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 数百年もの時と、いくつもの海を越えて。休眠していた種で作る船の庭「A Ballast Seed Garden」

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ヒメマツバボタン、ハコベホオズキ、ホシアサガオ、ヒメツルソバ…どれも秋の植物と言われていますが、みなさんはどんな花かわかりますか?これらはすべて帰化植物と呼ばれ、海外から人為的に運ばれて日本に自生しているものです。

今回ご紹介するのは、イギリスにある緑が生い茂るこちらの船。実はここに植えられている植物は、1680年〜1900年初頭に、貿易船と一緒に持ち込まれた外来植物の種が育ったものなのです。

今から一世紀以上も前、空の貿易船にはバランスを取るための重しとして、土や砂を積んでいました。その土や砂は港で荷物の変わりに積み下ろされ、そのまま放置されていたといいます。船はヨーロッパのあらゆる地域を渡り、同時に重しとしての土も積み降ろしが繰り返されました。その土の中にまぎれていた種が、数百年経った今、船に植えられて育っているのです。

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このプロジェクトをはじめたのは、ブラジル人アーティストのMaria Thereza Alvesis(以下、マリアさん)。彼女は海運の歴史と外来植物について調査するために、2005年にイギリス西部の港湾都市・ブリストルを訪れます。そこで河川敷を掘り起こし、重しとして使われたであろう土の中の種が休眠状態であること、数百年経った今も発芽する可能性があることを発見するのです。

マリアさんはブリストル大学植物園とともに、一艘の古い荷船を使い、何種もの外来植物を植えた“Ballast Seed Garden”を作ります。それはかつての貿易ルートや、ブリストルの港にどんな船がやってきたのかという生活史を表現するものでした。

船に植えられた植物のリストから、オートムギは中東から、イチジクはキプロスやトルコから持ち込まれ、逆にテッポウウリは南ヨーロッパから北アフリカやアジアの一部に運ばれていったことなどがわかります。それは大陸から大陸へと海を渡って貿易が行われていたことを示すものでもありました。

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数百年もの歴史をたどる、ロマンを感じるこのプロジェクト。その背景には、どれほど多くの外来種が非意図的に大陸に持ち込まれ、在来種を脅かしているのかという事実もうかがえます。

冒頭では帰化植物の名前をあげましたが、では日本に古くからある植物にはどんなものがあるかご存知ですか。ひとつに“万葉植物”というものがあります。その名の通り『万葉集』に詠まれた植物のことをさす言葉です。最も多く詠まれているのは秋の植物である“萩”だそう。

道ばたの植物に目を留めて、古くからあるものの価値を考えていく…そんな秋の過ごし方はいかがですか。

(Text: 杉本真奈美)

[via treehugger]