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『日本のSDGs それってほんとにサステナブル?』高橋真樹さんに聞く、SDGsの限界とその向こう側(後編)

こんにちは、鈴木菜央です。「いかしあうつながり」「関係性のデザイン」に近い分野で実践・研究しているさまざまな方々と対話する連載の第6回目はノンフィクションライターで、国内外をめぐり持続可能性をテーマに取材・執筆(greenz.jpでも記事多数)している高橋真樹(たかはし・まさき)さんです。

真樹さんは、『日本のSDGs それってほんとにサステナブル?』(大月書店)を出版されました。今回の対談では、この本の内容を参考にしながら、「いかしあうつながり」やサステナブルとは何かについてさぐります。

前編ではSDGsって何者? という根本的な話題やドイツの断熱改修の事例などで盛り上がりました。この後編では日本の事例をきっかけにテーマを掘り下げていきます。

高橋真樹さん

“コモンズ”で真の豊かさを取り戻す

鈴木菜央(以下、菜央) “コモンズ”(※)っていう考え方は『人新生の資本論』(斎藤幸平著)ですごく注目された考え方ですが、政治家のバーニー・サンダース(アメリカ合衆国上院議員)や、ジョージ・モンビオ(世界規模で活躍する英国のジャーナリスト、環境活動家)なども、“コモンズ”を通じてもう一度豊かさを共有すべきじゃないか、ということについて語っています。

人間が生きていくのに必要なニーズのうち、経済が解決・提供できるものごとなんて、本当に一部です。飲める水、綺麗な空気、食べられる植物は太陽、水、さまざまな生き物、それらをとりまく環境とそれぞれの関係性からしか、手に入りません。親子の愛、地域のおとなたちが子どもを見守ることなんかも、サービス化できません。そういう領域って広大に広がっているのに、あらゆる物事が市場に取り込まれていくことで、喪っている豊かさがとてつもなく大きい。だからもう一度、“コモンズ”を取り戻すってことなんじゃないの? って言ってると思うんです。

(※)地域や共同体の人々が共同で管理し、誰もが文化・自然資源にアクセスできる共有地。里山から食料や薪を集める入会地から、ウィキペディアなどの文化的コモンズまで、さまざまなコモンズがある。ここでは特に、社会の富が「商品」として現れないようにみんなでシェアして、自治管理していく場

真樹さん(以下、真樹さん) 多くの人が、このままの資本主義のあり方じゃもうもたないよと思っていることは確かだと思います。

菜央 そんなコモンズも、「経済合理性」の名の下に、どんどん失われていっています。うちの近所の鎮守の森が田んぼの区画整理に伴ってなくなってしまった。駅前にあったスーパーはお年寄りの憩いの場、交流の場だったけど、大資本スーパーに負けて、なくなってしまった。それって全国、全世界でみられる現象じゃないかな。

こんな時代だからこそ、みんなで経済で測れない価値がある場を共同でつくっていく、守っていく。そんな“コモンズ”のあり方が必要なんだなって。最近そこにすごく興味があるんです。

真樹さん 地域の共有財産を誰が担うかというバランスはすごく重要です。これもドイツの話ですが、自治体が出資してインフラを担う公社を立ち上げる「シュタットベルケ」の仕組みは、まさに必要な住民サービスを地域主体で担うものです。

電気ガス水道といった生活に必要なインフラを握っている。自治体は出資して意見は言えるけど、事業そのものは独立採算で行われています。古いところではもう200年くらい続いているんですね。

地域の人々の意思が反映されるような形で、公共サービスを今こそ拡充する工夫をしていく必要があるんだけど、日本では逆に、自治体がお金がないから水道を売って民営化する動きが起きている。もちろん非効率のままでいいわけじゃない。でも単なる民営化では、儲かるかどうかだけで判断されるので、コモンズとはもっとも遠い話になってしまいます。そういうシステム自体を見直していかないといけない。

