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大切にしてきた家が、誰かの夢を叶える場所になる。関わる人の“想い”を交わしながら空き家の家主と活用者をつなぐ生駒市の「恋文不動産」とは?

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あなたは、自分のまちに活動拠点がありますか?

グリーンズ読者のみなさんには、やりたいことを叶えるための場所がほしいけれど、いい物件が見つからないという人も多いのではないでしょうか。今回紹介するのは、そういった悩みを持つ人と地域の空き家所有者の“想い”をつなぎ、場づくりに寄り添っていく行政の試みです。

奈良県生駒市とグリーンズのパートナー連載企画「ベッドタウンの新しい暮らし方with生駒市」で、以前にも空き家所有者と不動産事業者がつながる「いこま空き家流通促進プラットホーム」を紹介したように、生駒市は今、近い将来に急増するであろう空き家の対策に力を入れています。

そんな生駒市で新たに始まったのが、空き家を貸したい人と借りたい人の想いをつなげるプロジェクト恋文不動産です。一体どんな取り組みなのでしょう。

空き家所有者と活用したい人の想いをつなげる恋文不動産とは?

恋文不動産は、「愛着ある家を気に入った人に使ってほしい」「新しいチャレンジを応援したい」という想いを持つ空き家所有者と、「活動の場をつくり、地域を盛り上げたい」「引っ越しを機に何かをはじめてみたい」という想いを持つ未来の借り主を、生駒市が間に入り、ていねいにつないでいく取り組みです。


生駒市の広報紙いこまち2023年8月号より

マッチングまでの期間は約3〜4ヶ月。物件を見ながら家主と交流する物件見学会を開き、物件を気に入った人が活用プランを提出。その後活用候補者を決定し、活用プランを実現に向けてブラッシュアップしていき、最終的なプレゼンテーションを経て、家主が活用者を決定する流れです。

恋文不動産はどのように誕生したのでしょうか。生駒市住宅政策室の金丸彰吾さんに聞きました。

生駒市住宅政策室・金丸彰吾さんは、普段から市内の空き家所有者に寄り添って悩みを聞いています。

金丸さん 月に数件ほど「空き家を探している」という問い合わせをいただくのですが、ただ住むだけでなく、自分の夢を実現したい方や、地域のためになることをしたいという声がすごく多かったんです。そういう想いを聞けば聞くほど、何かお手伝いできればと考えるようになりました。

そこで、空き家所有者はどう考えているのかを知るために、毎年配布するアンケートに「地域のために貸してもいいか」や「貸すための条件」という設問を加えたそうです。貸してもいいと考えている人に直接会って話を聞いていく中で、自分が大切にしている家を気に入ってくれる人に使ってほしいという人が一定数いることに気づいた金丸さん。「この状況を市職員だけが知っているのはもったいない」「両者をなんとかつなぎたい」という想いから事業を組み立てていったといいます。

恋文不動産のネーミングの由来は、「金額や条件で合致したら契約」というものではなく、お互いの想いをつなぐのがこの事業の醍醐味だから。担当職員でワークショップを重ねて生まれた名前だそう。写真は2022年度の物件見学会の様子

生駒市は閑静な住環境を重視したエリアが多く、住宅以外の目的で空き家を活用することが難しい側面があります。一般的な空き家バンクのように機械的にマッチングするのではなく、生駒らしいやり方を模索する必要があったため、“想い”を軸に恋文不動産を企画しました。

初年度となった2022年度は3軒の空き家で見学会を開き、合計10名が参加。家主と参加者が想いを交わし合う姿に手応えは感じたものの、やはり条件面で難しさがあり、すぐにはマッチングに至らなかったのだとか。そのため2023年度は比較的活用の幅が広い2軒に絞り、見学会を開催しました。

今回はそのうちのひとつ、築80年超えの平屋の物件見学会におじゃましました。

築80年超えの平屋で開かれた、家主と参加者が想いを交わす見学会

見学会は8月下旬に近鉄南生駒駅近くの生駒市小瀬町の平屋で開催されました。小瀬町は江戸時代は宿場町として栄えたまち。訪れた平屋は旧街道沿いにあり、向かい側の家もかつては宿屋だったそうです。

間口の広い大きな母屋。左側の灰色の壁の棟は、かつて鍛冶屋・鉄工所として使われていました

見学希望者が予想以上に多く、この日は午前と午後の二部制に。最初は母屋の広間で、家主である下西啓次さん・美和さんご夫妻と参加者が交流する時間、後半は物件全体を見学する時間となりました。

この日はアドバイザーとして建築士が同席し、グラフィックレコーディング(以下、グラレコ)での記録も行われました。グラレコのイラストも交えながら、見学会(午前の部)の様子をご紹介します。

