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「お金ってなんだろう?」「地域をどうしていきたい?」と問い続ける地域通貨「ぶんじ」がつくる新しい地域

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わたしたちエネルギー」は、これまで“他人ごと”だった「再生可能エネルギー」を、みんなの“じぶんごと”にするプロジェクトです。エネルギーを減らしたりつくったりすることで生まれる幸せが広がって、「再生可能エネルギー」がみんなの“文化”になることを目指しています。

みなさんは地域通貨をつかったことがありますか?

グリーンズの学校では「幸せになる経済をつくろう」をテーマに、地域通貨をつかってどんな地域経済やコミュニティをつくることができるのかを考えています。

自分たちの地域づくりを考えるとき、これまで「わたしたちエネルギー」で見てきたように、自分たちのエネルギーをつくることも大切ですが、自分たちのまちや地域にどんなお金や価値の交換が循環するといいのかを考えるのも、また大事なこと。

その探求の中、東京の国分寺で流通している地域通貨「ぶんじ」について、中心人物のひとりである影山知明さんにお話を伺いました。
 
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2月に行われたグリーンズの学校「ローカル経済とコミュニティクラス」の様子。フィールドワークとして、地域通貨ぶんじがつかわれているまちの様子を実際に見学しました。

地域通貨ぶんじとは?

東京の国分寺界隈で流通している「ぶんじ」は、もともとは2012年の9月、ぶんぶんウォークという地域イベントの際に“お楽しみ券”として発行されたもの。

イベント後も当時の企画メンバー達が活動を続けていくうちに少しずつ浸透し、今ではまちのあちこちで使えるようになりました。これまで約3年弱の間に約9,000枚が流通していると言います。
 
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ぶんじが使える場所にはこんな表示があります。

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地域の何気ない話題を集めた冊子「そういえば、さぁ」は、創刊準備号につき100円。つまり「ぶんじ」が手元に1枚あれば手に入れることができます。 写真提供:グリーンズの学校

ぶんじの特徴は、裏面に小さな吹き出しが10個あり、一言メッセージが書けるようになっていること。通貨と同様、人を介して循環していくので、自分の手元にきたぶんじが、これまでどのようなやりとりの中で受け渡しされてきたのかが想像できるようになっています。
 
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「ぶんじ」の裏側。町でどんなメッセージが交わされているのかを見るのも楽しい。 写真提供:ぶんじ企画チーム

当初から企画メンバーに入っている影山さんは、このメッセージカードとしての機能が、多くのぶんじが循環してきた要因のひとつだと言います。

従来の地域通貨がうまく行かなかった理由のひとつとして、割引券としてのニュアンスが強くなってしまって、使う側も受け取る側も“気持ちのいいやり取り”ができなくなってしまったことがあると思うのです。

でも「ぶんじ」は、感謝の言葉を書いて“ありがとう”の気持ちを伝えるために渡すカードでもあり、持っていること、つかうこと自体が楽しい。地域で一番つかわれているメッセージカードとも言えるかもしれません。

実際に「感謝を伝えたいけれど、お金をわたすという感じでもない」というときに、個人と個人の間でもやりとりもされているようです。たとえば、この取材中にも、相談にのってもらった人と、のった人が、それぞれに「ありがとう」とぶんじを交換するような場面に遭遇しました。
 
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ぶんじが渡される瞬間。ありがとうを伝える笑顔が溢ていました。 撮影:Akiko Terai

「ぶんじ」を支える2週間ごとの会議

国分寺では約2週間に月1回のペースで、「ぶんじ」にまつわるあれこれを話し合う「ぶんじ会議」が開かれています。

現在は毎回、会議に集まる人が15人ほど。なかなか会議には参加できないけれど、役割を担う気持ちで参加している「企画チーム」のメンバーは30人ほどにもなるそうです。

やらされているのではなく、やりたい人たちが集まってきていることで誰かひとりに負担がかからない運営ができているのは大きいと思う、と影山さんは言います。

ぶんじの場合は誰が中心人物かもあまりわからないんです。最初に地域通貨を考えよう! という会に集まった人たちが10人くらいいて、そこからひとり、またひとりと増えていきました。

