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「地域×デザイナー」の未来形がここにある。デザイン都市・神戸のクリエイティブディレクターの仕事とは? #仲間募集

本記事は、もともと2018年2月27日に掲載したものを、神戸市クリエイティブディレクターの再募集にあたり、「神戸市クリエイティブディレクターのその後」以下を追記し再編集しました。(2020年1月31日)

デザインには人々をひきつけ、心を動かす力があります。

神戸では1995年の「阪神・淡路大震災」からの復興の過程で、神戸で暮らす人や働く人が交流し、そこから生まれたクリエイティブなアイデアや工夫で、新しいまちをつくってきました。私には、豊かな感性や創造を生かすデザインの力が神戸の復興を支えてきたという実感があります。

神戸市はこれまでの取り組みとそのビジョンが認められ、2008年にユネスコ創造都市ネットワークの「デザイン都市」に認定されました。その後、神戸市役所の中に創造都市推進部が設置され、さまざまな取り組みが生まれています。

以前greenz.jpで取り上げた「デザイン・クリエイティブセンター神戸(通称KIITO)」で2年に一度開催される、子どもたちとクリエイターがいっしょに夢のまちをつくる体験型プログラム「ちびっこうべ」もデザインでつくる神戸のまちの魅力のひとつです。

「デザイン都市・神戸」では、まち、くらし、ものづくりの三本柱で神戸市の魅力を高めるデザインに取り組んでいます。

さまざまな事業に取り組む中で、神戸市としてよりデザインの視点で事業に取り組めるようにと、職員と一緒に働くクリエイティブディレクターの募集がはじまりました

現在、神戸市には2名のクリエイティブディレクターがいます。今回は、1人目の任期満了に伴い、新たに1名のクリエイティブディレクターを募集することに。



デザインの視点を踏まえ、景観、産業振興、子育て、福祉など、これまでさまざまな行政課題の解決に取り組んできた神戸市クリエイティブディレクターの山阪佳彦さん天宅正さんと、創造都市推進部で働く職員の尾崎有輝さんにお話を聞きました。

山阪佳彦(やまさか・よしひこ)
1961年大阪市生まれ。MAQ inc.専務取締役 東京本部長。コピーライターとしてTCC新人賞、広告電通賞、朝日広告賞ほか多数受賞。
天宅正(てんたく・まさし)
1978年神戸市生まれ。アートディレクター、グラフィックデザイナーとして、東京アートディレクターズクラブ賞、日本グラフィックデザイナー協会新人賞、グッドデザイン賞など受賞多数。
尾崎有輝(おざき・ゆうき)
1984年生まれ。神戸市企画調整局創造都市推進部 デザイン都市推進担当係長。神戸発、町の写真とトークでシノギを削る大喜利地域抗争「ちいきいと」も担当。

神戸市クリエイティブディレクターとはどんな仕事か?

山阪さんはグリーンズでも取り上げた、ゴミ置き場をアートにするプロジェクト「GARBAGE BAG ART WORK」や、任意団体「パープルアイズ」の理事としてDVの問題を広く世間に啓発する活動などに取り組み、社会課題にアプローチする手段としてデザインが有効であるという実践経験を積んでこられました。

山阪さん 神戸市が行政としてクリエイティブディレクターを募集しているということに興味を持ちました。役所がやっている公共的な仕事は、言い換えればすべてソーシャルデザインじゃないだろうかと考えて。広告のデザインの仕事を30年以上やってきたので、そのノウハウを生かせると思って応募したんです。

クリエイティブディレクターの山阪さん

実際に働いてみると、山阪さんが求められる仕事は大きくわけて、各部署からの相談を受ける仕事「デザイン都市・神戸」の発信事業委託業務募集などの審査の3つが主な仕事でした。

相談内容がぎっしり詰まった、エントリーシートファイル

相談はまるで歯医者の予約のような仕組みだと表現する山阪さん。各部署の職員がエントリーシートに相談内容を書き、尾崎さんたち創造都市推進部の職員が相談主の担当者と電話で日程を調整し、山阪さん、天宅さんの空き時間に予約を入れていきます。1日に相談が3つ4つあり、多いときは朝から夜まで10件ほど30分刻みで入るときもあるとか。山阪さんは週4日、天宅さんは週3日、その依頼に取り組んでいます。

