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町の映画館をもっと面白くしよう!10代から70代までのボランティアスタッフによる、手づくりの市民映画祭「宝塚映画祭」

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みなさんは映画祭に参加したことがありますか? greenz.jpでも紹介した「Kisssh-Kissssssh映画祭」や「なら国際映画祭」など、地域での映画祭が増えていますね。

今回ご紹介するのは、映画好きの宝塚市民が集まってはじまった、手づくりの映画祭「宝塚映画祭」です。2000年にスタートし、宝塚唯一の映画館「シネ・ピピア」で毎年秋に開催されています。昨年11月には14回目が行われ、劇場で見る機会が少ない作品が上映されてきました。
 
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驚きなのは、この映画祭が10代〜70代までのボランティアスタッフで運営されているということ。年齢も立場もさまざま人たちが集まり、企画から運営まですべて手づくりでおこなわれています。いったいどんなふうにこの映画祭をつくってきたのでしょうか。宝塚映画祭のディレクターである岩淵拓郎さんにお話を聞いてみました。

宝塚に映画館を取り戻そう

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宝塚在住の編集者、岩淵拓郎さん

宝塚はその昔、映画の都だった時代がありました。東宝の劇場で上映する映画を制作していた宝塚映画製作所がありまして、劇場映画は176本、テレビ映画は3200本も製作されました。

撮影所周辺では黒澤明、小津安二郎、木下恵介、稲垣浩など巨匠はもちろん、森繁久弥、三船敏郎、加山雄三、原節子、美空ひばりなどの銀幕のスターの姿が行き交っていたというぐらい、宝塚はまさに「映画の都」といった時代があったんです。

でも時代の波で映画館がすべてなくなってしまいました。そんな状況を残念に思った映画好きの主婦たちが「宝塚に映画館を取り戻そう」という呼びかけをはじめたんです。

その主婦たちを中心に、1990年に宝塚シネクラブを発足。その活動が1999年に実を結び、非常時には市民の避難施設になることを目的とした全国でも珍しい公設民営の映画館シネ・ピピアがオープンしたそうです。
 
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シネ・ピピアがオープンしたのを機に、宝塚の映画作品を上映したり、関西ゆかりの映画を掘り起こして上映するなどを目的とした宝塚映画祭がスタートしました。市民ボランティアで運営されていましたが、映画祭メンバーの高齢化や地域経済の疲弊もあり、金銭面では順風満帆な状態ではなくなっていきました。

その後、宝塚映画祭の実行委員会に若い人材が入ってきたこともあり、FacebookやCAMPFIREなどのITツールを活用して、少しずつ若いスタッフ中心の運営体制に変わっていったそうです。そのクラウドファンディングでは、40万円を集めることに成功!この映画祭を多くの人に伝えるPRにもありました。
 

第13回宝塚映画祭 予告編

ちょっとした知恵と遊びで映画館は面白くなる

宝塚映画祭実行委員会は、週末に映画館に併設されているカフェで映画鑑賞後の感想を言い合うトークサロンを開催するなど、市民がどんどん参加できる仕組みをつくりあげていきました。

映画祭を盛り上げるためのさまざまな企画が、昨年の「シネマハック100〜町の映画館をもっと面白くするアイディア集」へとつながります。
 
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シネマハック100

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僕らの町にある映画館には、町と映画をもっと面白くする可能性がいっぱい眠っているような気がして、みんなでいろんなアイデアを持ち寄り、できそうなことからやってみようという話になりました。ちょっとした知恵と遊び心で、町の映画館はもっともっと面白くなると思います。

そんなアイデアの中から実現しているものがいくつかあります。
 
 
・この町を面白くする10人のプレゼンパーティー

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町の映画館でもっといろんな人たちが集い、関わり、繋がっていくためにどんなことができるだろう?そんな想いから宝塚〜阪神間を拠点にいろんな活動を展開する方々に集まってもらい、それぞれのプレゼンテーションを映画館でやってもらうことになりました。

 
・サポーティング・ポップコーン

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サポーティング・ポップコーンは豪華な特典がついたポップコーン券です。「レギュラー」「プレミアム」「V.I.P.」の3 種類があり、それぞれ映画祭がもっと楽しくなる特典がついてきます。サポーティング・ポップコーンの売上は全て第14回宝塚映画祭の開催資金(総予算約190万円)の一部にあてさせていただきました。