菜央 そうなんですよ。だから僕もシュタットベルケを勉強したいなと思ってるんです。

真樹さん ドレヴィッツ団地もそうですね。

改修前は住人が定着せずすぐ出ていって、取り残される人が多かった。今はそこに住みたいと思って住む人が増えてきたため、地域の地価も上がっています。自治体にとっては、改修費として支出した費用の一部が経済的価値としても戻ってきている。また、犯罪率も低下しています。表面的には支出ばかりのように見えるけれど、実はプラスになってる部分もすごくあるんです。

菜央 “コモンズ”って何か豊かさをつくり出す場所だとも思ったんですね、僕は。この団地の例でも、子どもが喜んで遊んでる声とか、車が減ることによる長期的な利益とか、いろんな豊かさがうまれた。

僕の住むいすみ市では地域通貨をやっているんだけど、それもある意味で豊かさをみんなでつくり出してるコモンズと言えるかもしれない。お互いにそれぞれで暮らしていれば生まれなかった、モノの循環、人間関係の豊かさ、困った時はお互い様のセーフティネットができて、育っていっている。

真樹さん そういうネットワークはすごく大事ですね。

いすみ市にあるコミュニティの生態系

菜央 ゴミも減るから、モノを提供する人も喜ぶ。冷蔵庫をもらいに行くとその人の家に上がるんで「こういう感じで暮らしてるんだ」みたいにお互いを知ったり。「DIY手伝ってください」のやりとりがきっかけで、その人の技術を知って、家のリノベーションを頼んだり、周りの人も、たとえば「へぇ、あの人はサルサが踊れるのか!習いたかったんだよね」っていう具合で、いろんな豊かさがそこから取り出せるんだよね。みんながお互いのことをもう少しよく知って、何か困った状況に陥ってもなんとなくみんなで見守ることができたり、その人が立ち直るきっかけを周りの人が提供したり。地域通貨を通じて、その助け合いを見ていること自体が嬉しい、ということが起きる。「私、この町に住んでいて良かった」みたいなじわっとした安心感、これがすごく大事だと思うんです。

この“コモンズ”みたいなものをつくりたいという意思を持った人が町に1人でもいれば、その町が豊かになる可能性がある。

真樹さん 生活に最低限必要な部分って、やっぱり公共サービスで担えるような社会でないと危ないと思います。

あとはさっきの話でいうと、菜央さんは周りに仲間がたくさんいるので、お金がなくても何とかやっていけるかな、みたいなところがあると思います。そんなふうに、必ずしも地域コミュニテイィだけである必要はないけど、僕ら一人ひとりができる関係づくりの範囲を、もっと多くの人に広げていくことができればいいのかなと思いますね。

水田再生から広がる好循環

菜央 あと『日本のSDGs それってほんとにサステナブル?』でも、いすみ市の食のことを取り上げていますが、給食のお米が100%オーガニックになったって。最近は野菜も順次転換していってるんだけど、これって単に食が切り替わったっていう話ではないと思う。

離農が続出するなか、頭を悩ませたいすみ市長が2010年に兵庫県豊岡市の有機農法による水田再生の事例に出会い感銘を受けた。これを機に市は数年後、農林課の職員が先導して、本格的に有機農法による水田再生を通じた地域活性化の取り組みを始めた。いすみ米の名は「いすみっこ」

菜央 給食そのものが安心安全になったという価値のほかに、本にも書いてあったけど、田んぼにいた何千種類もの生き物が、農薬を使わないことによって戻ってくる。

渡り鳥も戻ってくる。
子どもたちがその田んぼで遊ぶ。
それらのチャレンジを聞きつけた人たちがいすみ市に引っ越してくる理由の一つにもなる。

そして、チャレンジをして先駆けになったことで、少しずつだけど地域への誇りが生まれてきている。そういう、多様な豊かさがもたらされるんですね。

それに対して、「一円でも安く」の競争の中でつくられたお米は、中央の卸売り市場に出て行って、日本中の米との価格競争に巻き込まれる。そこで差があるのは「価格」のみ。そうすると、さっきと同じで、自分の地域のものを選ぶ可能性は低くて、結局地域の外にお金が出ていくことになる。

