企業だって、社会の一員。近年、より多くの企業では、利益追求だけでなく、事業活動が社会へ与える影響に責任を持ち、積極的かつ主体的に社会貢献や情報公開などに取り組む「CSR(企業の社会的責任・corporate social responsibility)」を、重要なものと捉えはじめているようです。
CSRの概念そのものは、それほど新しいものではありません。すでに、1980年代から1990年代初頭、一部の企業では、多様な人材の活用、地域や政府などへの情報公開、コーズマーケティングなど、人事・広報・マーケティングなどの各部門で、CSRの取り組みが行われていました。
ただし、経営陣がこれらに直接関与するケースはあまりなく、全体的なCSR戦略の策定や、部門横断型の全社的な展開、企業のミッションやブランドとCSRとの連動といった、企業全体としての取り組みには至っていなかったのも事実です。
しかし、近年、この流れが変わりつつあります。CSRに関心を持つCEOが増え、企業のミッションやブランド向上のために、CSRを積極的に活用する兆しが現れはじめているのです。米メディア「FAST COMPANY」によると、最近のCSRの傾向として、とくに、以下の4つの特徴がみられるとか。
その1: CEOのリーダーシップ
CSR部門は、取締役会直下に組織され、経営陣のリーダーシップのもとに運営されるケースが増えてきたそう。企業にとって、社会的・経済的・環境的な進歩に積極的に関与することは、新しいビジネスチャンスにもつながるものだと捉えられているのです。
その2: 消費者の関心の高まり
Cone社の「2010 Shared Responsibility Study」によると、米国人の多くは、「企業はグローバルな課題に義務を負っている」と考え、社会的・環境的課題の解決に向けた企業の取り組みに高い期待感を示しています。
その3: CSRに対する評価・分析
「グリーンウォッシュ」のように、消費者にいいイメージを植えつけるためだけの、「ニセCSR」も、一部には存在します。そこで、企業では、第三者機関である「Global Reporting Initiative(GRI)」や「Social Accountability International(SAI)」などを利用し、自社のCSR活動を客観的に評価・分析しはじめています。これによって、CSR活動を透明化できるだけでなく、その取り組みが企業にもたらした価値を客観的に把握することができるのです。
その4: 説明責任の重要性
CEOをはじめとする経営陣の説明責任も、さらに重要性を増しています。2010年メキシコ湾原油流出事故などの苦い教訓は、「真実をタイムリーに伝える」ことの大切さを示すものです。
米ボストン大学では、社会へのインパクトや革新性、経営陣のリーダーシップといった様々な観点から、米企業のCSRランキング「2010 Corporate Social Responsibility Index」を発表。「Performance with Purpose」で知られるペプシコ(PepsiCo)や、ジョンソン・エンド・ジョンソン(Johnson & Johnson)、ウォルト・ディズニー・カンパニー(The Walt Disney Company)など、グローバルカンパニーが多くランクインしています。
CSRは、企業にとって、「果たすべき義務」にとどまらず、新しい事業の創出や新規市場の開拓など、自身の持続可能な発展にもつながること。それゆえに、企業経営において、CSRの重要性はますます高まっていくことでしょう。
[via FAST COMPANY]