山阪さん 例えば相談を受けて、指定ゴミ袋のデザインをしました。神戸市が取り組む社会課題のひとつはゴミの減量なんです。

通常、啓発といえばチラシやウェブサイトでと決めつけていたところを、相談を受けるなかで、ゴミ袋が神戸市内で年間1億枚ほど使用されているので、これをツールにしない手はないだろうと職員自らが気づきました。そこでゴミ10%削減という目標の目盛り線を直接ゴミ袋にデザインして、課題を可視化するようにしました。こんなふうにデザインの力で社会課題に取り組んでいます。

2017年度からは7ヶ国語表記

「デザイン都市・神戸」の発信事業の業務では、地元FM局の「Kiss FM KOBE」のラジオ内で情報を発信し、月1回発行されているフリーペーパーの記事内でインタビューしてデザインの話を掲載しています。

また、山阪さんが取材に訪れたことがきっかけで、今年、神戸市水道局の「断層用鋼管」が水道管として初めてのグッドデザイン賞を獲得しました。

「阪神・淡路大震災を経験したまちとして災害に強い水道管はつくれないだろうか」と職員が考えていたときに、ふと曲がるストローを見て、こんな水道管があればと製造会社に相談。試行錯誤を重ねて、断層のズレに対応することができる水道管が完成したと言います。山阪さんはそのエピソードを聞いて、あまりピンときている様子ではなかった水道局の技術職の方に何度もグッドデザイン賞に応募するよう提案したそうです。



山阪さん 結果、グッドデザイン賞審査委員が選ぶお気に入りの受賞デザイン「私の選んだ一品」にも選ばれました。

デザイン都市の可視化としきりに言われていたのですが、何か突飛なことをやるよりも、普段の事業の中にデザインの視点を入れることで、デザイン都市はほかのまちとどう違うかわかりやすくなります。どの部署の職員の方にもデザインというフィルターをもってほしいなと考えています。

グッドデザイン賞を受賞した鋼管。水道管を断層のズレに対応させた

もうひとつ大事な仕事は、市役所の委託業務募集などの審査です。

ウェブサイトやポスターや広報誌などの印刷物、建築系のコンペなどさまざまな審査が年間50件近くあり、採択後も、職員と事業者の間に入って調整することがあるそうです。

「神戸市の言い分はこういうことなんですよ」と事業者にわかりやすく伝え、逆に「事業者が言う、なぜできないかというのはこういう意味です」と通訳しながら、少し落としどころを探るような、職員も事業者も働きやすい状況をつくるそうです。

天宅さん 専門家やプロのクリエイターである事業者に「これが普通ですよ」と言われてしまうと「そうなんですね」と市役所職員の方たちは思わざるをえないところを「もう少し工夫をすればレベルをあげられるかもしれないです」とか、逆に市役所の方が事業者さんに無理難題を押しつけてしまいそうなときに、「もうちょっと条件をやさしくしたほうがいいです」と、これまで似た経験を積んでいるのでアドバイスすることができます。

クリエイティブディレクターの天宅さん

特に相談案件が多く、即答能力が必要だと山阪さんは就任当初の天宅さんに伝えたと言います。



天宅さん 「笑点」じゃないですが、大喜利能力が必要と聞きました。相談によっては一瞬で終わるものもあれば、本当に時間をかけてじっくり取り組んでいかなければいけない課題もあります。僕たちに太鼓判を押してほしいという内容もあって、相談内容は千差万別ですね。

大事なミッションは、市役所職員のデザインリテラシーをあげること

3つの主な仕事以外にも、市役所で働く職員に対して広報研修も行っています。

山阪さんは就任当初、世の中のいい事例を職員に参考として見せても、あまり自分ごとにしづらいということが話しながらわかったので、市役所で使われているチラシやポスターの実物を使って、「フォントサイズや写真のトリミングなどを変えるだけで見やすくなる」と、比較して見せるようにしたそうです。



