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“スポーツ×地域”で街に誇りを!都市型コミュニティをスポーツで活性化させる「ソーシャルスポーツコミュニティ」[マイプロSHOWCASE]

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昨今よく耳にする地域コミュニティの希薄化。特に都市圏では、孤独死といった問題を生み出すようになってきています。

地方よりも人が多く、モノや情報も溢れている都市圏ですが、様々な場所から集まってきた人たちで構成されているため、人間関係をイチから構築しなければなりません。小さい頃から近所でお互い顔馴染みではなく、育ってきた土壌も文化も違う人たちとイチから関係をつくる難しさ。筆者も地方から東京に出てきた身なので、肌でその難しさ、ちょっとした煩わしさを実感しています。

そんな都市圏の地域コミュニティを活性化させるべく、「スポーツ×地域」をテーマに埼玉県の川口市を舞台に活動している「ソーシャルスポーツコミュニティ」の活動に参加してきました。

「リングビー」や 「ダーカウ」をご存知?

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一見フリスビーのような形をしたカラフルなものと、ダーツのような形をしたもの。初めて見た方が大半かと思いますが、フリスビー状のものを「リングビー」、ダーツ状のものを「ダーカウ」と言います。2つともれっきとした遊具なんです。

最近では安全性の問題から、球技禁止となっている公園が多くなってきました。でも球技はコミュニケーションのキッカケづくりに大きな役割を果たしてくれます。相手のことを何も知らなくても、ただボールを蹴り合ったり、投げ合ったりするだけで、誰でも簡単に交流を図ることができるからです。

「当たっても痛くなくて、簡単な道具でいろんな人が集えるものはないか?」とソーシャルスポーツコミュティ代表の石井さんが考えていたところ、「リングビー」と「ダーカウ」に出会ったそうです。

物は試しということで、当日リングビーやダーカウをやりたいと集まった方々とともに、「リングビー」を体験してみました。

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まずリングビーを触ってみたのですが、思った以上に柔らかい!ゴムスポンジでできているので、これなら小さなお子さまの体に当たっても痛くないですね。

遊び方はさまざま。円形をしているのでフリスビーのように投げ合って、キャッチボール感覚で楽しむことができます。初めて触る遊具ですので、最初はコントロールが難しいですが慣れてくれば皆さん自分に合った投げ方を見つけて、徐々に距離をとって投げるようになりました。カッコイイ捕り方にトライし始める熟練者も!

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小さなお子さまには、リングビーを使った輪投げをすることもできます。ちょっとずつうまくなってきて、すっかり夢中になってしまったご様子。他にも皆さん自然と声を掛けあっての真剣勝負が展開された、チーム対抗リレーも行われました。

「ソーシャルスポーツコミュニティ」の多岐に渡る活動内容

「リングビー」、「ダーカウ」といった安全でシンプルな遊具を使うことは、老若男女・世代に関係なく多世代に渡ったコミュニケーションを生み、交流を図ることを可能としてくれました。

しかし「ソーシャルスポーツコミュニティ」の活動はそこだけに留まりません。他にも、「国際交流バレーボール」、「異業種交流フットサル」という活動を定期的に行なっています。活動内容に関して、「ソーシャルスポーツコミュニティ」代表の石井邦知さんにお話を伺いました。

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元々、大学では都市計画を専攻していたのですが、勉強を深めていくうちに、地域密着型スポーツに興味を持ったんです。自分自身、高校まで野球をやっていましたし、大学在籍中に野球の独立リーグや東北を拠点とした楽天ゴールデンイーグルスなどが次々に発足していた時期だったというのもあって、”スポーツ×地域”というテーマで何かできるんじゃないかと思ったんです。

“スポーツ×地域”というテーマを深掘りしていく中で、石井さんはご自身の地元である、埼玉県川口市に活動の拠点を置きます。

川口市には外国の方々が約2万人住んでいらっしゃいます。これは全国の市区町村でも6番目の数字で、お隣で全体の人口が倍近いさいたま市よりも多いんです。

外国から日本に来られた方々は言葉や文化の違いから、どうしても地域とのつながりが作りづらい。そこで男女混じって手軽に、かつ国を超えて遊べるチームスポーツってなんだろうって考えたり聞いてみたりしたところ、バレーボールがいいということで市の体育館を使って定期的に実施しています。

他にも、スポーツに関して色々調べていたところ、実は20代、30代の層が普段最もスポーツをしていないというデータを見つけたんです。仕事や他の余暇に時間を使っていることもあって、なかなかスポーツに時間を割けないっていう状況があるんだと思います。でも若い層が持っている力って地域コミュニティの中で求められていると思うんです。

