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震災後2度目のクリスマス、1年前を思い問いなおす「そもそも」-映画『サンタクロースをつかまえて』

greenz/グリーンズ サンタクロースをつかまえて 光のページェント

間もなく、震災から2度めのクリスマスがやってきます。街中はすでにイルミネーションで彩られ、クリスマスムード一色。被災地、仙台でも街をイルミネーションが彩る「光のページェント」がはじまりました。この光のページェントは、昨年も開催され、復興の始まりの象徴としてニュースでも取り上げられたので覚えている方もいるかも知れません。

そんな昨年の光のページェントをテーマにした映画『サンタクロースをつかまえて』が現在、公開されています。仙台という大きな都市に暮らすごく普通の人たちにとって震災とその9ヶ月後に訪れたクリスマスがいったいどのような意味を持つのか、それを仙台出身の監督が伝える実に感動的な作品です。

この作品を監督した岩淵弘樹さんは仙台出身で介護福祉の仕事をしながらドキュメンタリー映画やPVを撮る映像作家です。彼は震災から約1週間後に両親の暮らす仙台に戻り、クリスマス前にももう一度戻ります。この映画はその震災直後とクリスマス前の仙台の様子を家族や友人、地元のアーティストなどを通して描き出した作品です。

この映画の中心となるのは、監督が震災後に目にして注目したyumboというアーティストです。彼らは被災した友人たちが集まり共同生活を送っていた火星の庭というカフェで演奏する様子をYouTubeにアップ、監督はその中心メンバーである澁谷浩次さん会いに行くのです。

この岩淵監督はPVの監督をしているということもあり、音楽を非常に効果的に映画に取り込んでいます。yumboの曲だけでなく、被災地を走る車のラジオから聞こえてきたはっぴいえんどの曲を映画に取り込み、言葉や映像だけでは伝わらない感情をそこに乗せて伝えようとします。その「力」を感じたのは、私自身が震災直後にその「音楽の力」を強く感じたということもあるのかもしれません。

それは震災から約1週間後の3月19日に開かれた「green drink for TOHOKU」でのこと。そのなかでサクラエレクトロの奥山真広さんの生演奏があり、そのナマの音を聞きながら心のなかで何かがほどけていくような感じがしました。会場でも涙ぐんでいる人も多く、「ああ、これが音楽の力なのだなぁ」と実感したのです。それをこの映画のyumboの「鬼火」を聞きながら思い出しました。

そして、そのように個人的な記憶へと想いを馳せさせるのは、この映画が「等身大」の映画だからではないかと思うのです。「等身大」というのは、「震災を映像に捉えてやろう」とか、「被災した人たちの思いを伝えなければ」と意気込むのではなく、自分が感動した音楽を作った人や、自分の家族、友人といった身の回りの人、その人たちが震災をどのように体験し、そこから何を思い、どう行動し、何に困り、何に悩み、いま何に希望を持っているのか、そのことを自分自身という視線から捉えているということです。これによって、観る人もそこに自分の思いを投影することができ、その「普通の人々」の思いを想像することが出来る、そこが見る人を感動させるのでしょう。

greenz/グリーンズ サンタクロースをつかまえて メイン

そのような等身大の描写からこの映画が問いかけるのは「そもそも」ということです。そもそもクリスマスとはなんなのか、光のページェントをやる意味とは、仕事とは、家族とは、その「そもそも」を問いかけるのです。それは岩淵監督自身が東日本大震災という未曾有の災害を経験して、たとえば「悲しんだり苦しんだりしている人がたくさんいる中でクリスマスを祝う意味とは」というような根本的な問いに直面したからではないでしょうか。みなさんも震災の後「そもそも」ということや「意味」について考えたのではないでしょうか。

そのような問いにはもちろん簡単に答えは出ないし、そもそも答えなど無いのかもしれません。しかし、そのような問いかけをすることには意味があります。だから、震災から2度めのクリスマスを迎える今こそ、そのような問いを震災の記憶とともに思い起こすためにも観て欲しい、そんな映画なのです。

『サンタクロースをつかまえて』
http://chasing-santa.com/
2012年/日本/80分
監督・撮影:岩淵弘樹
製作・撮影:山内大堂
渋谷ユーロスペースにて12月8日より公開、ほか全国順次公開。

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