僕らは「いすみローカル起業プロジェクト」という、「経済の地域化」にも取り組んでいるんですが、その視点から今回の学校給食のオーガニック化をみると、食の地域化こそが、ぐるぐるとまわる強い地域経済の土台なんですね。同じ1万円が何度も何度も地域の中で回ることで、価値が何倍にもなる。地域の中でたくさんお金が回ることで、豊かさが上がるんですよね。

何か、そういう動きになってるのかな。これも何か単一の課題を解決するっていうよりは、本当にいくつもの課題を解決していこうという。

真樹さん いすみではもともと、田園風景とか生物多様性を何とかしたいというところから出発して、オーガニックの米づくりが始まりました。それがいろんなところに波及して、すごくおもしろくなっている。

全くの未経験から、市と農家が協力してでオーガニックの有機栽培米をつくろうってプロジェクトはなかなかありません。つくった後の流通ルートとかまで最初は考えてなくて、話し合って「学校給食で使おう」となったのが、結果的にうまくいったとお聞きしました。

いすみ市の田園風景(提供:いすみ市)

菜央 そうなんですよ。この活動は、子どもたちが自分の町を誇りに思うことにもつながっている。全部の小学校ではありませんが、総合学習の時間を活用して、小学校では田んぼの生き物調査なんかも行ったりして、生物多様性を学ぶ入口にもなっている。

民間でも、そんな活動と連動するかのように、さまざまな自然体験活動を主とした自主保育サークルや、実際に米づくりに参加しながら生物を観察したり、草鞋を編んだり、甘酒をつくったりと、米づくりに付随するさまざまな活動を通じて学ぶ小学生向けの教室や、薪づくりをしながら、森や木々から学ぶ活動など、さまざまな活動が活発に動いています。

これらの活動はそれぞれ別々なんですが、お互いに重なり合ってもいて、なんというか、大きな文化を編んでいるような、そんな状態があります。

移住者が多いいすみで「移住者のがあちこちでチョロチョロやってるね」じゃない。食べ物のこと、命のこと、子どものことって、まちづくりや、大袈裟に言えば、人間が生きること本丸です。そこでこういった変革を起こせてるっていうのは、なんかすごい希望を感じるんですよね。

有機栽培の水田で田植えをする子どもたち(提供:いすみ市)

真樹さん 本当すごい。いすみに住んでいる方は、この話を知ってるんですか?

菜央 そうですね〜。むしろ知らない人も多いと思います。

すこしずつ地元の人の間でも「あれ、なんか実はすごいことなの?」みたいな噂が立ち始めている感じ。あとあと移住希望者に「移住した理由は?」って聞いたら、ニュースや映画(『いただきます』)でこの話を聞いたという人がかなり多い。

だからこの活動を、市役所農林課の話だけにするんじゃなくて。町の誇りであり、未来づくりであり、経済づくりであり、レジリエンス向上につなげたい。

ふたたび経済危機が起きたとしても、地元で食べ物を育て、買って、食べていれば経済危機の荒波に飲み込まれなくて済むので。だからいすみの学校給食の有機化もね、ドレヴィッツの団地みたいな、街全体を変えるプロジェクトに育つ可能性も十分あるなと思っているんです。

真樹さん それがSDGsだと思います。レジリエンスとか安全保障とか。安全保障っていうと、どうしても日本社会では軍事的な面に話がいきがちなんだけど、軍隊で守れる安全保障って意外と少ない。

菜央 なるほど、その視点はなかったな。いや、本当にそうですね。

真樹さん 食の安全とかエネルギーの安全とか、医療もそう。今コロナ禍でより問われている。そういった僕らの安全保障って、最新兵器がいくらあっても守れないわけですよね。

そういう仕組みを地域コミュニティでどう築いていくか、という方がよほど重要なのかなと改めて思っています。ドレヴィッツにしてもいすみにしても、レジリエンスであり、安全保障なんです。

菜央 そうそう。お米の有機化から始まって、野菜の有機化も進んでいます。給食センターが使いやすいような大きめの野菜をつくってもらう必要があるそうで、給食センターと各農家との間に入って、すごく密接に話し合いを重ねながらやってるんですけど、この豊かなつながりを活かして、有機の八百屋さんを始めたんですよ。