参加者の業種はさまざまですが「いろんな世代が集える場所をつくりたい」という共通の想いを持つ人ばかり

まずは全員の自己紹介からスタート。ゲストハウスの運営を考えている人、日本文化を発信するギャラリーをしたい人、染織を体験できる工房をつくりたい人など、さまざまな想いをもつ6組が参加していました。

イラストレーターのよしだゆうこさんがグラレコを担当されました

続いては、生駒市住宅政策室の松本惇史さん進行のもと、家主や建築士によるトークセッション。家主である下西さんご夫妻がこの家について語りました。

資料を見ながら、この家について語る下西啓次さん。美和さんも隣で見守ります

下西さんからは、「今後住む予定はないけれど、手放すつもりはないので大切に使ってもらえたら」「家業は鍛冶屋から始まり、鉄工所、工務店と展開していった」「本家であり、多い時は職人さんを含めて14人で住んでいた」「にぎやかな場所だったので楽しくワイワイ使ってもらえたら」など、下西邸の歴史や家への想いなどが語られました。

下西さんご提供写真。毎年お正月には親戚が200人近く集まり、大阪育ちの美和さんはあまりの人の多さに驚いたそう


建築士の栗原義幸さんは「家をきれいに保っておられることや、第一種住居地域であるため、今回参加された方の希望は十分かなえられる物件です」と太鼓判を押します。

建築士の栗原義幸さん(写真左)。いこま空き家流通促進プラットホームに参加しており、恋文不動産の取り組みに共感し協力されています

参加者には図面や利用できそうな生駒市の補助金の資料などが配られました。参加者のみなさんは真剣な表情でメモをとります

その後、下西さんご夫妻から母屋の各部屋や中庭、離れ、屋根裏、屋上などを案内してもらいました。

広い土間に「ここだけでも何かできそう」との声も。左奥に見える和室の建具には、現在は手に入らないという古いガラスが使われています

灯籠がそびえる立派な中庭。母屋(写真左)と座敷が二間ある離れ(写真右)は、渡り廊下でつながっています

離れの座敷。豪華な欄間に参加者も思わず声をあげます。立派なたんすも「ぜひ活用してください」と美和さん

啓次さんは家を案内しながら、生まれてから26歳まで住んでいたこと、裏に流れる水路の水を使って畑でとれた野菜を洗っていたこと、子どもの頃は近くの竜田川が遊び場のひとつだったことなど、思い出をたくさん話してくれました。

「昔は屋上から鉄道が走る様子が見えた」と語る啓次さん。屋上も十分な広さで、ゲストハウスを営みたい参加者は「ここでシーツを干したい!」と興奮ぎみでした

多肉植物を育てたい参加者が「私は屋上だけ使えたら十分だから、他の人が採用されたら屋上を使わせて〜」と、シェアするアイデアが盛り上がります

参加者たちからは「思った以上に広い!」「しっかり手入れされているからきれい!」「建具が美しすぎる!」といった感動の声や、「自分だけでは持て余してしまうので、みんなで借りません?」と、共同利用のアイデアまで生まれていました。

最後は再び広間に集まり、参加者が感想を述べ合いました。そしてグラレコを見ながら見学会全体を振り返り終了……のはずが、終了後もお互いにやりたいことを聞き合ったり、アイデアを共有し合ったりするなど、参加者同士すっかり打ち解けていました。

見学会終了後も参加者同士で盛り上がっていました

恋文不動産の参加者なら、大事に扱ってくれそう

終了後、下西さんご夫妻と生駒市職員の金丸さん、松本さんと、見学会を振り返りました。

啓次さん 楽しかったです。商売だけを目指している人ばかりかと思っていたけれど実際はぜんぜん違って。自分のやりたいことを通じていろんな人とコミュニケーションの場をつくろうとしている人が多かったので、こういう人たちなら大事にこの家を使ってくれそうですね。

恋文不動産に応募したのは、美和さんが生駒市役所から届いた固定資産税の書類の中に同封されていた「いこま空き家流通促進プラットホーム」のチラシを見たことがきっかけ

美和さん お願いして良かったです。こんなにたくさんの人が来られるとは思ってなかったし、みなさん本当に真剣で熱い想いをもっておられたので、できることなら全員に借りてもらいたいと感じました。

啓次さん曰く、昔は腕のいい職人さんが近隣に集まっていたそう。下西邸の欄間や建具の多くは、数件隣の建具屋さんによるもの

金丸さんと松本さんも「みなさんの想いが実現してほしい」と語りました。実は見学会の開催前、事前アンケートから伝わる参加者の熱い想いや、下西邸が予想以上にきれいで広い物件であったことから、参加者同士でこの場を一緒に利用してもらえたらいいね、と職員同士で話していたそうです。

