要なこと by 池田美砂子
「すべてこども中心」を理念に掲げ、食、自然、芸術を柱としたユニークな保育を実践している「しぜんの国保育園」。
東京都町田市の豊かな自然の中にあるその小さな村では、多様な子どもと大人が集い、“強く生きる”力が育まれています。園長の齋藤紘良さんは、「大人が介入しない子どもだけの世界は大人の幻想」と語りました。
齋藤紘良さん すべて子ども主体になってしまうと、ともすると放任につながってしまう。そこに文化とか社会が入ってくることが大事だと思うのですが、それを司っているのは、「こう育ってほしい」という大人の願いです。
「子どもがすべて決めて、子どもだけでつくれば理想郷になる」という考え方は、世代を断絶していると思います。一本の柱があって、あらゆる世代が意見を言いながらもそこに立ち戻るという営みを、保育園でも、社会の縮図として実現していきたい。
「子どもがあんなこと言ってるけど、どうする?」と「大人はこう思ってるけど、子どもはどう感じているのかな?」という両方の視点が大事だと思います。(⇒続きは、こちら)
プロジェクトの担い手であり、
ひとりの母でもある方々の言葉も心にとめておきたい。
“私の子ども”から”私たちの子どもたち”へ。逗子をまるごと使って3児を育てる小野寺愛さんに聞いた「”地域ぐるみの子育て”のはじめ方」 by 安浩美さん
仲間とともに逗子の地域環境を存分に活かした子育てをしている3児の母であり、国際交流NGO「ピースボート」スタッフ、洋上のモンテッソーリ保育園「ピースボート子どもの家」代表の小野寺愛さん。
この言葉には、世界中どこでも実践できる、子どもを中心とした地域づくりのヒントが詰まっているように感じます。
小野寺愛さん いま、自由に決めて自由に遊べる空間が減っています。子どもにとってはもちろん、大人にとっても。
「怪我も楽しむことも自分の裁量で」ということをみんなのルールとして意識的につくりだすだけで、自然と”私の子ども”ではなく”私たちの子どもたち”って思えるようになるんですよね。それこそが地域づくりだなと。
私の場合はたまたまその場が海や山だったけれど、場づくりのきっかけは造形でも、演劇でもいいかもしれない。人それぞれの場所で、自分の得意なものを軸に仲間を集めたら「自由に決めて、自由に遊ぶ」が広がっていくんじゃないでしょうか。(⇒続きは、こちら)
子どもと過ごす時間と自分のやりたいこと、どちらも大事にする生き方を。お母さんたちが手をつなぎ、得意なことで社会とつながる場『くらすこと』 by 池田美砂子
「くらすこと」は、妊婦さんやお母さんたちをはじめ、すべての女性が参加できる活動プラットフォーム。「子どもと一緒のスローな暮らし」と「オーガニックな生活」をテーマに、食や身体、心に関するワークショップやお茶会を開催する他、カフェやオンラインショップも展開しています。
3児の母(現在は4児の母)でもある代表の藤田ゆみさんがご自身の生き方・働き方について語ったこの言葉は、「くらすこと」の活動のコンセプトにも通ずるものでもあり、多くの女性の共感を集めました。
藤田ゆみさん 私自身は、「お母さん」であることが自分の一番の仕事だと思っています。でも、やっぱり自分が得意なことで社会とつながりたい。私としてどうやって生きていくのか、ということも諦められない。それをどちらも大事にする生き方をしていきたいです。
頭ではみんな「家庭が大事」と分かっているけど、なかなかそれをするのは難しかったりしますよね。子どもは大事だけど一緒に過ごせなかったり。でもそうじゃなくて、私は、自分が本当に大事にしたいことを大事にした人生を送りたい。そのためにはどうできるか、ということをずっと自分で模索しながらやっている感じですね(⇒続きは、こちら)
新連載「世界と日本、子どものとなりで」で、新たな旅へ。
5人の言葉、いかがでしたか?
子どもをめぐる環境に問題意識を持ち、子どもの存在を中心に据え、自らも楽しみながら行動する彼らの力強い言葉に、私は未来への希望を見出しています。一人ひとりの想いと行動が、子どもも大人も幸せに生きられる社会をつくっていく。そう信じています。
私、池田美砂子は、greenz.jpのシニアエディターとして、「greenz people」の方々からの寄付をもとに、これから連載をつくっていきます。
その第一弾として取り組みたいのが、このテーマ。もっともっと多くの、子どもを中心とした社会づくりに取り組む方々の声を聞いてみたい。彼らとともに、社会全体で子どもの育ちを見守る文化をつくっていきたい。そんな想いを携えて、新連載「世界と日本、子どものとなりで」をスタートします。
子どもも大人も笑顔でいられるあの「園」、まちを子どもの遊び場に変えるあの「プロジェクト」、子育てママ・パパが元気なあの「まち」。信頼できるgreenzライターのみなさんとともに、日本各地、世界各地の子どもの育ちの場を訪ね、そこに生きる人々の想いをインタビューし、みなさんにお届けします。
素晴らしさを伝えるだけではなく、子どもをめぐる社会問題を様々な角度から検証したり、私たちが家庭や地域で取り入れるヒントも紹介したりしながら、「子どもの環境づくりは、私にもできる」「家庭や地域で、できることがある」「子育て世代じゃなくても、他人事ではない」そんな小さな気付きを、読者のみなさんと共有していけたらな、と思っています。
もちろん、子どもだけではなく、大人の幸せも貪欲に求め続けていきます。「この人のところへ訪ねてほしい」「あのまちの子育て環境が気になる」という読者のみなさんからの声も大歓迎! イベントやツアーなどリアルな場も設け、多くの人と対話をしながら、連載をつくっていきたいと思っています。
まずは私がもう一度、どうしてもお話を聞いておきたい、あの方のもとへ。
子どもをめぐる旅、あなたも一緒にはじめませんか?
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