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漁師町の民家で映画をみよう!和歌山・加太漁港をまるごと楽しむ「Kisssh-Kissssssh映画祭」

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酒蔵など本来は劇場じゃない場所でみる映画や、建物に投影するプロジェクション・マッピングのように野外で観る映像は、なんだかとてもわくわくしませんか?

「穏やかな波の音が聞こえるような所で、映画を観られれば最高じゃないか?」そんなささやか思いから始まった映画祭が和歌山にあります。9月21日、22日に開催される、漁師町・加太漁港を会場にした手作りの映画祭Kisssh-Kissssssh映画祭を紹介します。

漁師町のあちこちで、映画を上映

「Kisssh-Kissssssh(きしゅーきしゅー)映画祭」の発起人は、和歌山市内で雑貨とカフェのお店「スイッチ」を営む小川さん。そして、そのお店のお客さんだったハザマさん。そこに大学生のオシタさんが加わって動きだした。

最初は、ただ好きな映画を野外で観たいという気持ちで、どこか会場を探して小さくても楽しめるイベントにするつもりだったそうです。会場を探すうちに小川さんの友人が加太のまちづくりに関わっていたことを思い出し、映画と地域活性を一緒にしようと話が広がっていきました。会場数も8箇所になり漁港ならではの場所でイベントやライブも行われます。

小川さん、ハザマさん、大下さんの3人と一緒に加太漁港を歩きながら映画祭ができるまでをうかがいました。

IMG_2636 映画祭を企画したハザマさん、小川さん、大下さん

とくに海でやるって決めていたわけでもなくて、山でもいいなあと思ってました。うちのカフェのイベントにも来てもらっている加太の人に相談にいくと、加太漁港には使われていない空き屋がたくさんあることがわかりました。それじゃ空き屋も映画館に活用しようとなっていったんです。

と小川さん。

加太は、万葉の歌にも詠まれた景勝地で紀淡海峡に面して美しい海岸線が続いています。関西でも指折りの魚釣り場で、沖合には4つの島からなる友ケ島も美しい島影をみせてくれます。ただ、かつてはたくさんあった旅館も数えるほどにになり、風情を残す街なかにも空き屋が目立つようになっています。映画祭をきっかけにして、また街を訪れてくれる人が増えると嬉しいと小川さんたちは言います。

IMG_2635 加太港から眺める友ケ島も絶景

映画の合間は、漁船でクルージング

映画だけでなくて加太の魅力もみてもらいたいので、漁船クルージングフィッシャーマンズマーケットもやります。神社では加太の伝統文化の紹介もやります。会場は旧ボーイスカウトハウスや自治会館など8箇所もあるので、映画をはしごしながら街歩きも楽しめます。

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映画祭のランナップの一部「バクダッド・カフェ」「カミバテ商店」など。

確かに、加太の街並みはノスタルジックな漁村の景観が残っていて、少し脇道に入って散策するだけでも楽しくなります。漁師町独特の風情が、映画を観終わって会場を出たあとも、まるで映画のセットの中にいるような気持ちにさせてくれます。

民家も多い漁師町がまるごとが会場になるだけに、自治会や漁協、観光組合などのみなさんとの連携なくしては実現しなかった映画祭です。

企画書や契約書がきちんとしていればいいっていう問題でもありません。地元の人と僕たちの関係のなかで話が通っているか、通してくれているからですから、何度も加太に通ってやっと認められてきたように思います。

IMG_2620 まちを歩けば、井戸端うち合わせがはじまる

プレ企画は「午前十時の掃除祭」から。

3月3日に「Kisssh-Kissssssh」映画祭プレ企画第一弾として「第一回午前十時の掃除祭」が開催されました。会場に使用する古民家をみんなで掃除しようというイベントで、当日行われる加太の伝統的なイベント「雛流し」も見学。人形供養の神社として有名な淡島神社も加太にはあるのです。

このイベントをきっかけに大学生のボランティアも増えていき、さらには、掃除した空き屋を使って期間限定のパン屋さんがオープンしたりもしています。当初考えていなかったところにも映画祭のいい作用が起こり、街の人の映画祭に対する理解も助けることになったようです。

DSC_4882-570x377 古民家の掃除もイベント化して楽しむ!

まず、打ち上げ花火をあげることが大事。

小川さんはもともと会社勤めをしていましたが、4年前に退社し和歌山市内にカフェ「スイッチ」をオープン。店舗イベントも数多く開催し「SOA」という団体で和歌山のアーティスト支援もしています。

映画祭は今年が1回目なんですが、加太の人には終わる前から「来年も続けるんやろ?」っていわれます。僕は和歌山を離れた人が、年に1回でもいいから帰ってくる良い意味での口実になっていけばいいなと思ってます。もしかしたら一発で終わるかもしれませんが、まず花火を打ち上げてみないと人のリアクションもわからないでしょ。

ただ、小川さんたちも最初から地元に貢献したいと思って、動いていたわけではありません。自分たちが楽しみたいという気持ちが動機だったので、地元や対外的な広報が後回しになったりもしました。街のあちこちに会場を広げることにしたのも、上映作品をコンペ形式で募集したところ70本以上もの応募があり、できるだけ作品を上映したいと思ったことがきっかけです。

自分たちが楽しみたいことを自力ではじめて、それが盛り上がって結果的に地域活性にもつながるっていうのが一番いいんじゃないですかね。僕はそう思ってます。

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上映会場は8箇所にもなる

夕日が沈んだら、くじら公園で野外映画館をどうぞ。

普段は駄菓子屋やパン屋として使用されている古民家では、関西の大学生による映画研究団体「関西シネック」の作品や、和歌山の小学生監督による映画作品が上映されます。

idasan1このお店も上映会場のひとつ

IMG_2623 旧ボーイスカウトハウスではインスタレーション展示も

旧ボーイスカウトハウスの1Fでは映画監督高木駿一氏によるインスタレーション(映像芸術)作品を上映し、2Fでは若手音楽アーティストと新進気鋭の監督とのコラボ作品「MOOSIC LAB」の作品を上映。また一日目の15時から和歌山大学観光学部米山教授と映画評論家森直人氏によるトークイベントも。

そして19時からは、海に面した大きな「くじら公園」に設営した野外シアターで雰囲気たっぷりの上映会が始まります。

kujira29 メイン会場の「くじら公園」とにかく広い!ここにスクリーンが登場!

いまや映画館自体が少なくなっている時代ですが、加太にはひと味違った映画体験があります。

ちなみに、「きしゅ~きしゅ~(Kisssh-Kissssssh)」とは波の音のオノマトペで、和歌山の紀州(キシュウ)にもかかっています。美しい加太の海を楽しみに足を運んでみてはいかがでしょうか。