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大人も子どもも、みんなに開かれたデザインの広場が登場!「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2011」に見る、デザインの可能性 [イベントレポート]

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この秋開催された「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH 2011」、みなさんは会場に行きましたか? 毎年、「TOKYO DESIGNERS WEEK」「DESIGNTIDE TOKYO」と同時期に開催されるこのイベント、今までのデザインイベントにはない新たな試みが行われたようです。

芝生広場に登場した「DESIGN TOUCH Park」のコンセプトは「子どもから大人までみんなに開かれたデザインの広場」。イベント当日の様子を、たくさんの写真と共にお届けします。



「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH」とは?

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Tokyo Midtown DESIGN TOUCH」は、「デザインを五感で楽しむ」をコンセプトに、2007年より東京ミッドタウンで開催されているデザインイベント。今年は体験型のデザイン・ワークショップをメインに据えた「DESIGN TOUCH Park」が登場しました。

広大な東京ミッドタウンの芝生広場にずらりと並んだのは、23組のデザイナーによるワークショップのテント。そして、みんなで作った風車でできた「希望の虹」です。会場内では、一生懸命にワークショップに取り組む親子の姿が見られました。

「江戸の「もんきりあそび」で遊ぶ 日本のかたち」by エクスプランテ

「江戸の「もんきりあそび」で遊ぶ 日本のかたち」by エクスプランテ

[「おでかけネクタイをつくろう」by birdo flugas
「めをつむって絵をかいて、 ちいさい本をつくろう」 by 尾柳佳枝

「めをつむって絵をかいて、 ちいさい本をつくろう」 by 尾柳佳枝

「似顔絵屋永晶(似顔絵ぬり絵)」by アザイコミュニケーションズ

「似顔絵屋永晶(似顔絵ぬり絵)」by アザイコミュニケーションズ

「秋の森ワークショップ」by トビムシ+つみき設計施工社

「秋の森ワークショップ」by トビムシ+つみき設計施工社

これまでの展示会のようなデザインイベントとは、全く違う光景ですよね。会場内は子どもたちの笑顔で溢れ、風車を手にして芝生を走り回る姿も。東京のど真ん中に、こんなにもピースフルな空間ができあがっていたのです。


「デザインをみんなのものに」酒井博基さんインタビュー

デザインに関心のある人が集まり、主にビジネスを目的としたこれまでのデザインイベントとは、形態も参加者も全く異なる「DESIGN TOUCH Park」。いったいどんな趣旨で企画されたものなのでしょうか? 主催の東京ミッドタウンとともに、企画・制作を担当した株式会社リライトの酒井博基さんにお話を聞きました。

酒井博基さん

これまでのデザインイベントは、デザインに興味のある人以外には敷居が高く、子どもたちが楽しめるコンテンツはありませんでした。それに、「見る人」と「創る人」に隔たりがあった。でも、デザインは本来みんなのものなので、大人から子どもまで誰もが参加できるデザインイベントにしたかったんです。

そこで、子どもにも親しみやすいデザインを大切にし、ワークショップをメインに据えた参加型のデザインイベントを企画しました。東京ミッドタウンは緑豊かなオープンスペースが大きな魅力のひとつ。青空の下で「子どもから大人までみんなに開かれたデザインの広場」を企画コンセプトにしたんです。

まるでデザインの遊園地のような会場

まるでデザインの遊園地のような会場

「ガリバーテーブル」にデザイン関係者も注目

酒井さんが思い描いた通り、会場にはたくさんの親子連れやカップル、老夫婦など、様々な人が来場しました。しかし、そうなってしまうとこれまでの主要客だったデザイン関係者は見込めないのでは、と思ってしまいますが、実はそこも補う仕掛けがありました。