山阪さん 僕は職員のデザインリテラシーをあげることができますとプレゼンして、クリエイティブディレクターに採用いただいたんです。

基本、今もその考え方で取り組んでいて、僕らがこんな事業をやったらいいよと提案するだけではなく、なぜそうするのかも丁寧に説明して、デザインの力についての理解やデザインの使い方を身につけてもらうよう心がけています。職員自らが課題に気づき、自発的に新しい事業やサービスを考えられるように、これまでになかったような方法を試してもらっています。

そのため、山阪さんは課題発見方法を見つける問いかけやワークショップを重ねてきたと言います。職員の方は優秀な人が多く、課題に気づいた人はあっという間にわかるというメリットがあるそうです。

山阪さん 自分の所属する部局で課題だと言われていたことを「本当にそれが課題なのか」と考える時間がなかっただけで、考える時間をつくってあげるだけで良い答えが出ると思っています。

尾崎さん 山阪さんがわかりやすく図式やパワーポイント資料にして教えてくれたので、チラシなどをつくる前に、本当にこれが必要かと一度じっくり考えて取り組んでみようとする職員は少しずつ増えてきたという印象があります。

神戸市職員の尾崎さん

行政組織内で2〜3年で人事異動があっても、デザイン思考を持った職員が庁内に分散していき、その影響が浸透していけばと山阪さんは考えています。

もうひとつの課題は市役所が縦割りであるために、自分の所属する局内だけで解決しようとする傾向があることだと山阪さんは語ります。

山阪さん 例えば自殺者が多いという課題があれば、心の問題だから福祉系の部署で考えようと焦点をしぼりがちですが、鉄道の駅にホームドアをつけるなどの解決方法もあります。自殺者を減らすという課題自体は縦割りではないので、違う部局の職員と組むことで、もっと違う糸口を探ることもできるし、もっと言えば民間や学生の力を借りるなど、さまざまな解決方法を考えられます。

特に山阪さんの所属する企画調整局は、何かの事業をやっているというよりも、全庁にわたって企画したり調整したりする部署であり、全庁の情報を集めなくてはならないという意味で、クリエイティブディレクター職というものがあったほうがさまざまな情報が集まるメリットがあると言います。

1万5千人ほど職員がいる大きな組織のため、新聞に掲載されて初めて知ったという話もたくさんあるそうです。そういったことをできるだけ事前にキャッチしておきたいと山阪さんたちは考えていると言います。

山阪さんがWordでデザインした、市役所の簡易プリンターでも出力できる名刺。他の部署の名刺と並べても、つながるデザイン

山阪さん さまざまな部局からいろいろな課題を受けているので、この局がこの課題をもっていたからいっしょにやりませんか、とつなげていけるのもやりがいだと思っています。

この話の流れで山阪さんが思い出したと語るのが、「僕らがやっている仕事ってクリエイティブディレクターですか?」という、天宅さんが山阪さんに聞いた最初の一言です。

天宅さん 広告で言うクリエイティブディレクションとはちょっと違うと感じました。

さきほど山阪さんが言葉にした、職員の方に気づきを与える仕事というのが近いかな。気づいている方もたくさんいますが、役所だからできないと思っていたり、自分の部局ではできないと思っていたりする方に「やったらええやん! 面白いやん!」というだけで元気になる人もいます。

デザインの力で解決をするでもなく、何万人が振り向く広報の提案をするでもなくて、職員の人たちがやる気をもって「これでいける!」と思えるように背中を押す仕事やなと思いますね。

山阪さん そうそう。課題に気づいている職員を増やしていく、デザインによる成功体験を増やすのが目的です。1回でも成功体験した職員は、またやってみようと思うので。

山阪さんが先に2年間携わり、すでに成功体験をしている職員がいるのでやりやすいと天宅さんは言います。ただ、まったく相談に来ない職員にどうやってリーチしていくのかが別の課題だと山阪さんは付け加えます。

