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40年後、地元を”消滅”させないために何ができる? 長野県大町市で、町の未来を語り合った「信濃大町Youthサミット」レポート

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長野県大町市。雄大な北アルプスのふもとにあり、およそ3万人が暮らしています。美しい湖や渓谷、スキー場、温泉、酒蔵など、豊かな水の恵みを受けている町で、旅行に訪れたことのある人も多いかと思います。

そんな大町市で2014年12月28日、「信濃大町Youthサミット」が開催されました。

主催したのは、大町市役所に勤める35歳以下の若手職員たち。同年5月に日本創成会議が発表した「消滅可能性都市(※)」に大町市が挙げられ、「いつか町が消滅してしまうかもしれない……!」と危機感を抱いた人たちがこのイベントを企画しました。

彼らの熱意を受けて、全国から85人が集まった当日の様子をお伝えします。
 

※消滅可能性都市
少子化や人口移動によって、消滅する可能性がある自治体のこと。具体的には、2010年から2050年までに20~39歳の女性の数が半分以下に減ると予測された地域で、大町市は67%減少するとされています。

中学生から60代まで、みんなでつながろう!

当日は、大町市出身者はもちろん、町にゆかりのある人やこれから移住を検討している人などが参加。そのうち20代・30代が中心でしたが、なかには地元の中学生と高校生も16名参加し、上は60代と、幅広い年齢層の人たちが集まりました。
 
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地元の中学生と先生、そして市長(右)も参加者の一人としてこっそり来ていました!

主催の「マチサラ実行委員会」は、大町市役所の若手職員有志が集まってできた団体で、市の地域情報を共有したり、今まで縁のなかった人とつながったりすることで、大町市を盛り上げようとしている組織です。

名称の「マチサラ」は、「大町」と「~さら(~ごと、という大町の方言)」が由来で、「大町まるごとつながっていこう!」という思いが込められています。

今回のサミットの発起人であり、実行委員長を務めた北澤美沙さんは、

北澤さん これからを担う若い人たちが大町をどうつくっていきたいか、いろんな面から考えて共有できる場になればと思います。ここで出会った人たちがつながって、新しいものが生まれていくと嬉しいです。

と挨拶しました。
 
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子育て支援課に勤める北澤美沙さん(右)。地元の高校生(左)と話が弾むのも、貴重な機会。イベントでは長野のリンゴジュースや大町のおいしい水で淹れたコーヒーなどを提供。

イベント前半は大町で活躍している人とその取り組みを知るゲストトーク、後半は自分が話してみたいテーマのもとに集まり話してつながるワークショップの二部構成で行われました。

その土地ならではの日本酒をつくる薄井浩介さん

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最初にゲストとして登壇したのは、清酒「白馬錦」を製造する薄井商店の専務取締役を務める薄井浩介さん。

薄井商店では「せっかく町に来てくれたのだから、この町ならではのものを飲んでもらいたい」と、地元の米と水、人材による、まさに”ご当地品”をつくっています。

さらに告知の方法もこだわり、薄井さん自ら制作を手がけています。

薄井さん 日本酒のCMやポスターはみんな同じようなものが多く、面白くないと思っていました。「ならば、新しいものをつくってしまおう!」と、自分でポスターを制作することにしました。

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映画のポスターを参考につくることもあるのだそう。

薄井さん 僕らは食べ物でできている。例えば味噌汁も、インスタントのものだけではなくて、出汁をとるところからやってみるだけでも、人生を豊かにするのではと思います。

サラリーマンからブドウ農家に転じた矢野喜雄さん

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続いてのゲストは、ワイン用ブドウの栽培農家・矢野喜雄さん。もともと東京で会社勤めをしていましたが、ワイン好きが高じて栃木県の「ココ・ファーム・ワイナリー」に転職し、10年間ワインの醸造に従事。

「ワインは品種を越えて、ブドウの育った場所の個性が出てくるのが面白く、ブドウづくりに一生かけてもいいと思ってしまった」と、2014年2月からブドウ農家に。

その場所として、豊富な日照量、昼夜の寒暖差、花崗岩質の土壌の扇状地などブドウ栽培に最適な条件がそろった大町市に移住してきました。

矢野さん 大町のゆったりとした人柄にもとても惹かれました。地元の酒や食材を大事にしていて、それを楽しむ文化が下地としてある。バランスのとれた地産地消が実現できそうだと思いました。

「いいワインは大地の個性がとても出て、そのまま大地がグラスに注がれます。人は自然の流れに沿っているだけです」と栽培方法も有機栽培を選択。

矢野さん ゆくゆくは大町がワイン用ブドウの産地になることが夢。大町の食材を合わせて観光資源につながればと思います。

空き家を子どもたちのコミュニティハウスにする太田真美さん

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3人目のゲストは小学校で4年間、教員を務める太田真美さん。現在は発達障がいのある子ども・若者の学びの場を提供するNPO法人「翔和学園」に派遣中の太田さんは、「生きづらさを抱えた子ども・若者の実情をもっと知りたい!」と、情報交換会を実施してきました。

