ISSUE まちづくり

1 year ago - 2015.01.17

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“私の子ども”から”私たちの子どもたち”へ。逗子をまるごと使って3児を育てる小野寺愛さんに聞いた「”地域ぐるみの子育て”のはじめ方」

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この記事は、「グリーンズ編集学校」の卒業生が作成した卒業作品です。編集学校は、グリーンズ的な記事の書き方を身につけたい、編集者・ライターとして次のステージに進みたいという方向けに、不定期で開催しています。

核家族化・少子化・地域のつながりの希薄化が進んでいると言われる中、「地域ぐるみで子育てをしていきましょう」そんな言葉を聞くことが増えた気がしませんか?

一方で、実際にはどのように行動したらいいのか分からず、一歩踏み出せていない人も少なからずいるはず。

今回お話を伺ったのは、仲間とともに逗子の地域環境を存分に活かした子育てをしている3児の母であり、国際交流NGO「ピースボート」スタッフ、洋上のモンテッソーリ保育園「ピースボート子どもの家」代表の小野寺愛さん。

世界を回ってきた愛さんが考える子育て方針や、逗子での地域ぐるみの子育て活動についてお聞きしてきました。
 
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小野寺愛(おのでら・あい)
地球9周した船乗り、波乗り、3児の母。国際交流NGO「ピースボート」スタッフ、洋上のモンテッソーリ保育園「ピースボート子どもの家」代表。地元逗子で「こどものてしごと」を運営。共著に「紛争、貧困、環境破壊をなくすために世界の子どもたちが語った20のヒント」(合同出版)

自分が楽しいこと、周りも誘ったら活動がはじまった

愛さんが逗子に引っ越してきたのは、一番上のお子さんが2歳のときでした。

逗子の海に通い始めたのは、大学時代にウィンドサーフィンをしていた頃から。子どもが産まれてからも自然と湘南へと足を運び、そのまま引っ越しをすることになりました。

逗子には自然が好きで移住した方が多い小さな町で、「周りの人とも気があった」と愛さん。暮らしは、まず自分や家族が逗子の自然を楽しむところからはじまりました。

もともと夫婦で好きだった海での活動に加え、アウトドア企業に勤めていた旦那さんの影響から、山や森へも活動は広がっていきます。

もともとランニングといえば道路を走っていたのが、逗子に来たら山へと入るトレイルが近所にたくさんあって。森の中で走ると気持ちがよくて、ランニング熱も倍増。自然と、家族で一緒に山を散歩するようにもなりました。

楽しそうにグングン歩く子どもの表情を見ていると、今度は「自分の子だけじゃもったいない」と、周りの子も誘うようになって。海も山も、みんなで行くと、自然を楽しむ力まで倍増する気がするんです。

現在、愛さんには7歳、5歳、0歳の3人のお子さんがいますが、活動のはじまりは全て自分の育児の中で「楽しい!」と思えることから。

0歳児では「湘南おむつなし&さらしおんぶ育児の会」、5歳児では季節の手仕事を親子で楽しむ「こどものてしごと」、7歳児の小学生では「黒門とびうおクラブ」の活動を仲間と共に行っています。
 
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黒門とびうおクラブ」 放課後の小学生を対象に、逗子海岸にてマリンスポーツを楽しんだり、山で秘密基地をつくったり、地元で活躍する人と対話の時間をもったりと、地域の人と自然を存分に活かして、親子で育つ場づくりを行っている。

それぞれの活動への関わり方は様々。自分が言い出しっぺになったものもあれば、仲間と共に立ち上げたもの、そして仲間が始めたものにサポーターとして関わる場合もあります。

「黒門とびうおクラブ」は、次女の親友パパが立ち上げたものですが、私は勝手にPTA会長(笑)のつもりで、できることはなんでも協力しようと心がけています。

海外から友だちがきたら、この人の話を子どもたちが聞いたら面白いだろうなとお話会を開催したり、ホースセラピーをやっている友だちが馬を連れてきたときにも「とびうおクラブ」の山活動に同伴しました。

楽しいことはなんでも共有、が基本です!

“私の子ども”から”私たちの子どもたち”へ

愛さんの話を聞いていると、まずは自分が楽しむことで、自然と周りを巻き込んでいく…。そんな流れがみえてきますが、これは親子の間でも一緒。

「こどものてしごと」の活動でも、親が盛り上がっているのをみて、子どもも一緒に楽しむようになる、そんな姿をみることができるそうです。
 
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「こどものてしごと」は、おばあちゃんの代までは暮らしの中にあった味噌づくり、梅仕事、栗仕事など、いつのまにか受け継がれることがなくなってきたことを、子どもたちとともに取り戻していく活動。

サンドイッチはマヨネーズづくりから、ケーキならバターをつくるところから自家製で、お団子は葉っぱを摘んでくるところから楽しむそうです。

今、仲間と盛り上がっているのはソーセージづくり。ソーセージづくりになると、子どもや母親はもちろん、父親も盛り上がる、盛り上がる!

