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いいワークショップってなに?「Ba Design Workshop」の安斎勇樹さんに聞いてみました!

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このところ、イベントや勉強会、カンファレンスなどへのお誘いが多くありませんか?みんながSNS、とくにFacebookをやるようになってからは、あちらからもこちらからも招待の案内が。正直、どのイベントに参加するべきか迷ってしまいますよね。時間もお金も使うわけですから、できることなら「ああ、行ってよかったなぁ!」と思いながら家路につきたいものです。

イベントや勉強会を有意義なものにするために、現在では、よくワークショップの手法が使われています。けれども、“ワークショップ”と名のつくイベントにいざ参加してみたら、ゲストが一方的にしゃべる講演会だったり、デザインのされていないただの交流会であったりすることも少なくありません。

そこで、今回は、いいワークショップをつくる手法について、東京大学大学院でワークショップデザイン論を研究する安斎勇樹さんにお話をうかがいました。参加者がよりおもしろいと感じられるワークショップの方法論って、どうやらあるみたいですよ。

創造性を引き出すワークショップの方法論を確立したい

そもそも、ワークショップの研究とはどのように進めるのでしょうか。まずは、安斎さんが手掛ける研究領域について聞いてみました。

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僕が所属する山内研究室(学習環境デザイン論)では、ワークショップに限らず、ソーシャルラーニング、学習空間、デジタル教材など、自発的に学ぶ人を取り巻く学習環境のデザインについて研究をしています。本当に切り口もアプローチも多彩なんですよね。

そんな中でも僕が研究しているのは、参加している人たちの創造性が発揮され、よりクリエイティブなコラボレーションを促すためのワークショップの方法論について研究しています。新しいものを創りだすことは、同時に質の高い学びにもつながりますから、これからの時代にとても必要とされている研究だと感じています。

安斎さんは現在、企業の依頼を受けてワークショップを活用した事業支援を行いながらも、大学生向けの「Ba Design Workshop」というオリジナルワークショップを継続的に開催しています。同じテーマのワークショップを何度も繰り返し開催する中で、場にどのような刺激を加えると、どんな変化が起きるかについて分析しながら研究しています。

Ba Design Workshopの様子

Ba Design Workshopの様子

Ba Design Workshopは、LEGOブロックを使って“未来のカフェ”をデザインしながら“場作り”について学ぶワークショップです。このワークショップは大学生を集めてこれまで何十回と繰り返し開催しており、その中でどのような反応が起きているのかを映像記録や発話データをもとに分析しています。

仮説的にプログラムやファシリテーションの仕方を少しずつ変えながらワークショップを行ってみることで、それぞれの場合にどのような影響が出るのかについて分析し、論文にまとめています。

ワークショップに参加する人はその都度変えているため、当然、参加者の個性によって毎回異なることが起きるのだそうです。それでも、何十回と繰り返す中で、だんだんとどのようにワークショップをデザインするとグループワークがうまくいき、新しいアイデアが出やすいのか、明らかな違いなどが見えてくるのだそうです。

社会的にインパクトのある研究がしたい

研究者として論文を書く一方で、安斎さんは企業からの依頼を受けて商品開発や組織開発などのワークショップも実践しています。

研究してきたことを企業向けのワークショップで実践してみることも少なくありません。企業では現在、商品開発や事業戦略において、イノベーションが求められています。ところが組織内だけで新しいものを生み出そうとしても限界があります。そこで、これまでの研究で明らかになった理論や手法を活用しながらワークショップをデザインし、企業の問題解決のお手伝いをさせていただいています。

例えば、KDDIの技術者の方々にワークショップを行った際には、“つながりを遮断するような新しい携帯サービスを考えよう”というお題でワークショップを行いました。普通、携帯サービスと言えば、人や情報とつながるためのサービスを想像しますよね。そこであえて固定観念に矛盾するような非日常的なテーマを設定し、普段考えない切り口から新しいアイデアを模索してもらった結果、非常に面白いサービス案が生まれました。

このように、矛盾したテーマ設定が集団の創造性を引き出すことは、研究によっても実証しており、論文にもまとめました。

企業や地域とのワークショップにも積極的

企業や地域とのワークショップにも積極的

安斎さんは、このように、実践活動とうまく連携しながら、社会的に価値のあるワークショップの方法論を見つけ出そうとしています。しかし、ワークショップは、場を導くファシリテーターの力量も重要なはず。こういった要素については、どのように考えているのでしょうか。

たとえ同じプログラムであっても、経験を積んだファシリテーターと、初心者のファシリテーターでは、全く異なるワークショップになりますよね。ファシリテーションには熟練度やその人柄なども影響しますから、確かに大きな要因だと思います。

しかしワークショップの技術を“人間力の差”として片付けてしまっては世の中のワークショップの質は向上しませんから、どんな人でも広く活用しやすいような方法論を提案できるよう、論文の有用性を意識しながら研究しています。その方が、社会的にも価値のある研究になると思うんですよね。

いいワークショップの条件とは?

