みなさんは、”アーバン・ファーミング”という言葉を聞いたことがありますか?
「都市でも農業はできるはず!」と実践している人たちの活動で、日本でも「元麻布農園」や、お台場の「都会の農園」など、少しずつ増え始めています。グリーンズでは、過去にニューヨークのビルの屋上で活動する「Brooklyn Grange」などを紹介しましたが、自分でも「はじめてみたい!」と思っている方も、多いかもしれません。
とはいえ、野菜を育てることって、経験がないと不安なもの…。今回紹介する「Your Garden Show」は、そんな悩めるあなたの背中を、ポンと押してくれるソーシャル・ネットワークです。
世界中の人々が、あなたの相談相手に!
「Your Garden Show」は、Tom Finerty(以下、トムさん)とLisa Marini Finerty(以下、リサさん)によって開設された、ガーデニングの情報をシェアし合うSNSです。世界144ヶ国の庭や農地とつながることができるので、語学に自信があれば、世界中のひとが相談相手になってくれるのです。
さっそく、ウェブサイトの仕組みから紹介していきましょう。
まずは自分の庭について登録から。毎日の日照時間から、水やりのペース、土壌の状態などを入力するのがユニークですね。
サインアップが終了すると表示されるプロフィールページ。ここが、みなさんのネットワーク上の庭になるのです。
“Glog”と名付けられたブログ的コンテンツでは、写真や文章で毎日の栽培状況をシェアできます。
プロフィールやGlogで日々の様子をシェアすることで、興味の近い相談相手とのコミュニケーションが生まれます。また、知り合った人々や気に入った庭は、フォローすることでアップデートを確認できます。
アーバン・ファーミング以外にも、世界中の様々な事例が!
実際に参加しているユーザーはどんな庭を手がけているのか、いくつか紹介していきましょう。
シカゴの「water9094」は、ビルの屋上でアーバン・ファーミングに取り組む日々の様子を「Your Garden Show」で紹介。ナスやカボチャなどの野菜を育てながら、コンポストにも取り組み始めています。
サンフランシスコの「RichmondNeighbor」は、コミュニティ・ガーデンの再生を目標にした、日々の活動を報告しています。ご近所さんが集まって、雑草を刈り取って植物を植え、さらにニワトリ小屋まであります!
ボストンでコミュニティ・ガーデンに取り組むクリステンさんは、ラズベリーを収穫した喜びを投稿。「うらやましい!」「おいしそう!」などのコメントが届いています。
庭を検索することはとても簡単。地域や、庭の種類、日照時間などで、絞り込み検索をすることができます。
ユーザー同士が情報交換をする一方で、「Your Garden Show」の魅力を更に高めているのは、信頼できるプロの情報を発信していることです。”Plants”というタブをクリックすると、コーネル大学とミズーリ植物園が提供する、詳しい栽培方法や注意点などを読むことができるのです。もちろん、これも無料!
どうしても悩んだら、イアンさんにおまかせ。
ユーザーが楽しみにしているのが、毎週土曜日にIan Cooke(以下、イアンさん)が出演する、「Ask Ian」という生中継番組です。
イアンさんは、世界50ヶ国でガーデニングを経験し、イギリスの王立園芸協会から表彰されたこともある、エキスパート中のエキスパート。生中継番組では、ユーザーからの質問に答えてくれるだけでなく、毎週違ったテーマでレクチャーをしてくれます。見逃したときも、アーカイブが残されているので、いつでもチェックできるのが、嬉しいですね。
イアンさん
SNSで、世界中の庭をつなげよう
エミー賞を受賞し、メディアに造詣の深いトムさんが「Your Garden Show」をオープンした背景には、奥様であるリサさんの存在がありました。ガーデニングが大好きなリサさんは、ローマの歴史的な庭園の案内ツアーを主催するなど、庭にまつわる様々な活動をしてきました。
そんなリサさんの活動を見ていて、トムさんは「ガーデニングに興味がある人だけが集まるFacebookができたら、どのようになるだろう」と考え始め、「Your Garden Show」のβ版をオープンしました。
ガーデニングの情報をインターネットで調べても、情報を受け取るだけですよね。だからこそ、ビギナーもエキスパートも対等にコミュニケーションができ、世界中の庭・農園をつなげるウェブサイトを目指したんです。
トムさん
庭から始まる、まちづくり
SNSで人びとのつながりをつくる一方で、トムさんとリサさんは、ガーデニングが一層広まっていくことが、まちづくりにも良い影響を与えると信じています。
ガーデニングは一人でもできるけど、みんなでやると、もっと楽しいですよね。素敵な庭には、自然と人が集まります。そうやってご近所さんとの会話も増えていくことで、コミュニティのつながりも深まると思います。
と、リサさん。
2人のミッションは、世界中の人々にガーデニングの楽しさを伝えること。その背景には、新鮮で穫れたての野菜が食べれることや、環境への意識だけでなく、「庭を通じて、人々をつなげたいんだ!」という強い思いがあったのです。
リサさん
おいしい野菜を育てる経験を学びながら、コミュニティづくりにも役立てられるプラットフォームとして、様々なプロジェクトがひろがりつつある、アーバン・ファーミングの取り組み。「Your Garden Show」のように、暮らしに役立つ相談相手が見つかるSNSが、日本語でも使えるようになれば、ますます取り組む人々が増えてゆきそうですね。
(Text: 鈴木康太)
[via Your Garden Show, Through a Green Lens, Take Part]