芝生広場にみんなが集まれる全長50メートルの巨大な「ガリバーテーブル」を配置しました。これは、今注目を集めているトラフ建築設計事務所が担当してくれたのですが、機能だけじゃなく、デザインとしても評価が高く、デザイン関係者はこれを目当てに来場された方も多かったようです。斜面に建っているので高さが変わり、一方ではワークショップ用のテーブルに、もう一方はジャングルジムのようになっていて。みんなが集まる、このイベントのシンボルのような存在になりました。

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ガリバーテーブルで遊ぶ子どもたち

まるでジャングルジム?子どもたちも楽しそう。

ワークショップで「つくるを楽しむ」を体験

デザインイベントとしてのクオリティを担保しつつ、これまで足を運ばなかった人々も巻き込むイベントへ。それを実現させたのが、予約なしでその場で参加できるスタイルの、ワークショップの数々です。「DESIGN TOUCH Park」で行われたワークショップには、会期中、約8,000組もの人々が参加しました。

ワークショップで、「つくるを楽しむ」ことを体験してもらいたいと思いました。「つくる」を体験することは、モノの見方や考え方を広げてくれます。体験を通じて、「できない」と思っていたことが「できる」に変わり、自分を好きになることもあると思うんです。「つくる」には正解はありませんので。

それに、出展しているデザイナーも、使う側の人々とのコミュニケーションやつながりを求めていたんですよね。早くも「来年も参加したい」「来年こそは参加したい」という声が多数届いています。

デザイナーにとってもコミュニケーションの機会に

デザイナーにとってもコミュニケーションの機会に

後日、酒井さんの元には、知的障害者の子どもを持つお母さんから「どうしてもお礼を伝えたい」というメールが届いたそうです。参加をためらっていたその子が思いきってワークショップを体験したら、とても楽しんでいた、と。このメールは、「つくるを楽しむ」がみんなに対して開かれていたことを物語ってくれています。

イベントを通して生まれた新たな「つながり」と「可能性」

参加者とのつながりを意識して企画したこのイベントですが、終了後、新たな「つながり」も生まれました。石巻で復興活動をしている建築家の方から「ガリバーテーブルを使いたい」との声がかかり、解体後、寄付することになったのです。今後、以前greenz.jpでも紹介した復興プロジェクト『石巻2.0』の「石巻工房」で建築材として使われる予定となっています。

また、「希望の虹」の風車には復興への思いがたくさん書き込まれ、「これを被災地の人に見せてあげることはできないか」という声もあったそうです。

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酒井さんは、このような形で生まれたつながりに、デザインの新たな可能性を感じているようです。

デザインは、表層的なテクニックと誤解されがちですが、本来人を豊かにするもので、震災後、デザイナーたちも「本当に自分のつくったものが人を幸せにしているのか?」という原点に立ち返って考えた人たちが多かったと思います。今回のイベントは、「本当の豊かさって何だろう?」という問いを、デザインに関わる人々に投げかけ、デザインの持つ新たな可能性について一歩踏み込んで考えるいい機会になったのでは、と思っています。

未来だってつくれる!「つくる」をもっと日常に

「DESIGN TOUCH Park」のテーマとして掲げた「つくるを楽しむ」こと。今後、酒井さんはこんな構想も抱いています。

このイベントを通じて、「つくる」行為が介入することで親子のコミュニケーションがこんなにも変わるんだ、ということに気付きました。正解がなく、一緒に正解を作り出す行為なので、マル、バツではない会話が生まれるんですよね。これは、僕自身が自分の子どもとの会話で感じたことでもあります。

今後は、イベントでこのような場を提供すること以外に、日常でも「つくる」を提供するために、家でできるワークショッププログラムの開発をしていきたいと思っています。Wikiのようにみんなが投稿・編集できるようなプラットフォームにしたい。

みんなが「つくるを楽しむ」社会になったら、きっと未来だって自分たちでつくり出せるんだと思います。

デザインイベントの常識を変えた「DESIGN TOUCH Park」。その体験が日常に溶け込みコミュニケーションの形を変え、人々の意識を変えたとき、デザインが生み出す本当の価値が見えて来るのかもしれません。

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