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何もない自然の風景を「ピクニック」というデザインで観光スポットへ変える!? 丹波を楽しむ「歌とピクニック in tamba」

秋の山々に囲まれて。 (C)2011年「歌とピクニック in tamba」

秋の山々に囲まれて。 (C)2011年「歌とピクニック in tamba」

兵庫県の山間の町、丹波。「何もない」のどかな田舎町。訪れる観光客の平均年齢は39,4歳と兵庫県一高く、そしてまた観光客が1人当たり使う金額も兵庫県の市町村の中でも下位であるというデータがあります。

“日本の普通の田舎町”と違わず過疎化が進むこの丹波で、「自分の故郷を楽しい場所にしたい」という想いから、ひとりのデザイナーが立ち上がりました。近藤清人さん、33歳で二児のパパでもあります。

近藤さんは2011年10月に「歌とピクニックin tamba」というイベントを開催し、阪神間から2000人ものお客様を動員。イベント開催に到ったストーリーと、2012年の概要についてのお話を伺いました。

「何もない」田舎には、本当に何もないのか。

例えば、神戸には港がありますし、隣の篠山市は城下町として有名でまちおこしを行っています。丹波には観光資源はあっても徒歩で周れるほど密集していないんです。高校生のときは、ジュースひとつ買うにも自転車で20分走って自動販売機まで行ってましたから(笑)。

ただ、森の中に入れば空気がおいしいし、太陽の光があるし、年間を通じて四季を感じます。この“自然を楽しむ”感性は“音楽やアートを楽しむ”感性と似ているのではないかと考えるようになったんです。

そこで、森の中で「アート」「ライブ」「マルシェ」「ワークショップ」を楽しめるイベントを企画したのが「歌とピクニックin tamba」なんです。

様々な「食」が楽しめるケータリングカーの姿も。 (C)2011年「歌とピクニック in tamba」

様々な「食」が楽しめるケータリングカーの姿も。 (C)2011年「歌とピクニック in tamba」

“観光スポットの数”は都会に負けても“観光スポットとスポットの間”へ“ピクニック”というデザインをほどこすことによって、お客様が楽しめるのではないかと考えた近藤さん。さらに、高齢化が進む丹波でお客様のターゲットをF1層と定めます。

歌とピクニックの資源の考え方を示した図。 (C)歌とピクニック

歌とピクニックの資源の考え方を示した図。 (C)歌とピクニック

丹波の人に丹波の魅力を聞いても、当然のように「何もない」と言いますし、田舎町ですから都会への憧れを持った人は多いです。そこで都会に居るような若い人やお洒落な人に丹波まで来てもらって「丹波って良いとこですね」と言ってもらうことで、丹波の人は、地元の魅力に気づき自信を持てるようになるのではないかと思ったんです。

どうしたら若いお洒落な女性が恋人や家族と一緒にこの丹波を歩いてる状況を作れるか?まずはそういう風景を思い描くことからスタートしました。

モノにしろ、コトにしろ、まず最初に喜んでもらう人の顔をイメージすること。それこそデザインの基本と言えるかもしれませんね。2012年のイベント詳細についても伺ってみました。

今年の「歌とピクニック」では何が行われるの?

2012年は、10月13~14日の2日間開催します。1日の入場料は500円。そして1日7組~10組くらいのライブパフォーマンスを行います。クラシック、ジャズ、ロック、お坊さんの雅楽やキッズダンス、ヨガなどの色んなジャンルをごちゃまぜにしようと思っています。

またアートやワークショップを通して森や川を楽しんでもらえるような展示や、かわいい動物とのふれあいの場も作れるように考えています。

JR市島駅からシャトルバスを運行し、今年はさらに駅舎にもインスタレーションをほどこすなど、本会場への移動も含めて楽しんでもらえるように企画していますし、イベントの前日、12日から隣のキャンプ場に宿泊して頂くことも出来るようになっています。

去年遊びに来た方がハガキをくださって、「ムーミン谷のお祭りみたいでした」と。嬉しかったですね。予想以上の多くのお客さんが遊びに来てくれて、大成功だったんです。

合鴨農法の鴨も、イベントの一部へ。(C)2011年「歌とピクニック in tamba」

合鴨農法の鴨も、イベントの一部へ。 (C)2011年「歌とピクニック in tamba」

昨年は、お天気にも恵まれました。 (C)2011年「歌とピクニック in tamba」

昨年は、お天気にも恵まれました。(C)2011年「歌とピクニック in tamba」

木々に囲まれた森の中で、秋の高い空の下でお酒を飲みながら、アートや音楽を楽しむ…想像していると、バックミュージックには鳥のさえずりが聞こえてきそうなシチュエーションですね。

