読者のみなさんにお願いです。greenz.jpを寄付でサポートいただけませんか?

greenz people ロゴ

Slow Coffee 小澤陽祐さんに聞いた「フェアトレード珈琲屋がラップをはじめた理由」とは? (後編)[MAD “Life” Gallery]

coffee

MAD Life Gallery」は、松戸の駅前エリアを”クリエイティブな自治区”にする「MAD City」プロジェクトとのコラボレーション企画です。こちらではMAD Cityに暮らすひとびとの、ユニークでクリエイティブな”これからの生き方”を紹介しています。

フェアトレードのコーヒーを扱う「Slow Coffee」を営みながら、ラッパーとしての顔も持つ小澤陽祐さん。前半ではフェアトレードとラップ、それぞれとの出会いについて伺いました。後半ではHIPHOPの精神があったからこそ出会った「MARLEY COFFEE」について、またMAD Cityとの関わりを聞いていきます。

生き方としてのHIPHOP

YOSH 9.11をきっかけに、自分の伝えたいことをラップとして形に残そうと始めたそうですが、実際にラップをやっていて手応えはありますか?

小澤さん うん、結構「初めてラップを聞いたけどすごく伝わった!」というリアクションが多いかも。僕は言葉が好きで、言葉遊びをしてるんだよね。俳句とか短歌とかと同じだけど、自分が俳句詠むかって言ったら詠まなくて、自分にとっての言葉の表現はラップだった。

寺井さん 小澤さんのラップの良さは、「カッコいい」とかじゃないと思うんですよ(笑)。「カッコいい」というのは一部の人のもので初めて成立するもので、全員ができたら、それはカッコいいと呼べない。小澤さんからは、みんなラップやればいいっていう気持ちを感じるんですよ。誰かがカッコよくなるんではなくて、誰にでもできるようにする。イコール、どんどんカッコわるくするってことかもしれない(笑)それが一周まわって……。

YOSH そういう風にどんどんラップ仲間を増やしていきたい気持ちはありますか?あるいはラップをはじめてみたい!みたいな人が増えてきたりしたら。

小澤 いやー、女ラッパーの登場はやっぱり待ち遠しい。ぜひコンビを組んで…フューチャリングってあるでしょ?お互いパートを半分こすれば、それでイイと思うよ。サビだけ歌うフューチャリングもあるし、歌でメロディを入れてくれるとか、大歓迎!

YOSH 小澤さんがパフォーマンスするときに大切にしてることってありますか?

小澤 うーん。僕は声がすぐかれちゃうんだよね。

寺井 当然だけど、ラッパーは一般的には声は枯れないほうがいい。枯れたらカッコ悪い。小澤さんは声が枯れてる。でも、真剣にラップしたら声枯れちゃうよねって説得力を僕は感じるんですよ。それだけ本気で言いたいこといったら、喉潰れちゃうでしょ、みたいな。生き方として考えたら上手いということ以前に重要なことはあって、本当に言いたいことがあったら、ついついうわずっちゃうとか、ついつい出しすぎちゃって失敗しちゃったとか、それが自然だと思うんです。それが僕の、一周まわって小澤さんのラップは本当に良いって思う理由で。

小澤 もともとラップって結構、レコーディングしたもの聞くのと、ライブのものを聞くのと、全然クオリティが違って、ライブの方はやっぱりみんな声かれてるんだよね。何言ってるかわかんないから、やっぱり何言ってるかわかるように歌いたいなって思う。

だから僕、あんまり韻とか踏まない。「ささのはさらさら」とか「どんぐりころころ」ぐらいが日本人の韻だと思っていて、あんまりガチガチに韻を踏むことは心がけていないし。「ささのはさらさら」は最高の韻だよね。僕の言葉のベースは童謡なんです。童謡でトラックつくって売ったら、結構売れるんじゃないかって本気で思ってて(笑)。

MARLEY COFFEEとの出会い

marley
ボブ・マーリーの息子、ローハン・マーリー(写真中央)とともに

YOSH 生き方としてのHIPHOPがあったからこそ、MARLEY COFFEEとの出会いもあったのかもしれないですね。

小澤 MARLEY COFFEEは、去年の2月下旬に存在を知りました。それを日本に入れようとしている人たちがいると聞いて、会いたいなーって思ってたんですよ。

僕の夢はジャマイカとキューバとハワイとエチオピアのコーヒーをフェアトレードで提供することなんです。ジャマイカはブルーマウンテンが有名で、すごい高値がついてるけど、あんな高くやり取りしているのは日本ぐらい。逆に「産地から直送できたら、いまと同じぐらいか、むしろ安くなるんじゃないか」って仮説があって、いつか取り組みたいって思ってました。

で、話を聞いたら、ジャマイカでオーガニックなブルーマウンテンをつくっている農場は2ヶ所しかなくて、しかもそのうちのひとつをボブ・マーリーの息子がやってると。びっくりだったんだけど、いろいろ聞いてみたら、すごい社会貢献のマインドがある人で。もともとジャマイカの恵まれない子たちにコーヒーの売り上げの1%の寄付をしていたりとか、結構イイこといっぱいやっているし、僕らと理念が似ていたんです。