それでは、安斎さんの考えるいいワークショップとはどのようなものなのでしょうか。

僕が考えるいいワークショップの条件は、まず第一に、日常では気づかなかった“新しい発見”が得られること。そして第二に、その発見をきちんと日常に持ち帰れることが大事だと考えています。それがなければ、ただ“楽しかっただけ”のワークショップになってしまい、知的な満足度にはつながりません。

そして参加した全員に意味のある発見を持ち帰ってもらうためには、ワークショップをきちんとデザインする必要があります。そのためには、試行錯誤が必要な課題であること、制約と自由度のバランスが取れていること、普段考えないような非日常的なテーマであること、振り返りの時間が十分に確保されていること、などの要素が必要ですね。

「ここで変わらなければ、もう変われないかもしれない」

安斎さんがワークショップの背景にある「人の学び」に興味をもったきっかけは、思い返すと高校時代のバスケ部までさかのぼるのだそうです。

僕は中高一貫校の学校に通っていて、高校時代にはバスケ部に所属していました。実は中学生のころは本当にだらしない生活を送っていて、成績もひどかったんですよね。このままじゃまずい、と落ち着かない気持ちで毎日過ごしていたのですが、これといってやる気になることもなく…。それが、高校バスケ部に進学して変わります。

そのきっかけになったのは、顧問の先生との出会いでした。とにかく怖い先生で練習も厳しかったのですが、僕はそのときに直観的に「いまが変わるチャンスだ!ここで頑張らなければ、このまま堕落した毎日が続く」と思ったんです。

その先生は練習が厳しいだけでなく、よく「文武両道ではなく、文武調和だ。」と言っていたんですよ。たとえば、ゴミ箱を探すのをあきらめてポイ捨てする人は、試合も途中で投げ出すにきまっている、と。全てはつながっているのだから、バスケがうまくなりたければ、遊びも勉強も手を抜くな、という指導方針でした。なので、結果的に少しずつ勉強もするようになりましたよね(笑)。とにかく、その時はバスケがうまくなりたくてしょうがなかった。

監督との出会いによってそれまでの生活を見直し、意欲と情熱を取り戻した安斎さんですが、その後、怪我という大きな壁にぶちあたり、再び変容の契機を迎えます。

ところが、高校2年生になる頃、試合中に左膝の半月板が割れてしまい、バスケが出来なくなってしまったんですよね。当時、バスケに賭けていたので、もうバスケが出来ないと診断された時は本当にショックでした。せっかく打ち込めるものを見つけたのに、それを突然失ってしまったので。部活をやめるかどうかも迷ったのですが、バスケで救われた部分が大きかった分、バスケから離れたくなかったので、僕は部のマネージャーになることにしたんです。

現場から一歩引いて観察しながら仕組みを整える

マネージャーとして、練習をサポートしたり、選手に試合のアドバイスを送るようになった安斎さんは、プレイヤーとしてコートに立つ以外のポジションであっても、意外とおもしろいということがわかってきたそうです。

原点を振り返る安斎さん

それまでは自分がプレイヤーとして上達することしか考えていなかったけど、試合や練習をコートの外から俯瞰して、観察したり支援したりすることのおもしろさに気づいたんです。観察でみつけた改善点を選手に伝えると、ちょっとしたことでもそれがチームの改善や選手の成長につながるんだなって。これは、いまワークショップを実践したり研究したりする視点と似ているところがあると思っています。そういう立ち位置でものを考えることが性に合っているのかもしれませんね。

教育ベンチャーの経営から、やがてワークショップの道に

高校を卒業した安斎さんは東京大学の工学部へ進学。ものづくりやインダストリアルデザインについて学びながらも、大学2年生の頃に教育系の会社を創業。受験生を持つ親を対象にした受験対策のサービスをスタートさせました。

子供向けの中学受験サービスは、塾や家庭教師、通信添削まで多種多様です。ところが、その親を対象としたサービスって少ないんですよね。多くの場合、受験生は自分の意志で勉強しているわけではなく、親の言いなりになって勉強しています。僕はかねてから、子どもにあれこれ厳しく命令するよりも、親が正しい知識を持って暖かく見守るようになれば、子どもは束縛から解放されて自分から学ぶようになるのではないかと感じていました。

そこで、保護者に対して学習環境づくりの方法について情報を提供したり、相談に乗って問題を解決するサービスを始めたんです。それがとても好評で、ビジネスもそれなりにうまくいったのですが、その事業は3年ほど続けてからたたむことにしました。

会社をたたんだ理由は、最終的には偏差値によって活動の価値を評価されてしまうことに違和感を感じたためでした。安斎さんにとって、学ぶことの楽しさは、偏差値に置き換えられないものでした。そこで、より楽しく学ぶことができて、かつこれからの社会にも求められる力が身につけられるような、ワークショップの実践と研究をスタートさせることになったのだそうです。

ワークショップがどんどんうまくなるバイブル誕生!?

安斎さんの今後の活動は、大きく二つの方向性があるそうです。

ひとつは、現在取り組んでいるワークショップデザイン論を引き続き探求していきたいということです。自分自身も実践をしながら新しい方法論を研究して、多くの実践者の方に役立ててもらいたいと思ってます。もうひとつは、ワークショップという枠にこだわらず、それを軸にしながら領域を拡げていきたいと考えています。

例えば創造性を引き出す空間のデザインであったり、組織やコミュニティのデザインにも関心があります。また、産学連携など異業種の人材のコラボレーションを支援する方法にも興味がありますね。いずれにせよ、創造的な学びの場作りをキーワードにしながら、実践と研究を往復しながら面白くて価値のある研究を続けていきたいです。

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2013年3月には、『ワークショップデザイン論-創ることで学ぶ』という共著による書籍の出版も控えているのだそう。この本はワークショップ実践者向けの本で、ワークショップを行うための企画方法、運営方法などがわかりやすく解説された本となります。この本をうまく活用すれば、いままで手探りで行っていたワークショップも充実していくこと間違いなし!ワークショップ実践者には、新しいバイブルのような一冊になってくれるかも!?

安斎さんのウェブサイトはこちら!