「シリコンバレーのデジタルエリートたちの間で非常に人気がある教育法」と聞くと、どんなものを思い浮かべますか?きっとiPadやITを駆使した、次世代のデジタル英才教育…と思いきや、実はうんとアナログな教育法なのです。
その教育法とは、ウォルドルフ教育。日本では「シュタイナー教育」といったほうがなじみがあるかもしれません。オーストリアの思想家ルドルフ・シュタイナーによって体系化された教育法で、取り入れられている遊び道具どはれも自然素材。プラスチック製品はもちろん、テレビやコンピュータ、スマートフォンといった電子機器は一切排除されます。
ともすれば子どもたちはスマートフォンやタブレットでYoutubeやゲーム漬け…そんな最近の潮流の中で、その違いはさらに際立ちます。
シュタイナー教育で使われるウォルドルフ人形。子どもたちが自然の風合いの良さを早くから肌で知れるよう、全て自然素材でつくられます
シュタイナー教育は特に環境主義として知られているわけではありませんが、「人間の自然との関わり方」をとても重視しています。子どもたちは毎日外へ出かけ、遊びや教室の飾り付け、お祝いごとも自然の四季のリズムに添って繰り広げられます。
子どもたちは毎日庭で植物を育てたり、池のカメやメダカを眺めたり、自然に触れながら育ちます
園にやってきた子どもたちはまず自由な遊びを楽しみ、その後お友だちや先生と一緒にパンを焼いたり粉を挽いたり。自分たちで食卓を整え、自分たちがつくったおやつを食べ、お皿を片づけ、もちろん皿洗いも子どもたちで。
次に庭に出て植物の世話や庭の生き物を眺めた後は、静かにお絵かきや編み物など手仕事の時間。お話や人形劇や歌を楽しんだら、さようなら。こうした日々の中で子どもたちは、自分たちで何かをすることや、いろんな物のつくり方を、自然と身に着けていくのです。
子どもたちは、手仕事を通じていろいろなことを感じ、学びます
保護者の半数以上がGoogleやApple、YahooなどのIT企業に勤めるという、シリコンバレーにあるシュタイナー学校の美術教師Calolyn Siegelさんはこう語ります。
私たちは「頭が手を動かす」と捉えがちですが、「手を動かすことでわかる」こともあります。手と意識は双方向なものなんです。
また、ウェブマガジン「inhabitat.com」の創設者であり、シュタイナー教育の幼稚園に4歳の息子を通わせているJill Fehrenbacherさんはこう述べています。
デジタル技術は私たちの生活に便利さや進歩をもたらしたけど、テクノロジーに依存しすぎた生活は何かを失っているって、多くの人が感じているんじゃないでしょうか。
子どものいるいないにかかわらず、また大人か子どもかにも関わらず、シュタイナー教育の自然や暮らしとのかかわり方は、デジタルに慣れてしまった私たちがなくしている何かを思い出させてくれます。
自分の手を使ってすること、つくることの喜びって忘れないもの。あなたもちょっとだけスマホやPCから離れて、自分の手で何かをつくってみませんか?
(Text:田中寛子)
[via Inhabitots]