その八百屋さんが、かなりさびれてシャッターだらけになった商店街のある一角に、ある日突然オープンしたんです。そしたらなんか、お客さんがもうすごくたくさん来るんですよ。僕も常連なんですけど(笑)。

まだオープンしたばっかりなんですけど、そこでアルバイトしてる20代のスタッフたちも「なんか私、納豆つくりたくなってきた」って、地元のオーガニック大豆を使って納豆を試作中だと聞きました。だからなんていうか、小商いの土壌になってきてるんですよ、八百屋が。給食米から、野菜生産の話になって、さらに今は地域経済とつなげる動きに発展しているというわけです。

なんか有機的に土づくりをして、いろんな動きが始まって、それが苗床になってまた次の動きを生んでいく、みたいなことが今いすみで起き始めていて。非常にワクワクしてます。

真樹さん それはすごくいいですね。自治体の1部署のプロジェクトだけになってしまうと、担当者が変わると終わってしまったり、役所の力の入れ方次第ではまた衰退しちゃうこともある。でも住民の間でどんどん広がっていくと、しっかりしたコミュニティとか、土台づくりになりますね。一緒にいろんな人が関わることって、いろんな知恵も出てくるでしょう。

菜央 そうそう、まさにSDGsの17番にあるパートナーシップかなって思うんですよね。垣根を越えてね。

コロナ禍。暮らしのつくり手になることで変わること

菜央 最後、もうひとつ話題にして終わりにしたいなと思っていて。それがね、やっぱり「新型コロナ感染症」のことなんですよ。SDGsの本の中でね、なんかもう本当にそうだよなって思ったフレーズがあって。思わずノートに書き出したんですけど。「たとえ今回のパンデミックがおさまっても、今の経済社会体制が続く限り、新たなウイルスは現れると警告している」って。

ポイントは「今の経済社会体制が続く限り」のところなんだよね。突然、どこかからコロナがバーッと出てきたんじゃなくて。大げさに言えば、コロナに至る布石をね、僕らが150年ぐらいかけて着々とやってきたわけ。

真樹さん そうなんです。

菜央 ということは、今の経済社会体制がある限り、おそらく常にウイルスが現れる状況が続くことになる。あとはもう、ガチャみたいなもの。当たりを引く確率がけっこう高いガチャ。

だからウイルスをどうにかしようというのは、無理だと思うんですね。なぜかというと、僕らが効率を最優先して、高度な経済社会をつくり上げて、高度な情報化社会をつくり上げて、これだけの“移動”とこれだけの“つながり”を世界中の人が持っている。で、自分たちの幸せとか経済に関係あるものは自然界から取るけど、あとは全部壊して排除するっていう。だから調節する仕組みもない。

真樹さん 奪うだけですね。

菜央 僕らの世界は、広大な畑に、たったひとつの品種の作物が植っている「モノカルチャー」の畑みたいなもんですね。僕らはその作物みたいなものです。一番儲かる品種を大量に植えるけど、いままでは虫が発生しても薬をがっつり撒いて押さえていた。ところが、そんな薬がへっちゃらなすごい虫が現れて、被害が広がっている、そんな状況です。製薬会社がさらなるすごい薬を開発中ですが、その先は、さらにそれが聞かない虫が登場する未来がまっている。なぜかといえば、人間がメッセージを無視し続けているからです。

それは、「自然を破壊することは、あなた自身を破壊することだよ」というメッセージです。サティシュ・クマールさんは「コロナの蔓延は、人間が自然に愛を向けていないから起きたのです」とはっきり言い切っています。根本的に僕らの生き方・あり方や社会のつくりかたを変えていく必要性があらためて突きつけられたかなと思うんですよ。

真樹さん 欲望のままに経済的な利益を追い求めた結果、地球上の哺乳類のバランスが極端に崩れてしまいました。工業的に肉の生産を増やしてきたので、いまでは4割近く(36%)が人間で、6割が家畜です。つまり自然界の哺乳類の96%を人間と家畜が占めるようになった。生物多様性もあったもんじゃありません。

菜央 96%……そんなになってるんですか、知らなかった!