ほかにもタイトルだけの紹介になりますが、映画館のためのサウンドトラック、シアター席みくじ、FREE TALKキャンペー、愛しのローズマリー、パンフレット・エクスチェンジ・システム、「これはただの葉っぱの絵」賞、スクリーンで写真を見る会、DVD供養箱、君は映画泥棒?!、みんなで作る感想ボード、映画のつぶやき、素人すぎる上映前アナウンス、中谷○紀になりたい女たち、珈琲と煙草、もしくはシャボン玉…と、もりだくさんのアイデアが実行委員会のメンバーの中から生まれています。

映画をみたあとに誰かと話すのは楽しい

いったどんなメンバーがどんな思いで宝塚映画祭に関わっておられるのでしょうか。阪急山本駅近くのカフェ「atelier & café mint」で行われている映画祭のミーティングの現場にお邪魔してきました。
 
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2012年に開催されたイブニング・シネトーク・パーティーやFacebookを通じて宝塚映画祭に興味を持った数10人が定期的に集まってミーティング

それぞれに持ち寄ったお酒や食べ物をつまみながら、朗らかな雰囲気のなかで話が弾んでいました。メンバー最年少の乾隼人さんは19歳の関西学院大学2回生です。
 
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この写真は2013年3月の様子です。僕は企画ブレストの進行を担当させていただきました。まだこの時点で映画祭までは半年以上もありましたが、時間をかけて一つひとつみんなで意見を出し合って、いろんな企画や運営の仕方を組み上げていくのは経験したことがなかったので刺激的でした。年齢に関係なく、好きな映画の話をしながら笑いあえるこの場所がすごく心地よいです。

僕自身は大学の知人がボランティアスタッフとして映画祭に参加していることをFacebookを通して知りました。うらやましかったので2012年度から参加し、PRチームを担当させてもらっています。(乾隼人さん)

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また、今年63歳の小宮弘信さんはこう語ります。

私自身は紙テープの時代のコンピュータからITに携わっていたのですが、昔からシステムエンジニアの仕事は残業の毎日でした。時間的な余裕を持てるようになった今は、仕事以外のことに積極的に関わっています。

映画は嫌いではなかったものの、年に数回見に行く程度で詳しくありませんでした。この映画祭の実行委員になってからは、私の家の前に女優の新珠三千代さんが住んでおられたことなど、有名な俳優や女優が普通に宝塚の街に住んでいたことを知りました。(小宮弘信さん)

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映画を見たあとにゲストを交えて話し合う「シネトーク」というイベントがあるのですが、そこで若い人たちと人生や家族について話し合ったりするのが楽しいんです。新しい発見や出会いが豊かにしてくれました。(小宮弘信さん)

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ディレクターの岩淵さんは、映画は会話のきっかけをつくりやすいと言います。

映画をみた後に誰かと話すのって楽しいですよね。間に映画を挟むことでコミュニケーションの軸が普段とは少しずれて、よく知ってる仲なのに「そんなこと考えてんだ」的な発見があったり、逆にぜんぜん見知らない人同士が話すきっかけになったりということはよくあることだと思います。

集まった人と何ができるか

宝塚映画祭は、市民が中心となって集まって運営している市民映画祭なので、「映画祭として何をやるか」ということより、集まった人で「何ができるか」「何をやりたいか」ということが最初にあり、いろいろなことが起こってくる場合が多いと岩淵さんは言います。

全体的に見るとまとまりがないようにみえたり、クオリティ的にまだまだということもいっぱいあると思います。でもそのあたりは大目に見ていただいて、「なるほど、今年の映画祭はこんなカンジなんだな」というように理解していただいて、さらに「だったら私こんなことできるよ」とか「こんなことやりたいんだけど」と新しい仲間になってもらえればと思います。

シネマハック100のように、とにかくできることをはじめてみるとその楽しく運営されている姿が新しい人をひきつけているように感じられました。宝塚映画祭は不定期で面白い企画を開催されています。まずはホームページをのぞいてみませんか。