やっと出会えたのが震災の後でした。3.11は自分にとって9.11と同じくらい衝撃的な出来事で、これからどう自分が生きていくか、SlowCoffeeがどう事業を続けるか考えさせられたし、そんなときにMARLEY COFFEEの話を聞いて。僕はそんなにボブ・マーリーは聴いてなかったんだけど、歌詞は読んでて。「支配と隷属からの精神的な解放」とか、「過ちのエネルギーの中で生き残る」とか、HIPHOPにも通じる歌詞だったんだよね。「これは巡り会いだ」と思いました。

YOSH 出会うべくして出会ったんですね。


happy 12th birthday to slowcoffee from Marley coffee japan

小澤 ただ、生豆が入って来なかったんですよ。焙煎したのを輸入して持ってきちゃうから。僕らの考えとしては焙煎してすぐ、香りが良い状態で売りたい。ましてやブルーマウンテンは香りが良いコーヒーだし、絶対国内で焙煎したいと思って、それを実現させるまでに1年半ぐらいかかりました。今は僕らの工場で焙煎して、限定で販売してます。

ちなみに227グラムで2,940円と、値段は高いです。ワインでそれぐらいの値段なら、そこそこ良いワインが飲める。でもこの少ない量からでも、ボブのメッセージと一緒に、ラスタな週末を過ごしてほしいなという思いでやっています。ローハン・マーリーは自由だけど、本当にアツイ人ですよ。

次に僕らがやりたいのは、そんな作っている人達に会いにいけるツアーなんです。僕らがエクアドルとか現地に行って思うのは、やっぱり”支援”じゃないんだよね。たまたま縁ができちゃって、その人たちからコーヒー豆を買っていて、あたりまえのこととして正当な対価を払う。

エクアドルなんて超山奥だから、山奥でどんな人たちが暮らしていてどんな思いでコーヒー豆を作っているのか知るほうが楽しいですよね。エクアドルは屋久島みたいなところで、森の中でおいしいコーヒーが育つようなめぐまれた環境はいまや世界中に25カ所ぐらいしかないんだって。

そういうところに行くということにすごく価値があって、そのほうがよっぽどコーヒーも楽しめて、僕らの言いたいことがもっと伝わるんじゃないかなあ。

寺井 「かわいそう」「支援」っていうのがフェアトレードじゃない、みたいなことなんだろうな。小澤さんは日本から、エクアドルのことを可哀想だなんて思ってないでしょう?エクアドルの側から、美味しいコーヒーを届けたいなって思ってる人がいるのに近い気がして、そうなると小澤さん、すでにエクアドルの人間になってるよね。そういう意味ではもう原地の人に近い(笑)。

小澤 うん、そうかもしれない。

MAD Cityのおかげで堂々と悪ノリできる街に

YOSH 最初にMAD Cityのことを聞いたときはどうでしたか?

小澤 ビックリしましたね。漫画の『カメレオン』が好きって言ったけど、そのなかに松戸をMADと呼ぶといった内容があって、MAD Cityなんて自虐的に言っていた。そうしたら、ほかにも松戸をMAD Cityって呼んでる人が居た!って。しかも地元の人じゃなくて外からきた人がそれを言うもんだから、ダブルのびっくり。

話を聞いてみたら、「すっかり地元の人たちに溶け込んでいて、あの名物オヤジといつも飲んでる!」みたいなウワサを聞いて。ずっと暮らしてきた僕もやったことのないようなことを外からきた人がやっている。もちろん下心はあるのかもしれないけど、それは別に悪い下心じゃないなって思って。今までなかったアプローチだし、松戸にとってもイイことだなと思ってます。

light
MAD City Galleryの提灯も、地元の老舗提灯屋さんに作っていただいたそうです

YOSH MAD Cityに関わることで変化したことってありましたか?

小澤 ありますあります。やっぱり今は都内に仕事では出かけますけど、クラブとか遊びではほとんど行かないんですよ。遠いし、疲れるし、渋滞するし。それが今、松戸にクラブもできて、自分が面白いと思えるアクティビティが、化学反応みたいにたくさん生まれてきている。

YOSH 以前、寺井さんは「悪ノリできない街はつまらない」って言ってましたが、MAD Cityという物語があるおかげで、堂々と悪ノリできるみたいな感じなんしょうか。

小澤 そうだね。いろんなことを仕掛けてくれるから、ラップも勢いでやれる。MAD Cityに関わって人生が始まった人、たくさんいるんじゃないかな?脱東京ゼミの生徒だったイズッパチ(※MAD City関係者の行政さん)はその後SlowCoffeeのスタッフとして働いてくれているんですが、いまやMAD Cityの初代公式ガイドになりましたからね。

YOSH 公式ガイドって何ですか?