すべての取り組みの中にデザインの視点を入れていく、神戸市の2020年ビジョン。

今、2020年ビジョンという神戸市の大きなビジョンがあり、すべての取り組みの中にデザインの視点を入れていきましょうと掲げられています。

とはいえ、デザインの視点を入れるとは、どうすればいいかわからない職員の方も多いので、日々の相談の中で「こういうことができます」とか「こういう考え方をされたらどうでしょうか」と向こうから答えを引き出すようなことを仕掛けていきながら、山阪さんたちは日々相談に応じているそうです。

尾崎さんは、相談件数が増加し、一つひとつの案件にかけられる時間が少なくなる反面、企画段階から関わって、丁寧に取り組んでいくべき課題が増えてきたため、2人目のクリエイティブディレクターを募集することになったと言います。

天宅さんが2人目の募集に手を挙げたのは、10年働いた広告制作会社をちょうど退職した1年後で、退職する少し前の時期に、地方の方との仕事に面白さを見出した頃だったそうです。

天宅さん 北海道の2000人ぐらいの人口の町役場でつくられている焼酎のパッケージデザインの仕事がありました。日本では珍しく、役所が醸造所を持ってお酒をつくっているんです。

単純に売り上げを伸ばそうということではなくて、まちのために焼酎をつくって特産品にし、自分のまちを売っていこうという背景がありました。依頼主は役所の方です。役所の方を説得するために、まず町民の方を説得するということを、小さなまちだからこそできて、そういう関わり方って楽しいなと思いました。

それまでのデザインはどこかのクライアントが喜ぶためにものを売り、宣伝するためのデザインが多かったと言います。それとは真逆のアプローチをしたことで、天宅さんはデザインの力の奥行きや可能性を感じたそうです。

その後、秋田や新潟、長野など、地方の仕事に携わり、神戸市出身ということもあって、神戸市のクリエイティブディレクターに挑戦したのだとか。数ある応募者の中で、なぜ天宅さんが選ばれたのでしょうか。

山阪さん 「私はこういうことが実現できます」と個人の持っているアイデアを提案された方が多かったのですが、その中で天宅は「私はずっとデザインの仕事をしてきて、デザインの力でいろいろなものを成し遂げてきました。デザインの力は行政の仕事に役立てられると思います」というシンプルなプレゼンだったんです。

どんな課題であろうが、私なりにデザインの力で何か答えを出すことができますよ、というのは私たちに響きましたね。

まずヒアリングして人と会うところからはじめたいという言葉が、すごく真っ当で正直で、信用できると感じたと山阪さんはその当時を振り返ります。

「この人となら一緒に仕事していきたい、という選び方をするという意味では、普通の面接と同じです」と言葉を付け加えました。「最初はわからないことが多かったので、山阪さんにどういうふうに働くのか聞きまくっていた」と天宅さんは言います。

山阪さんは当初、天宅さんが年齢的にひとまわり以上違うため、天宅さんにどこまで仕事を任せるか、少し悩んでいたと言います。しかし、3年の任期満了で退職したときに、天宅さんが困ることになるだろうと考えて、ふたりは同列に働いてきたと言います。

天宅さん キャリアも違うし、年齢も違うので、山阪さんとまるで同じことができるとは思っていないです。僕より年上で山阪さんと年齢が近い職員の方は、山阪さんの言葉のほうがしっくりくると思います。

でもそれが僕にとってネガティブなことだと思わなくていいような船頭を山阪さんがしてくれたので、自分の経験を客観的に役所の方に伝えるような9ヶ月を過ごし、山阪さんからさまざまなことを学ばせてもらいました。

山阪さん 次は天宅と僕が選考委員で、キャリアや人柄を見ますけれど、天宅がいっしょに仕事しやすい人という視点も大事だと思っています。

天宅さん スペシャリストよりもゼネラリストで、僕とは違う経験をしている人が良いですね。

もちろんその場その場でいろいろな判断が必要なので、ディレクション経験が豊富なプロフェッショナルな方で、市民のためになる、職員がやりたいことをひきだせる人がいいです。良いものをつくる経験をしている人であれば、やったことがないことでも、「それいいと思う!」という話ができると思います。