金丸さん 参加者から自然に「一緒にやりましょうか」というアイデアが出た時はうれしかったです。もしかしたら、またみんなで集まって話す機会をつくり、それぞれの想いをうまくつなぐなど、実現するための工夫が必要かもしれないと思いました。

生駒市住宅政策課 松本惇史さん

松本さん 使いたい人が多くて、マッチングしない人が出てしまうのは残念なんですが、私たちも他に活用できそうな物件があったら紹介させてもらったり、市役所内の関係する部署と連携したりと、これを機にみなさんの想いが何らかの形で実現したらいいと考えています。

年明けにはマッチングパーティーが開かれ、最終的な活用者が決まります。パーティーという形式にした背景には、金丸さんが大事にしている想いがあります。

金丸さん クローズドな場で審査をするのはちょっと違うと思っています。今日も合同で見学会を開いたから、「一緒にやったらいいかも」というアイデアが生まれたわけで、個々でやり取りしていたら生まれない出来事です。

だから、最後のパーティーも活用候補者や興味のある人に集まってもらって、それぞれの発表を聞いていただくことをイメージしています。もしかしたら応援してくれる人や一緒に始める仲間が見つかるかもしれません。それもこの事業の醍醐味だと思うので、参加者同士の出会いもつくれたらと考えています。

形にこだわらず、よりよい活用のあり方を模索していく

今後の展開をお聞きすると、金丸さんは「マッチング実現のために、なんとかしてお互いの想いをつないでいきたい」と語ります。

金丸さん これまで、累計200名以上の空き家所有者に、悩みを聞くなどして向き合ってきました。だからこそ、空き家を活用したい人の話を聞くと「自分たち行政だからこそできるお手伝いがある」って強く思えるんです。

空き家がまわりの人たちのためにプラスになるような使われ方をするのは、みんなにとっていいことだと思っています。難しい点は多々あるんですけど、そこをクリアして1つでも2つでも実現していきたいです。

昨年度は、事業目的での活用が難しい住宅地(第一種低層住居専用地域かつ地区計画区域)にあり、今回あったようなゲストハウスなどは法律上実現できない物件でした。今年度はたまたま、下西さんのお宅のような物件と出会えたので同じようなフローで進めましたが、今後、状況によっては形を変えながら進めていく必要があると考えているそうです。

金丸さん 今の形にこだわっているわけではないので、いろんな角度から事業を見つめ、変えたり見直したりしながら、より良い形を検討して空き家活用をさらに進めていきたいです。

現在は、今回マッチングできなかった参加者のやりたい想いを見える化し、別の空き家所有者に届けることで、今度は逆に所有者から問い合わせを受け、具体的なやりとりを進めていくことを考えているそうです。

空き家所有者の家を大切にする想いを誰よりも知るからこそ、よりよい活用のあり方を模索する金丸さん。恋文不動産に取り組む中で “空き家対策にとどまらない可能性”も感じるようになってきたといいます。

金丸さん 恋文不動産をきっかけに、初めて生駒市に来る人もいます。市役所内でほかの部署と連携すれば、物件以外の面からも「生駒で何かやりたい」と思っている人のお手伝いができるはずだし、そういうことをやっていかないといけない、と動きながら実感しています。すてきな人たちの想いを叶えるために、もっともっとブラッシュアップしていきたいですね。

「空き家の問い合せの多くは活用が難しいほど傷みが進んだ物件が多いんですが、下西邸は85年も経過しているとは思えないほどきれいに手入れされていて、感動しながら下西さんと『恋文不動産をやりましょう』と話しました」と松本さん

実は取材中、金丸さんたちは参加者のみなさんのことを何度か「すてきな人たち」と表現されていて、そのことがとても印象に残っています。前例がない取り組みのなか、悩みながらも想いをもって家主や参加者と考えを共有しながら進めることで、空き家そのものだけでなく、関わる人に対して自然と「すてき」という言葉が出てくるのは、良いサイクルにつながるように感じました。見学会では下西さんご夫妻も参加者のみなさんも、お互いに「すてきな人だな」と感じているのが伝わってきて、こうして生まれる関係性こそが“条件”にはまらない価値であり、恋文不動産の醍醐味なのだろうと実感しました。

形のない「人の想い」を空き家を通じて形にする試みが、これからの生駒市でどんどん広がっていきそうで楽しみです。

2024年のはじめには生駒市内で恋文不動産のマッチングパーティーが開催されます。当日は物件見学会に参加していない人も出席できるよう、検討を進めているそうです。興味のある方はぜひ、生駒市のホームページで最新情報をチェックしてくださいね。

(撮影:藤田温)
(編集:村崎恭子)

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