ソーセージづくりは「湘南ぴゅあ」さんという、無添加ソーセージの老舗にお手伝いいただいていますが、近い将来、みんなで豚を飼うところからはじめたらどうか、と大人が冗談半分、本気半分で話しているのを、子どもたちは真剣に聞いています。

豚さんのベッドになっている木屑も薫製に使うチップも、逗子の森を生かし直すための間伐材。そんな風にできたものを子どもたちが「逗子の森を育てるソーセージです!」と近所のお店に営業したら、楽しそう〜、なんて。

「一人で見る夢はただの夢、みんなで見る夢は現実になる」ってオノ・ヨーコさんが言っていたけれど、そんな作戦会議を夜ご飯食べながら、わいわいやっています。

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スローライフ、農のある暮らし、DIY、コミュニティづくり。「昔から感覚的にいいなあ、と思っていたことが今、仲間のおかげで実体験として積み重なっている感覚があって、本当に楽しいんです!」と目を輝かせながら話す愛さん。

活動をしていく中で、地域ぐるみで子育てをする上で大切にしたいことも見えてきたそうです。

海や山の持つ力って、すごい。何もしなくても、子どもたちは勝手に遊びだします。山でツリーハウスをつくったりするときなんてお父さんたちも真剣で、子どもたちそっちのけです。

でも、子どもは子どもで楽しそうに、それぞれ拾い物をしたり、大人のすることをじーっと見ていたりする。そんな環境だと、自分の子じゃなくても「やってみるか?」って声をかけるのが当たり前の風景になる。

逗子の海と山という身近にある自然が、仲間の子どもたちにも自然と声がけできる関係を促してくれるんですね。

いま、自由に決めて自由に遊べる空間が減っています。子どもにとってはもちろん、大人にとっても。

「怪我も楽しむことも自分の裁量で」ということをみんなのルールとして意識的につくりだすだけで、自然と”私の子ども”ではなく”私たちの子どもたち”って思えるようになるんですよね。それこそが地域づくりだなと。

私の場合はたまたまその場が海や山だったけれど、場づくりのきっかけは造形でも、演劇でもいいかもしれない。人それぞれの場所で、自分の得意なものを軸に仲間を集めたら「自由に決めて、自由に遊ぶ」が広がっていくんじゃないでしょうか。

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「参加する」の意識を変えてみる

では、地域ぐるみの子育てを実現するには、何から始めたらいいのでしょうか。

「もともと逗子に盤石な基盤があったわけではなかった」という愛さんは、逗子に引っ越してきたときには、まず仲間づくりを積極的にしていったそうです。

気軽に色んなものに参加してみるところからはじめました。そして、そこで面白い人に出会ったら、出会った面白い人同士をつなげるランチやイベントを今度は自分で主宰しちゃう。

仲間が欲しかったら、自分をオープンにして飛び込むのがいちばん。いろいろ調べ物をするよりも、まず一歩踏み出してみたら、リアルな会話から必ず何かがうまれます。

仲間がいない中で大きな一歩を踏み出すのには勇気がいること。それでも「ちょっと参加意識を変えてみると、世界が開けてくる」と愛さんは続けます。

今の世の中、私も含めて、”消費すること”に慣れすぎている。ワークショップに参加しても、提供されるのを待つ、受け身の状態なんですよね。

でも、いつも”消費者”であることをやめて、つねに”参加者”であろうという姿勢を持つと、とっても楽しいんです。「何を教えてくれるんですか?」「支払った対価に見合うものを提供してよね」ではなく、 ワークショップ提供者が困っていれば手を差し伸べるのは当たり前。

いつも「みんなで何を生み出すことができるか」を考える。消費者であることを卒業して、本当の意味で「時代の参加者である」という意識を、親世代が取り戻したいなと思います。その背中を子どもがみることもすごく大事なんですよね。

どこの場でも根っこをはやして、活動していける子どもに

今でこそ逗子での地域活動を積極的に行っている愛さんですが、これまでは、ピースボート勤務14年というキャリアから、「グローバルと子育て」というテーマで話をする機会が多かったそうです。その愛さんが、地域での子育てに力を入れているのはなぜなのでしょうか?

グローバル力って何かと問われたら、バイリンガルで、国際機関やグローバル大企業でバリバリ働く人をイメージしませんか?

でも母親として子どもの中に育みたいのは「世界のどこにいてもたくましく、幸せに生きることができる力」だと思うんです。英語なんて二の次。英語が話せても、話す内容がない子どもに育ててもしょうがない。

グローバルに知られている活動もね、たどっていくと、徹底的にローカルなものが多いんです。 イタリアのスローフード運動は世界中で愛されているでしょ。

成長の尺度に「幸せ」を採用したブータンのGNH(Gross National Happiness)もみんなをハッとさせ、イギリス政府や国連に研究チームまでつくらせた。

スローフード人気もGNHの流行も、なんであっても、自分のいる場所に根ざして、責任感と誇りとともに、日々、小さくてもできることを重ねていったひとたちが大事なんだと思うんです。

だからこそ「グローバルとローカルは、切っても切り離せない、つながっているもの」だ、と愛さんは確信しました。

地域であれ、海外であれ、その場で根っこをはって、自分ができることに幸せを感じられる子どもを育てたい。

そのためには、小さい頃には徹底的に「地域」で手足を使って感じることが大事だなと思っているんです。英語などのツールは、あとからついてくるもの。

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これからは自分が変化を生み出す側に

愛さんとのお話の最後に出てきたガンジーの言葉。

Be the change you wish to see in the world.
(あなたが見たいと思う世界の変化に、あなた自身がなりなさい)

「地球9周分の船旅を通して、これまでは世界中でいろんな経験をさせてもらいました。これからは変化を生み出す側にならなきゃね。逗子から」と愛さんは笑顔で力強く語ってくれました。

自分が楽しいことは、なんでも周りと共有する。
「自由に決めて、自由に遊ぶ」場を広げていく。
“消費者”を卒業して”参加者”になる。
グローバル時代だからこそ、ローカルを大事にする。

そして、いきなり大きな一歩でなく、自分の周りからできる小さな一歩を踏み出す。そこから、芋づる式で全てがつながっていく。

愛さんのお話から、そんな「目の前のことを全力で楽しめば、自ずと道は開けていく」ことを学んだ気がしました。

何かやりたいけど一歩踏み出せない…。そんな人は、まずは身近なイベントからでも、つくる側として参加してみませんか?

(Text: 安浩美)

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