そこで「異業種交流フットサル」を開催して、20代、30代の異業種間の横のつながりを作り、何か面白いことができる地盤を作れればと思ってこちらも定期的に開催しています。

このように、スポーツを使って様々な世代の交流を促し、川口市の地域コミュティを活性化していこうと奮闘されている石井さん。さぞかし川口市に愛着があるのだろうと思い尋ねてみたところ、返ってきた答えは意外な言葉でした。

「正直、川口市で活動をやろうとは全く思っていなかった」

川口市を活動の拠点にしたのは、たまたまです。”スポーツ×地域”というテーマで何かしらやろうと思った時、とりあえず誰と決めず色々な方にお話を伺おうと思って、自分の持っている繋がりを使い80人ほどの方にヒアリングをさせていただきました。

そうしているうちに、埼玉県が総合型地域スポーツクラブをもっと広めていきたい、という話を耳にしたんです。そこでようやく地元に目を向け、川口でやってみようかと思い到りました。

言い方は良くないんですが、地元に愛着をあまり感じていなかったというところもあり、すぐ目を向けられなかったんだと思います。

地方の歴史ある街並みや伝統産業、文化があるならまだしも、川口市は東京のベッドタウン。その名の通り、川口で寝起きして東京で働くという人々が多い街です。他の都市の人々を魅了する何かがあるわけではない。ただ、川口で何かやろうと思い立ったからにはとにかく動こうと思い、商工会議所に飛び込み営業することから始めました(笑)。

飛び込みで始まった石井さんの活動。手探りの中、日々動きまわる石井さんを待ち構えていたのは、活動のサポートをしていただける人たちとの数々の出会いでした。

活動のチラシや名刺、ウェブサイトを作っていただいたデザイナーの方(しかも無料で!)。スポーツビジネスに興味があったり活動に共感し、場の進行を手伝っていただいた方。開催する場にいつも参加してもらい、次の開催時には知り合いを連れてきていただいた方。そんな方々との偶然の出会いにより、手探りだった活動が少しずつ形になってきた、と石井さんは言います。

たまたま選んだ場所で、偶然出会った方々にいろいろサポートしていただいて、人との繋がりって本当に大切なんだなと実感しました。交流会をやった時も、私はとにかく新しい人を増やさなきゃと思って色々宣伝に回っていたんです。

でもチラシを作っていただいたデザイナーの方に「参加していただいた人をもっと大切にして、リピーターを増やして行かないと」と忠告していただきました。一回一回の偶然の出会いを大切にすれば、思いもしない出会いへと広がっていく。そのことに気づかせてもらったんです。

地域に拠り所があるかないかで、人生の豊かさは変わってくる

都市圏で希薄化しつつある地域コミュニティでも、誰かが動けばそれに賛同してくれる方々との出会いが何かしら待っている。そんな出会いを大切にすること以外で、活動する中で常に意識していることは「継続的な発信」と石井さんは答えます。

インターネットが発達し浸透した現在、ブログやtwitter、FacebookといったSNSツールの他に、動画などでも自らの活動を容易に発信できることが可能になりました。あとは自分がやるか、やらないか。

「最近、そのデザイナーにけしかけられて、訳も分からずポッドキャスティング(インターネットラジオ)も始めたんですよ」と言って笑う石井さんの究極の目標は、「誇り」、「拠り所」というキーワードに集約されています。

スポーツを通じて、川口市に何か新しい特徴をつくりたいという想いがあります。特産物や他の都市の人々を魅了するモノが分からなかったり、無かったりするのであれば作っていこうと思うんです。

別にそれは形のあるモノでなくても、オリジナルなスポーツイベントみたいな催し物でもいい。そして、そのイベントを拠り所にして、地域に「誇り」を産み出していきたい。

活動していく中で感じたんですけど、拠り所があるかないかで、人生の豊かさって変わってくるんじゃないかと思うんです。拠り所を作り、その場にいる人たちと一緒に活動したり、助けあったり。そして、またその輪が広がって「誇り」を産みだす何かを作り出すことができれば、こんなに最高なことはないと思うんです。

様々な人が「拠り所」と思える場所を作るため、そして誇りを作るため、日々収支とにらめっこしながら活動を今後も継続していこうと思います。

スポーツが秘めるさまざまな可能性を見せてくれる「ソーシャルスポーツコミュニティ」の活動。スポーツによるまちづくり、あなたの街でもいかがでしょうか?

(Text:和保皓介)

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