もうすぐ夏も終わるころ。みなさんはどこかへ旅行に出かけましたか?飛行機で海外に、船で離島に、電車で地方に、それとも車で…?
この夏、アメリカである挑戦が行われました。東海岸のボストンから西海岸のサンフランシスコまで2週間で横断するというものです。条件はひとつ、いっさいのお金を使わないこと!
タダの移動手段と言えばヒッチハイクが思いつきますが、まだ100%安全とは言えません。でもこのチャレンジは、無事に成功を収めます。では、どのように旅を成功に導いたのでしょうか?
この挑戦は、建築の新しいビジネスモデルをつくる「Architizer」と、ドイツの自動車メーカー・アウディによるプロジェクト「Audi’s Urban Futre Initiative」との協同で行われました。旅人に抜擢されたのは、Archtizerのブロガーであるリンゼイ・ルールさん。彼女はペンシルベニア大の学生であり、建築家でもあります。
7月25日、リンゼイさんの旅がはじまりました。ボストンからサンフランシスコまでの距離は約3,000マイル(約4800キロメートル)です。バックパックにソーラー電池、ラップトップパソコン、ミネラルウォーター、洗面具を詰め、スマートフォン片手に出発!
ところが、リンゼイさんはいきなり立ち往生してしまいます。ソーシャルメディアを使う計画を立てていたのですが、Wi-Fi環境がなかったのです。悩んだ結果、緊急用に持たされていた100ドルを少しだけ使ってバスのチケットを買い、Wi-Fiと電源を求めてニューヨークに向かいました。
ニューヨークで事態は好転します。「Craigslist」というローカル情報サイトを使って写真家のキャメロンさんと知り合うことができ、彼とライドシェアをしてシカゴに行けることになりました。Facebook経由で、友人のカウチに泊めてもらうことも決まります。
シカゴでもCraiglistを使い、マディソンまでのバスチケットを譲ってくれる人を見つけます。着いた先で、一人のカウチサーフィンをしている人に出会い、今度はその人がミネアポリスまで車に乗せてくれることになりました。
このようにCraiglist、Facebook、CouchSurfingなど、あらゆるソーシャルメディアを駆使し、そこで新しく知り合った人たちのやさしさを受けて、リンゼイさんは14日間の旅を満喫。無事にサンフランシスコまでたどり着くことができました。
ソーシャルメディアが巨大なネットワークだということはわかっていても、いざ旅に出るまではどれほどすごいものかってことはわからなかった。
と、旅を終えたリンゼイさんは話しています。「もう一度、旅に出たい」とも。
距離を感じさせないコミュニケーションがとれるだけでなく、目の前にある物理的距離も埋めるかのように、ソーシャルメディアが大陸の端から端までつなげてくれた今回のチャレンジ。ソーシャルメディアの可能性の大きさを、あらためて感じさせてくれます。
それだけでなく、今回の結果は車を持たなくても移動が簡単にできる時代になりつつあることも同時に示しているのではないでしょうか。
アメリカでも若者の車離れが顕著になり、自動車メーカーはカーシェアリングなど、新しいビジネスを考えなければならない状況にあります。アウディも「自動車メーカーが新しいモビリティを検討していくことは、将来的に車を販売することよりも重要になるだろう」と考えているそう。
車の数が減っていくことは、環境を考えても好ましいこと。これからはエコカーの技術を磨きながらも、そもそもの車の使われ方も見直して、環境に配慮した社会を作っていくことが期待されますね。
(Text: 杉本真奈美)
[via Co.EXIST]
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