クリエイティブディレクターに相談した職員の方たちが、ふたりに触発されて生き生きと働いている姿が容易に想像できるインタビューとなりました。ちなみにお住まいはどちらでもオッケーで、おふたりとも東京から通われています。

この記事を読んで、少しでも自分のスキルが生かせるのではと感じた方は、彼らといっしょに神戸市の課題に取り組んでみませんか。

(写真: 都甲ユウタ)

神戸市クリエイティブディレクターのその後

以上の募集記事から2年の月日が経ちました。今回は天宅正さんの任期満了にあたって、振り返りとこれからのあり方について、2018年度の募集でクリエイティブディレクターに就任された平野拓也さんと、企画調整局産学連携ラボで働く職員の吉田晴香さんを交え、詳しくお聞きしました。

天宅正(てんたく・まさし)
1978年神戸市生まれ。アートディレクター、グラフィックデザイナー。天体 合同会社代表。桑沢デザイン研究所・天宅正ゼミ担任。

平野拓也(ひらの・たくや)
1987年茨城県生まれ。神戸市在住。アートディレクター、グラフィックデザイナー。「平野拓也デザイン事務所」主宰。

吉田晴香(よしだ・はるか)
1985年生まれ。神戸市企画調整局産学連携ラボ創造都市担当係長。グッドデザイン神戸展の企画・運営など、のデザイン都市の推進に取り組む。

もっと行政の仕組みやプロセスを職員といっしょに考えたい。

3人目のクリエイティブディレクターを募集していた頃、平野さんは山形県在住で、募集要項をFacebookで掲載されていた知り合いの投稿を見て応募したといいます。

平野さん もともといくつかの県や市などの地方自治体の事業でデザイン開発に携わっていたんです。でも仕事を受けて納品して終了することが多く、もっとじっくりと仕組みやプロセスをいっしょに考えることがしたかったので、神戸市の募集を見て検討しました。

クリエイティブディレクターの平野さん。

天宅さんは面接を振り返り、平野さんのこれまでの実績も評価した上で、「面接前から神戸に何日間か宿泊し、知り合いをつくってリサーチがてらに散策していた話を聞いて、その感覚が素敵だなぁと感じた」そうです。

その後、平野さんは神戸に移住し、神戸市のクリエイティブディレクターとして初期から携わっていたのは、こども家庭局の「里親の認知度向上・登録件数増加」というミッション。

クリエイティブディレクターの天宅さん。

天宅さん そもそも、複雑な里親制度を多くの方に正確に認知してもらうのは難しい。という課題をチームの中で共有しました。センシティブなテーマである里親制度を扱うにあたって、これまではどうしても伝え方が硬くなり、制度自体に初めて気づくきっかけづくりが狭まっている印象がありました。

ホクホクなサトーさん家族。

平野さん その現状を打ち破るために、時にはチャレンジしてみてもいいのでは? と考え、『ホクホクなサトーさん家族』というキャラクターをチームで構想し、うちわや特設ブースを使ったキャンペーンを行いました。もしかすると批判があるかもしれないと感じたものの、担当する職員が「試せることは試したい」と考える意欲的なメンバーだったので挑戦できました。

結果、施策した月は神戸市役所の該当ページの検索件数は3倍ほどに上昇したそうです。

天宅さん 里親制度以外にも神戸市役所内で扱われるデリケートな事業には、まだ着手できていない余白がいっぱいあるので、そういう部分に着手できることにとってもやりがいを感じます。

職員のデザインリテラシーをあげるだけでなく、市民にデザインを知ってもらう機会が増えた。

天宅さんは2017年の就任当初と比べ、職員のデザインリテラシーを上げるだけでなく、市民にもデザインに触れてもらう機会が増えてきたといいます。

天宅さん 『デザイン都市っていうけど、何が変わったん?』と言われることもあり、市民の方にわかってもらえるようなイベントや展覧会を職員の方々と一緒になって企画、開催し、広がりをもった活動をしてきました。

