2012年1月、米格付け会社「スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)」による国債の長期信用格付けが、最上位の「AAA(トリプルA)」から1段階格下げとなった、フランス。欧州の債務危機がますます深刻化し、これによって、フランス国内の先行きも不透明な中、なんと、債務者の借金を”帳消し”にするという、太っ腹な銀行が現れました。
「Crédit Municipal de Paris」は今から375年も前の1637年、日本では江戸時代初期のころに、医者でジャーナリストのテオフラスト・ルノードー氏(Théophraste Renaudot)によって創設された、低所得者を対象とするフランスの銀行です。
当時、利息は130%にのぼり、わずかな借金があっという間に膨れ上がる結果、本来資金を必要とする人々に、お金が融通されない、という課題が…。そこで、この銀行では、鍋やフライパン、シーツ、マットレスなど、低所得者が所有するわずかな物を担保に、年率10%程度の利息で、融資を行ってきました。日本でいえば、江戸時代の初期から続く、低所得者向けの“質屋さん”というわけです。
さて、このように長年フランスの低所得者の資金をサポートしてきた「Crédit Municipal de Paris」は、創設375周年を記念し、画期的な試みを実施。150ユーロ(約15,000円)以下の債務者に対し、債務を帳消しにするという特別措置を決定しました。合わせて3,500名の利用者が、この恩恵を受けることになるのだそうです。
フランスの経済情勢は、必ずしも楽観視できないのも事実。2011年、約1.75%を記録した経済成長率は、「2012年、1%未満となる」との予測もあり、失業率は9.8%と依然として高い水準です。このような厳しい経済情勢の影響からか、「Crédit Municipal de Paris」では利用者が29%増加(2011年12月前年同月比)。毎日、およそ700名の利用者が、ジュエリーケースや手紙など、それぞれにとって手放しがたい”宝物”を片手に、融資を求めてやってきています。
375年もの間、様々な波を乗り越えてきたフランスを下支えし続けてきた”質屋さん”なら、2010年代、フランスが直面している、前例のない厳しい状況においても、セーフティネットとして機能してくれるはず。また、彼らの取り組みは、日本をはじめ、経済格差や貧困問題が深刻な社会問題となりつつある他の国々においても、学ぶべき点がありそうです。
[ via GOOD]
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