真樹さん 野生動物はもう4%しかいなくて、さらにどんどん減っている。そういうバランスの中で、同じ種類の生き物ばっかりが地球上に占めてたら、それではウイルスは流行りますよね。ウイルスにとって天国のような状態なので。

ウイルスの種類もそれこそ何百万種類、何千万種類ってあるわけだから、コロナだけやっつけてもモグラ叩きみたいな話になりそうです。

菜央さんが言った通り、コロナが流行りやすい環境を僕たち自身がつくっちゃった。そこを見直さないと、本当に変わらないんだろうなって思いますし、じゃあどういうふうに変えていくのか? 「まずは肉食を見直さなきゃ」みたいなものも出てきてますけど、習慣を見直すって、人間って慣れちゃってるからあんまり見直さない。

僕も本にいっぱい書いてありますけど、政府が悪いのではとか、政策が問題だとか、仕組みつくりを変えなきゃ本質的には変わらないとか。確かにそういう面もあるんだけど、それを支えているのもやっぱり私たち生活者っていう面もある。だから、変えるべきはその両方なんですよね。常識を見直して変えていくってことがいかに大事かというのは、いつも思いますね。

菜央 欧米のニュースを見ていると、アメリカやドイツの食肉加工工場では1000人を超える大規模なクラスターが起きたりしているそうです。

こういった労働は、移民労働者が主に担っているんですが、ものすごく狭くて換気も悪いところで危ない作業を続けてストレスもかかって、狭いとこで雑魚寝するような生活をしてたら、それはもうすごい規模のクラスターになるんですね。

そういう、知らないところで安い肉をつくっているっていうことが、僕らの「1円でも安く肉を買いたい」っていうところにつながってきて。でも僕らは1円でも安い肉を買うことを通じて、そういう社会を支持してるんですよね。残念ですけど…。

真樹さん まず問題とされなければならないのは、「工業的な家畜の大量生産大量消費の仕組み」です。すぐに「みんながべジタリアンになりましょう」という話ではありません。ウイルスの蔓延にそのシステムはすごく関わっていることは確かです。

菜央 やっぱり一人ひとりが消費者から抜け出して「暮らしのつくり手になる」ってことが必要なんじゃないかな。「暮らしのつくり手」になって、「社会のつくり手」になる。いきなり「社会をつくりたい」はハードル高いから、まず暮らしのつくり手になる。たとえばみんなで保存食や味噌を地域の人と一緒につくるとか。

そうするとエンターテイメントにもなるし、子どもがその周りで走り回って自然に食育にもなるし。安心できるものを手に入れることで、地域の人とつながることでレジリエンス、助け合いのネットワークにもなる。

なんかそういうつくり手になることをひとつひとつ暮らしの中でやっていくと、とにかく安いものを買わなきゃいけないっていう圧力から逃れられると思うんですね。

そういうことをやることで、買い物がどういう結果につながってるのかっていうことを観察しながら、勉強しながら、もしくは人に教えてもらいながら、一歩ずつ地元のそういうところから買う。お肉や野菜はこういうところから買おうとかね。

だからさっき、いすみに地域のオーガニックの八百屋ができてすごく嬉しいっていうのはそういう意味なんですよ。そこで買えば本当に間違いなく地域の未来につながるっていうのが実感できるんです。

真樹さん フェアトレードとかオーガニックとかっていうラベルは確かに参考ではありますが、ラベルさえあれば万全だよというわけでは決してありません。

ラベルがついてなくたって、地域産のものとか、直接顔が見える人がつくっている方がよっぽど安心だということはあるわけです。そういう環境とか関係性をつくっていくっていく姿勢が重要かなと思っています。

菜央 うん。東京の中でも地域のつながりが豊かな場所はたくさんあるので、そういうところに住むとかね。

“立体化”と“つながり”でワクワクを増やしていく

菜央 今日の学びを思い出してみると、「みんなで暮らしを地域化していくこと」の可能性を感じましたね。「みんなで」っていうところがポイントかな。自分が属しているセクターを超えて、つながっていく。いつも話し合っていつも学び続けるみたいなことが、持続可能な社会を作っていくやり方なのではないか、というのは大きな学びでした。