これまでに10回行うなかで彼らの居場所の必要性を感じ、空き家をリノベーションしたコミュニティハウスを拠点とする「地域に飛び出す教師がつくる子ども若者のためのコミュニティプロジェクト」を立ち上げました。

太田さん まだ妄想の段階ですが、古民家を使って試験的に空き家コミュニティの可能性を探っていきたいと考えています。

自分もそこに住んで、居場所のない子どもたちを呼んでワークショップをやったり、余暇の過ごし方が分からない子どもが多いので一緒に余暇を過ごしたりしたいです。そんな風に多様性を認め合える環境があれば、支援のあり方も変わってくると思います。

夏フェス「カシマツリ」を主催する成澤隼人さん

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4人目のゲストは大町市で夏フェス「カシマツリ」を企画・運営する成澤隼人さん。

「カシマツリ」は2011年8月から鹿島槍のスキー場で行われている野外音楽フェスティバルです。毎年1500〜2500人が集まり、24時間、北アルプスのもとで音楽、アート、食、アウトドアを楽しみます。

成澤さん 27歳のときに東京からUターンしてきました。若い頃に夢を語り合っていた地元の友達はみんなおじさんになっていて(笑)

みんなと「何かしたい」と話していたときにフェスブームが来て、これは地元にぴったりだと思い、仲間たちとともに地元を盛り上げようと、ノリと勢いで始めました。

参加アーティストは100組、ボランティアスタッフも100人ほどが集い、「僕たちは普通の人だけど旗を上げてやってみたらできた」と成澤さん。今年も5回目の開催に向けて準備を進めています。

ゲストハウスから“田舎の入口”をつくる辰巳和生さん

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最後に登壇したのは、大町市でゲストハウス「カナメ」を運営する辰巳和生さん。大阪府出身ですが、小学生の時に山村留学で長野県北安曇郡の小谷村へ。そして22歳の時に家族と小谷村へ移住し、翌年には起業してゲストハウスを始めます。

辰巳さん 田舎には何もないけど、「今あるもので商売をするとしたら何ができるだろう?」と考えたとき、ここには古民家と広がる田舎風景がある。

「これを使って需要をつくれるのは、きっと宿だ!」と思って、小谷村に築150年の古民家を改装してゲストハウス「梢乃雪」を始めました。田舎には人が集まれる場がないし、田舎への”入口”が必要だと思うんです。

その後、2号館として大町市の鹿島槍スキー場から徒歩3分のところにゲストハウス「カナメ」をオープン。北アルプスの麓にある静かな集落のなかで、日々の田舎の営みに混じって過ごすことができます。

現在は「田舎に来る・住む・働くをつくる」をテーマにした「信濃大町駅前ハウス(仮)」を計画中。リアルな田舎暮らしを「LODEC.JP」にて発信しています。
 
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ゲストの話に真剣に耳を傾ける参加者たち。

町のために、できることってなんだろう?

5人のゲストトークの後は、グループに分かれてワールド・カフェが行われました。テーマは「商店街の活用方法」「移住希望者へのアドバイス」「大町の魅力とは?」「空き家に住んでもらうには?」などさまざまで、どのテーブルも時間が足りないほど盛り上がっていました。
 
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大町市のゆるキャラ・おおまぴょんを盛り上げるには?

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ゲストの辰巳さん(左)と、定住促進係の阪井さん(右)は移住者を呼ぶ方法を模索。

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興味のあるテーマに集まり、それぞれのお題に対してアイデアを出し合います。

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どんどんアイデアが出てきます。

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大町市出身者も、県外の人も一緒に、町について語り合いました。

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司会・進行はファシリテーターの古瀬正也さんが務めました。

主催したマチサラ実行委員会会長の塩入正幸さんは「今日集まった人たちが話し、つながることで、さらに大町を盛り上げていきたい。そのためにもさらなる若者の交流促進と情報発信・共有をしていきたいです」と締めくくりました。

スタッフを含め100人以上が集まり、熱気に満ちた信濃大町Youthサミット。この日は「町を盛り上げていこう!」というパワーを大きく感じましたが、現実には地元の高校が合併を迎えると聞き、確実に少子化が進んでいることも目の当たりにしました。

先に述べた「消滅可能性都市」は、全国896の自治体が挙げられ、東京都ではなんと豊島区も候補に入っています。

大町市だけでなく、わたしたちの町のために、何ができるだろう?
自分ごととして、みなさんも考えてみませんか?