この短期間でここまで人が集まり、地域通貨の導入が進んだのは国分寺という町が培ってきた“土壌”のおかげもあるそうです。

国分寺に長く住むメンバーから、ここには昔から自分のまちを自分たちでつくっていこうとする人たちの土壌があったと教えてもらいました。

「ぶんじ」の企画チームにはこの場所に長く暮らしている人と、新しく地域に入ってきて何かやりたい人とが混ざっていて、組織に属していてもいなくても、個人として立っている人たちが多い。変な縄張り意識や「所属団体に一旦持ち帰らせてください」みたいなことがないから、ものごとがスムーズに前に進みやすいのかもしれません。

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盛り上がりを見せるぶんじ会議。大会議、中会議などと称して、普段は会議に参加していないまちの人たちが集まることもあります。 写真提供:ぶんじ企画チーム

循環する仕組みをつくる

まちの様々な分野で活動する人たちが、定期的に集まって「ぶんじ」を肴に話し合うことは、ぶんじがまちを循環する仕組みづくりにつながっています。

たとえば、少しずつ進んでいるのが地域における商業と農業の連携。影山さんが運営するカフェ「クルミドコーヒー」では、季節のケーキにつかうフルーツを地元の農家さんから仕入れていて、農家さんはその支払いの一部をぶんじで受け取っています。

この農家さんは忙しい草むしりや収穫の時期に、まちの人たちにお手伝いを呼びかけて、手伝ってくれたお礼として「ぶんじ」を渡しています。農家さんを手伝って「ぶんじ」をもらったまちの人は、カフェでケーキを食べる際に「ぶんじ」を使うことができます。

お店でしか使えない通貨だと、地域通貨がお店に溜まっていってしまうけれど、地域の中で仕入れられるものが増えれば、つかい道が増えていくと思っています。

2年目のぶんぶんウォークでは、まちでやってみたいこと、まちの人の手を借りたいことというテーマでブレスト大会も行われました。「楽器を習ってみたい」「パソコンでエクセルの使いかたをちょっと教えてほしい」「自分の家の空き部屋をつかって宿をはじめたい」など、個人の助けを借りたいこと、自分がまちでやってみたいことを共有することで、「ぶんじ」を使える場面も広がっていきます。

今は国分寺に暮らす多くの人が都心で働いている状況です。なにかまちのための働きをしたいと思っても、夜や週末というように時間が限られてしまうので参加するのが難しい現状があります。都心に働きに行かなくても、何かこの辺で仕事ができる状況を少しずつでもつくりだせればと思っています。

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農家さんがちょっと町の人たちの手を借りたいときに呼びかけることができる、ぶんじ 農業プロジェクト。地元の野菜や果物を知る機会にもなります。 写真提供:ぶんじ企画チーム

地域通貨を根付かせるには?

影山さんのお話を聞いている中で、地域通貨を根付かせるためのポイントが、いくつか見えてきました。

ひとつは、まちの特性にあった地域通貨の形を選ぶこと。地域通貨には大きく分けて券面式と通帳式があり、どちらにも長所と短所があります。

藤野の「よろず」や西千葉の「ピーナッツ」といった、周りでうまくいっていると言われる事例は通帳式でした。通帳式は持っている人が特定されるから安心して取引できる。

ただ、お店が多く参加しているこのまちでは、レジで会計するときに通帳を出し合って書き込みあうことが現実的には難しい。結果、渡すことで取引できる券面式になりました。券面式だと見知らぬ人がある日突然持ってくることもあって、その驚きを楽しんでいます。

そしてもうひとつが、形を最初から決めすぎないこと。

地域通貨をやってみようという動きがはじまった当初、目的をはっきりさせようとして議論になったことがあると影山さんは振り返ります。国分寺の子育て環境の改善のためにやろう、地域経済を活性化しよう、地産地消のため、いやいや自然環境を守るためでしょう、などと、さまざまな意見があったそうです。

目的はいろいろあるけれど、その全てに共通していたのは「国分寺をこんなまちにしたい!」という、ここに暮らす人たちが抱くそれぞれの“ファンタジー”や、「自分にとって大事なひとや大事なことのためにだったら一肌脱ぐよ」という利他的な想いでした。