その入り口はいろいろあっていい。学校の断熱をみんなでDIYする、地域通貨を始めてみる、学校の給食を変えていく、団地をつくりかえる、とかね。

真樹さん 地域全体とか大きな話をしてしまうと、個人ではなかなか取っ掛かりがない人もいるかもしれません。でもひとつのカフェとか人が集まる場所から広がる世界ってあると思うんです。

例えば僕は埼玉の川越に住んでいるんですが、近所に古民家を改修してのゲストハウス兼カフェにしてる「ちゃぶだい(Chabudai)」という場所があるんです。そこが地域でまちづくりなどに関わるユニークな人たちが集まる交流の場になっているんですよ。

そういう起点が1ヶ所あるだけでも全然違うんですよね。感度の高い人たちが集まって、そこからまた新しい気づきやプロジェクトが生まれて、その地域が面白くなったり、SDGs的なことも広がるとか。そういう場所が各地にどんどん増えるといいなと思っています。

菜央 ひとりでも起点になれるんだよね。

真樹さん 小さくてもいい。そこからまた新しいつながりも生まれるということを感じています

菜央 それとこの本に書いてあった「ヒーローが助けにくるわけじゃない」っていうフレーズ。最初にダンスを始める人が必要で、でもその人は別にずっと踊り続けなくてもいいかもしれない。それを見てダンスに加わる人とかもいて。

真樹さん その人が悲壮感じゃなくて、楽しそうにやってるとみんな楽しんで参加してくるんですよ。いすみでも同じだと思います。

菜央 うん。なんか、だいぶわかったかも。SDGsの向こう側が。

真樹さん SDGsは、地域や自分ごとに落とし込むのにちょっとわかりづらいところがあります。それをドレヴィッツにしても、いすみしても、具体例を出しながら、「こういう方向性がやっぱり大事だよね」っていうことが伝わっていけばいいのかなと思っています。

菜央 なんかあれですね。ある意味、人生の冒険というか。自分の課題を解決することと、友達の課題を解決することと、地域の課題を解決することが全部つながってきて。一番おもしろい遊び? 大冒険? なのかなって、思うんですよね。

真樹さん グリーンズの周りの人たちがおもしろそうにやってるのがすごい素敵だなあと思うし、要はグリーンズが前からやってきたことを国連が認めたようなもんじゃないですか。

菜央 そりゃすごいな、グリーンズ(笑)

真樹さん こういう方向性がいいんだよっていうことでね。それをSDGsをきっかけにさらに広げていってほしいと思っています。

今までは「意識高い系」みたいに言われてしまって、そういう人たちだけのサークルの話だと思われてきたことが、これからは誰でもやるのが当たり前の時代になったということでもある。みんなが楽しみながら普通に気楽に参加できるような場所が増えたりそういう雰囲気ができている気がします。

菜央 個人的にはポイントはたぶん“立体化”だなと思いました。

なんか、みんなが個別孤立した状態で10万人に伝わって10万人がエコバッグを持ち始めるっていうことじゃなくて。たとえば誰かが言い出しっぺでカフェをやる。そこに集まった人が盛り上がって、次のプロジェクトやるとかっていうことが次々と起きていく。で、たとえばそこに行政の人がフラッと遊びに来て、だんだん行政も何か変わっていくだとか。分野的にもいろんな問題を、それぞれやりたい人、解決したい人がプロジェクトを持ち寄って。

立体化っていうことと、あと“つながり”。個別の企業が個別の対策をやるのはもう限界かなと思いますね。できることはもうちょっとあると思うけど、たぶんもう限界に行き着くんで。企業の熱い担当者とかその仲間たちが、市民、地元のリソース、市役所の人、いろんな分野の人ともつながりながら、共に何か…だからコレクティブインパクト(※)って言われてることがらだと思う。

