社会的な問題を解決しようとするときに、よく使われる言葉があります。それは「自分ごと化」。言葉にするのは簡単ですが、実際に社会的な問題を自分のこととして考えさせるのは並大抵のことではありません。
イスラエルの映画館で実施された広告は、その難しさを乗り越えるアイデアがあるものでした。
シネコンで数ある映画の中から、自分が観たいと思った映画を選び、席についた人たち。待ちに待った映画が始まったそのとき、観客はどよめき始めます。どうも、自分が選んだのとは違う映画が始まるのです。人びとは混乱し始めます。
「あれ、この映画何?」「ちがうスクリーンのところに入ったのかな?」「おいおい、映画館の人、フィルムを間違えてるよ!」戸惑い、席を立つ人が出てきたころ、スクリーンには大きな文字のタイトルが表示され、ナレーションが流れます。
「映画館は混乱していません。あなたが選んだ映画を観られます。私たちはただ、みなさんに体験して欲しいと思ったのです。イスラエルに10万人もいるアルツハイマー患者の方が感じる混乱と認知障害というものを。」
これはアルツハイマーの患者さんを支える団体の広告です。意図がわかった観客はホッとしながら、衝撃を受けます。痴呆って、大変だなと。映画館にいるとき、人はスクリーンに向かって心を開いている、無防備な状態にあります。そんなときに届けられる、意表を突いたアプローチの広告。これは、人ごとにはできないですね。
映像で訴える広告にはこんなものも。