地域通貨はそうした誰かのためを思った「仕事」を応援するための道具にしよう。それ以外はあまり決めずに、まずは渡したり渡されたりを始めてみようとなったのです。

目的を固定化してしまうことは実はすごくもったいない、と影山さんは言います。

目的を限らないことで、このまちをどういうまちにしていきたいか、ずっと自分たちのなかで問い続けることができています。

影山さんたちは、発行から2年半が経った現在でも「ぶんじとはなにか?」という議論をメンバーの中で重ねているそうです。額面「100ぶんじ」以外に、たとえば「1しごと」などといった他の単位も必要か? というような仕組みそのものの話から、ぶんじをつかって他にどんなことができるか?という可能性の話まで。
 
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ぶんじ企画会議の話し合いは多岐にわたります。みごとなグラフィックファシリテーション! 写真提供:ぶんじ企画チーム

まちの中でちょっとしたものを届けてほしいときに使える「ぶんじバイク便」や、1,000円を寄付してもらったら、ぶんじ10枚が手に入る仕組みも、話し合っていくなかで生まれました。

通常のお金とミックスできるような未来も描いています。銀行からお金を借りたときの返済の一部につかえる。家賃の一部に使えるというような通貨的な性格をもたせていけたら面白いなと思っています。

可能性が開かれている通貨。「ぶんじ」がまちのなかでより循環するようになれば、まちの仕事に対する対価としてもらった「ぶんじ」を、個人が生活費の一部に充てることも可能になるかもしれません。
 
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町の中でちょっとした届け物を頼みたいときに、活躍してくれるぶんじバイク便(BBB)。農家さんから、そのお野菜や果物を使っているカフェやパン屋さんへの配達も担うことがあります。 Photo:ぶんじ企画チーム

受け取るから始まるギフト経済

最後に、「もらって一番印象的だったぶんじは何ですか?」と影山さんに聞いてみると、意外にも「もらったぶんじよりも、渡したぶんじのほうが印象に残っています」という答えが返ってきました。
 
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感謝の気持ちをメッセージカードに書くことで、自分が日々何かを受け取っているということを言語化することができるんです。そうして周りを見てみるとまちの中は、日々誰かが誰かを想う行為に溢れていました。

そこには、必ずしも頼んだ仕事に対して渡した「ぶんじ」だけでなく、誰かが自分を気遣ってくれた行為に対して、あるいは誰かの真っすぐな想いを応援したいと思って渡した「ぶんじ」もあったそうです。

影山さんは「ぶんじ」をつかうようになってから一層「お金ってなんだろう?」という問い直しをするようになったと話してくれました。

お金には何かを「手に入れる為のもの」という側面と、誰かの仕事を「受け取るためのもの」であるという両方の側面がある。後者の意味はいまの日本円から失われてきていると思います。日本円だけの世界では気づけなかったことを「ぶんじ」は気づかせてくれました。

「ぶんじ」の裏側には「お金のためではない働き方に光をあてる地域通貨」というマニュフェストが刻まれています。

「相手を思う、気持ちのこもった仕事に「いいね!」
 率先した町のための汗かきに「ありがとう」
 誰かの「贈る」仕事が
 また次の人の「贈る」気持ちを呼び起こし、地域をめぐる
 ぶんじはつなぎ役であり、表現の道具。
 国分寺からはじませんか?」

注目したいのは、誰しも「ぶんじ」を最初に受け取る機会は“いいね”や“ありがとう”の言葉とともにである、ということ。自分の仕事を「受け取ってもらえた」、あるいは誰かに「感謝された」という喜びから、まちの中に居場所ができ、役割が生まれるのかもしれません。

ギフト経済って「贈ること」に力点が置かれやすいけれど、僕はまず「受け取ること」の大事さがあると思っています。誰かの仕事や想いを受け取る。それを「受け取ったよ」と気持ちを贈れるのが「ぶんじ」。受け取ってくれる人がいることが、また次の「贈ること」につながると思うのです。

影山さんのお話から、地域通貨がうまく循環するにはその地域にある仕事の多様性や、住む人たちの相性なども重要なポイントになることがわかりました。ただ地域通貨はあくまで手段。大切なのは、今までのお金のやりとりでは光があたらなかった誰かの仕事や想いを丁寧に受け取る行為が、循環していくことなのだと感じました。

みなさんも、まずは誰かに「ありがとう」と伝えることから始めてみませんか?