これらの風景を発信するための仕組みとして、今年は「レポーターズ」という組織も運営するそうです。

新企画「レポーターズ養成キャンプ」について

8月20日~21日の2日間、「レポーターズ養成キャンプ」を実施します。ここで、今実際に取材・ライティング・撮影の分野でお仕事をされている方たちの講座を受けていただき、情報発信のスキルを学んでもらいます。さらに、この1泊2日のキャンプで学んだことを実践するための場所として、イベント出演者への取材を行ってもらうんです。

「取材」という目的を通して参加者同士が仲間となり、2次的な何かが生まれればいいなとも思いますし、また、単純にこれからの世の中で情報発信は必須スキルともいえますので、これらが学べるということで参加者の皆様にはメリットを感じて頂ければと考えています。

僕も含め、実行委員の皆でレポーターズキャンプをとても楽しみにしていて、実行委員のスキルアップにも繋がればいいなとも(笑)。

実は、レポーターズキャンプの講師として呼んで頂いたことが近藤さんと知り合うキッカケとなりました。私もレポーターズキャンプが楽しみです。さて、普段はデザイナーとしてお仕事されている近藤さんに、丹波で活動を始めた経緯も伺ってみました。

丹波が嫌いだったし、デザインの勉強もしたことがなかった

のどかな丹波の町並み。
のどかな丹波の町並み。

若い頃は丹波が嫌いだったんです。当時はインターネットもなかったし、洋服も買えなかった。刺激がなかったんですね。それで神戸の大学へ進学して経済を勉強してたんです。普通にサラリーマンとして就職したのですがすぐに辞め、インテリアがなんとなく好きだったのでショップで販売を始めるんです。さらに、販売よりも作る方に興味が湧いて来て、設計事務所へ就職するんです。そこで初めてデザインについて学びました。

デザインを突き詰めていくと、自分の中にどうしようもなく染みついている感覚のようなものを発見したんです。それは、田舎の稲刈りをした後の株を踏んだときに足の裏で「ザクッ」となる感触だったり、キュンと感じるポイントというのがあるんですね。

また、僕は長男なのでいずれ丹波へ戻って実家を継がなければならないと思ってたんです。実家は特にお店をやってるわけでもないのですが、これも感覚的に染みついたものだと思います。

「どうせ帰るなら、面白い場所にしたい」「故郷をデザインしてみたい」と、思いついたのが「歌とピクニック」なんです。

イベントへ来る方たちは、”地域の活性化”という社会的な意義は気にせず、単純に遊びに来て楽しんで帰ってほしいと語る近藤さん。イベント名のネーミングにも、そんな「おもてなしの心」を感じますね。

人の気持ちを変えるスイッチ

キャンドルの演出で、ムードが高まります。(C)2011年「歌とピクニック in tamba」
キャンドルの演出で、ムードが高まります。(C)2011年「歌とピクニック in tamba」

もともとサプライズが好きで、結婚式の余興なんかをよく頼まれるんです。嫁の誕生日でも、普通にプレゼントを渡すのは嫌だなーと思って、嫁が朝起きてからする行動を考えたんですよ。まず一番最初に冷蔵庫を開けて、家事をして。当時僕は会社勤めをしていたので、嫁が昼しか開けないものは何かないかなと。8月生まれなので、昼にアイスクリームを食べるかなぁと思って、冷凍庫の中に手紙とプレゼントを入れておいたんです。そしたら案の定、昼くらいにメールが来て、「ありがとう」って。

次の年はあえて、去年と同じ冷凍庫に手紙を入れておいたんです。そしたら昼くらいにメールが来て、「何にも書いてなかったよ」って。「それを火にあぶれ」って返信するんですよ。その年はあぶり出しラブレター(笑)。

僕の中で、デザインってそういうことだなって思っているんです。“嬉しい・楽しい”を通して、人の気持ちを変えるようなスイッチなのかなと。そして、そういうことを考えるのは元から好きなんです。

地元・丹波を起点に、「歌とピクニック」以外にもそういう気持ちのスイッチを押せるような取り組みやデザインをどんどん仕掛けていきたいと思っています。

お話を伺った近藤さん。写真では「みんな丹波に遊びに来てね」という気持ちを表現してもらいました。

お話を伺った近藤さん。写真では「みんな丹波に遊びに来てね」という気持ちを表現してもらいました。

準備が今まさに進められている「歌とピクニックin tamba」。その楽しげな様子はブログにも綴られているので要チェックです。また、レポーターズの申し込みは2012年8月9日までですよ。