(※)複数の異なるセクター(行政、企業、NPO、財団、社団など)から、集まった重要なプレイヤー達が特定の社会課題解決のため、共通のアジェンダに対して協力し大きなインパクトを創出すること

人のつながりと、交流と、学び合いとか、構造化、立体化。セクターを超えて共にビジョンを見て「俺の町がこうなったら、超ワクワクするな」みたいな。誇りにもつながる。そんな感じがやっぱりSDGsを実現する道なんじゃないかな。

真樹さん はい、そうしないと変わらないと思います。

“プロセス”を大切にして自ら変わり続ける努力が必要

真樹さん この本にも例があるように、SGDs先進国のようなドイツの話とかデンマークの話とかなどは、「日本はできない」と思われてしまうかもしれません。でも仕組みさえつくれば決して不可能じゃないんです。

僕としては逆に、日本はまだまだ伸びしろがあるというか、ポテンシャルが高いと考えいます。希望は失わずにいろんな可能性を追求していけたら、結構おもしろいことになるのかなと思うんです。

菜央 これからが楽しみですね。グリーンズとしてはこれまで話してきたような事例を全力で応援していくっていうことが役目かな。

なんていうか、日本古来の捉え方、八百万(やおよろず)の神じゃないけど、すべてのものごとはつながっていて、すべては自分にいつか返ってくる、そういう感覚をもってつくっていくような感じでできたら、いいのかもしれないですね。

“プロセス”ですね、このSDGsの本質は。一人のスーパーヒーローが答えを出すことはできない。上からいろんな人に大量に情報を届けるのでもなくって。

真樹さん そうですね。取り組みの方向性がちゃんとしているかということが問われています。

菜央 その過程で、一人ひとりの考え方が、次の時代の考え方に変わっていくっていう。

真樹さん 変わり続けることですね。完成はないわけですから。いい方向に向かって変わり続ける努力がやっぱり重要です。

菜央 いや、なんかすごいワクワクしてきたな。おもしろい。ありがとうございました。

僕はパーマカルチャーを5年ぐらい実践しながら学んできて、パーマカルチャーの世界観の一番土台にあるは、「ホーリズム(※)」だと思っていて。

(※)全体性。全体とは部分の総和以上のなにかであるとする考え方。一個体は孤立に存在するのではなく、それをとりまく環境すべてとつながっていると捉える。

ここまで見てきたような事例はすごく「ホリスティック」だな、と思うんですね。高橋さんは別にパーマカルチャーがベースなわけではないと思うんですが、同じような世界観にたどり着いている。これが、不思議で面白いなと思うんです。

それはなぜかって言われたら、地球そのものも、生態系も、僕らもホリスティックな存在だから、としか言えないんじゃないかと思っています。

だから、何か違う道を歩きながら、同じひとつの問いにたどり着いているんじゃないか? っていう感覚があって。で、前にドレヴィッツの記事を書いてもらった時に「お! やっぱりそうかも」って思った。それについて話したいと思っていたんで、今日はめっちゃ楽しかったです。

パーマカルチャー平和道場

真樹さん 僕も楽しかったです。まだまだたくさんワクワクする取り組みがあるので、また紹介させてください。

菜央 何だろう、このワクワク感。なんかね、多分明確になった。プロセスだっていうこととか、学び続けるとか、みんなが変わり続ける、そのプロセスのデザイン。だし、ひとりからも始められるし、地域でやるっていうこと。そして分野を超えて、ホリスティックにやっていくっていう。なんかね、全部がカチャカチャとつながって楽しかったです。

真樹さん つながりますよね、うん。僕もパーマカルチャーは勉強したいと思っています。

菜央 ぜひ。何か多分また化学反応が起きるかも知れない。パーマカルチャーの観点からドレヴィッツの事例を分析したりしたら、すげー楽しいかも。どうしてこのドレヴィッツがうまくいったのか、どこにポイントがあったのか、今度それやりましょう(笑)

真樹さん そうですね。僕も話してる中でたくさんの気づきがありました。ありがとうございました!

(編集: 青木朋子)
(編集協力: 板村成道)

– INFORMATION –

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