東日本大震災から1年余り、被災地の復興が少しずつ進む中、震災にあった人々は何を経験し、何を思ったのか、そしてそれをどう未来に活かしていくのかを、そろそろ考える時期に来ているのではないかとも思います。特に未来を担う子どもたちはあの震災に一体何を感じたのでしょうか?
そんな子どもたちの思いを彼ら自身が撮った映像で綴るサイトがあります。そのサイト「こどもコ・フェスタ」について、スタッフとして関わったTVプロデューサーの堀内史子さんにお話を聞いてきました!
被災地の子どもたちと一緒に映像をつくる
「こどもコ・フェスタ」は全日本テレビ番組製作社連盟(ATP)が経済産業省と進める「被災地の子どもたちと一緒にビデオを作り、そのビデオをWEBサイトを通じて世界に発信する」というプロジェクト。
ATPはテレビ番組制作会社126社で組織する団体で、その団体に所属する制作会社の内10社が昨年の夏にそれぞれ被災地で子どもたちと対話をし、一緒にビデオ作品を作るという活動を行ったのです。ATPは多くの子供達が心に傷を負った中で「子どもたちと一緒にビデオを作ることによって子どもたちの新たな感性や可能性を生み出し、未来への小さな一歩の一つにつながることができれば」という想いでこのプロジェクトを行うことに決めたそうです。
堀内さんが勤めるテレコムスタッフもその内の一社で、堀内さんは南相馬市で活動を行いました。現場ではスタッフと子供たちが対話を重ねながら、子どもたち自身がカメラを持ち、「誰かにあてた手紙」というテーマで映像を作ることにしました。
一生コミットする覚悟で
社内で募集するときには「一生コミットし続ける覚悟、自信がある人しか応募しないでください。映像は半永久的に残るのだから、その子自身や家族をちゃんと見れるという自信がないと難しい」と言ったそうです。それでも多くのスタッフがもちろんボランティアで参加し、南相馬市に入りました。現場では「放射能にナーバスになっている子もいたけれど、多くの子供が淡々と事実を受け入れてるのがすごい」と思ったそうです。
その中の一人タイヨウ君についてこんなことを言っています。
面接の時にはひどい悪ガキで、でもあとで親御さんと話していると、「実は放射能がすごく怖くて、でも言うと格好悪いと思われるから外では絶対に言わないんだそうです。放射能が高いもといたところに戻るのもすごくいや」だそうで、親御さんの了承の下、野田総理大臣に手紙を書いてもらいました。
そのタイヨウ君の映像がこちら
実際に現場を訪れてみて何を思ったかを聞くと堀内さんはこう答えました。
その日一番感動したのは、とにかく子どもはみんな普通に一生懸命子どもをやってるんだということでした。
みんなこんな普通に夢を持って普通に子どもやってるんだと気づいて、そういう子どもたちがいるよってことを示すだけでインパクトがあるんじゃないか、今でも子どもたちは普通に暮らしているということを見せるだけですごいメッセージになるんじゃないか、と思ったんです。
一人の子供を通して見れば、想像力が及んでない人でも何か変わるんじゃないか、そんなふうに思いました。
そんな「普通の」子どもたちの映像を幾つか紹介しましょう。
・おばあちゃんのノブちゃんの畑に何も植えられなくなったのが悲しい南相馬のぞみちゃんとさくらちゃん
・震災で卒業式が1か月遅れだった小学校の大好きな先生みたいになりたい南相馬のなつきちゃん
・南相馬の馬追い会場にでかけた武将好きのトウヤくん
・被災した動物の気持ちが知りたい東松島の三人娘
一方で、取材慣れしてしまっていて「メディアがどういって欲しいかもわかってるから、それは言いたくない」という子もいました。そういう子は「自分たちが撮って、自分たちで言えることを言えるからやりたい」と言っていて、その多くは離れ離れになった友達に元気かと聞きたいと話してくれました。
そんな映像の一つがユイト君のもの、ユイトくんは遠くにいる友だちにむけて、そして最後に東京の人達に「手紙」を送っています。
最後の映像は特にそうですが、1本1本が誰かへの手紙でありながら見ている私たち一人一人に向けられた手紙でもあるのだと強く感じます。この映像が作られたのは昨年の夏、それからももうすぐ一年がたとうとしています。私たちはこの1年でこの子どもたちの想いに少しでも答えられているのか、そんなことを考えずにいられません。
堀内さんは自分が参加した理由についてこう説明してくれました。
そもそもTVの仕事をしたいと思うようになったのは、子どものときの経験でした。24時間テレビのドキュメンタリーに同じ学校の子どもが出演することになって、事前にその映像を見て討論会をやったんです。
それで放送されて、それから1ヶ月か2ヶ月後に今度はディレクターに人が参加した子どもにインタビューをしました。その時に一瞬で人の心の動きとかを見抜く面白い仕事だなぁと思ったのがきっかけでした。
今回の仕事が来たときに、それを思い出して、自分が同じようなきっかけを与えることができたらいいなと思ってやることにしたんです。「TVの人が来てあの時こういうことを教えてくれたね」って覚えておいてもらえたらいいな。
「復興は子どもたちの未来のため」とはよく言いますが、実際に被災した子どもたちが未来に希望を持てるようにするために何をしたらいいのか、それを考えるためにはまずその子どもたちの声に耳を傾ける必要がありますし、実際にそれをやっている人たちには本当に頑張ってもらいたいですね。
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