寺井 MAD Cityを紹介したり案内できる公式の案内人ということなんだけど。弊社のスタッフ内で、行政くんが公式ガイドになったらいいよねって会話をしていて、本人ともあれこれ話したり一緒したりして、気づいたらそうなっていたというか(笑)誰も否定しないからそういう風になっちゃった。実際、MAD Cityの案内をさせたら本当にピカイチなんですよ。

小澤 自分で言って否定されなかったらOKなんだよね。松戸がこう盛り上がってるのは、やっぱりホットスポットの“おかげ”もあると思う…。みんな一生懸命生きようと思っていると思う。柏の人もそうかもしれないけど、僕もそう。チェルノブイリの話を聞くとやっぱり健康を害する可能性が高い中で暮らしている訳ですよ。だからなんかしようという機運も高まったと思う。

寺井 それは絶対あるよ。

小澤 だから去年のいろんな悪ふざけとか、訳わかんない公認ガイドも生まれたし。

寺井 なんか変なイベントを思いつきで実施したものね、今もだけど(苦笑)。松戸は、放射能が怖くてお金とか生活に余裕のある人、そういう方は実際にかなり出ていってしまったんだと思う。マンションとかでも、すごく人が引っ越していったって聞くし。松戸に思い入れなどなにもない、って人は出ていった感じがするんです。

それで残った人間、僕もそうですけど、どこにも行けない惨めな自分なのか、松戸にいることを選んだ自分なのか、どっちなんだっていうことをみんな自分に問いかけているんだと思う。放射能が怖いなあという自分、いろんな事情があってこの地から抜けれない自分、どっちでもあると思うんですよ、実は。そのこと見つめつつ、ポジティブに生きようとしている人たちがMAD Cityに関わってくれているんじゃないかなって思いますね。

YOSH 受け皿になっているんですね。

寺井 江戸時代から松戸にいらっしゃった家の方がいて、「放射能は怖いよね」って言うんだけど、一方で「ずっといる街だから出れないし、俺たちの街だし、出ない」とも仰っていて。「でもどうしようもない状況になったらどうしますか?」って聞いたら、「出て移動したところを松戸にする」って言ってて。それってギャグみたいな話、流浪の民みたいな話だけど、その意気や良し、だと思うんですよ。どこか腹を括ってますよね。だからこそ、放射能ネタのブラックジョークとかもこの界隈では平然と飛び交うし(笑)。

小澤 それはすごく同感なんですよ、そうとしか思えないし、そう決めてからじゃないと動かないなって。

寺井 いまの話、MAD Cityの話っぽいねって言う人もいるんじゃないかなって思うんです。でも実際は、松戸の話なんですよ、江戸時代からの。それはMAD Cityという、僕みたいな余所者があとからつけた言葉が、本当に松戸の歴史と重なっていく瞬間なのかなと感じていて。それは喜びですよね。

前編はこちら!


(左)寺井さん(中)小澤さん(右)YOSH

編集後記:編集長YOSHより

SlowCoffee小澤さん、まちづクリエイティブ寺井さんとの対談プチトリップ、いかがでしたでしょうか?

HIPHOPからMARLEY COFFEE、ホットスポットとしての松戸の話まで、さまざまなストーリーがありましたが、特に印象的だったのは、小澤さんがふとつぶやいた「みんな一生懸命生きようと思っている」というひとことでした。今までだったさまざまな外部要因があるけれど、きっと内なる決意のシンプルな積み重ねこそ生きた歴史なのだと思います。

“クリエイティブなまち”の条件に照らしてみれば、寺井さんのいう「色んな顔を持てるまち」というのは”タレント”のことであり、「いつだってリスタートできるまち」とは”寛容さ”を意味しているのかもしれません。特に二人のお話を聞いて強く感じたのは、敢えてカッコわるい=誰でもできる雰囲気をつくり、愛のある”悪ノリ”をそそのかし、生まれてきたものをみんなでエンジョイするという、MAD Cityの”土壌”こそポイントといえるのではないでしょうか。そこにはふつふつと湧き上がる強い覚悟、夢も打算もとことん話しあった末に気づかれた、気持ちよい信頼関係があります。

今夜も、また明日も生まれ変わり続けるまち「MAD City」。この記事を読んで気になったという方は、ぜひ足を踏み入れて、ご自身の肌で感じてきてもらえると嬉しいです。というわけで、小澤さん、寺井さん、ありがとうございました!

こちらの記事で紹介したMARLEY COFFEE“トーキン・ブルース”のご予約を受付中です。貴重な豆だけに焙煎量も限られているのと、焙煎したての豆をお届けしたいという 理由で今回は限定15個の完全予約販売とさせて頂きます。 9月27日(木)焙煎で28日(金)の出荷となります。ご発注の〆切は9月27日のAM12:00まで。この機会にぜひ!

また、おかげさまで直営のカフェSlowCoffee八柱店は10月10日に3周年を迎えます。つきましては昨年に引き続き、カフェで皆さまと一緒にお祝いしたいと思います。 今年は利きコーヒーやコーヒーにまつわるドレスコードなどやる予定です。ぜひお越しください。詳細はこちら