職員や市民などを対象に開催しているワークショップ。「かたちのないものもデザインって言うんですね」と市民の方にデザインの解釈を味わってもらえる機会となった。

ひとつの相談案件から学生や事業者、市民の方とつながっていく案件の例として、平野さんがプログラムディレクターとして関わる「KOBE”にさんがろく”PROJECTのノーギョ・ギョギョ・ギョギョー ラボラトリーズ」があります。

クリエイターと学生チームをマッチングして、幅広い視点でクリエイティブな活動を行うプロジェクト「ノーギョ・ギョギョ・ギョギョー ラボラトリーズ」

平野さん 経済観光局農政部農水産課が8年ぐらい続けているプロジェクトで、神戸の専門学校や大学などの学生さんに対して、神戸の農漁業に関心をもってもらいたいという取り組みなんです。

毎年参加者は多いものの、問題点として、農家さんや漁師さんはいい人ばかりな分、つきあってくれるんですが、朝から晩まで仕事をされている中でプロジェクトを今の体制で続けるのはしんどいという声がありました。また一方学生さんたちもたくさん集まるのですが、例えば先生からオススメされて参加するので、能動・自発的じゃなく続かない人も結構いる、という側面がありました。

その状況を受けてプロジェクトを方向転換し、農家さんや漁師さんの負担を減らすために、8名の全国で活躍するクリエイターにハブとなってもらい、学生数人とチームを組んでもらう小規模なプロジェクトに変更したといいます。

平野さん 最初に学生さんに主に農漁業に関する興味関心のレポートを書いてもらい、やりたい意思を確認しました。またチーム分けもこちらが適当に振り分けるのではなく、自己紹介やプレゼンを丹念にしてマッチングをしました。結果、最後までほとんどの学生が走りきれそうです。

2月中旬に半年以上かけて各チームで取り組んだことの報告会をしてもらうんですが、せっかくやるんだったら農漁業を知る、考えられる、楽しめる1日にしようと、マルシェやワークショップも準備しています。そういった運営進行や企画を農水産課の担当さんたちといっしょに考えています。

天宅さん そういう意味では以前ほど相談案件の数をたくさんこなしていくというよりも、ひとつひとつを丁寧にやる案件が増えました。結果、市民の方とつながっていく機会が増えていきましたね。

じっくり5年間相談を受けてきたことで、見えてきた課題。

年間200件の相談案件があり、全課長800人以上を対象にした研修を年間通じて行うなど、規模が大きい案件も増えてきたと天宅さんはいいます。

天宅さん 初代の山阪さんから数えて5年ぐらい相談を受けてやっていくと、課題があることが事前に予測できるようになってきました。例えば建設局だと自転車放置の看板だとか、すでにある課題をお題にして研修するようにしています。そうすれば建設局の人にもわかりやすいし、自分ごととしてとらえてもらいやすい。

そこで必ず答えが出るわけではないのですが、みんなで看板を使ってどうやったら自分たちの課題を解決していけるかなあと意見を出し合うんです。その過程でデザインを伝えていくというやり方にしていて、多くの人に伝える研修の場合はそういうやり方にしていますね。

2019年春から、より多くの職員の方に出会うべく開催された「クリエイティブディレクターと相席ランチをしよう!」という試み。

平野さん デザインリテラシーを高めるワークショップやアドバイスだけでは伝わりづらいので、ビフォーアフターを見せて、こんなに変わったとパッと見てわかるものを見せるようにしています。相談を受けてこうしたらどうかじゃなくて、ゆくゆくはその担当者が次年度以降のプロジェクトで本領発揮できる部分が増えていくようにしたいですね。

デザイン思考の浸透は、漢方薬のよう。

企業誘致する部署から2019年4月に企画調整局産学連携ラボに異動した吉田さんは、神戸市主催のトークイベントで、2018年度グッドデザイン賞大賞を受賞した「おてらおやつクラブ」さんの活動を聞き、「デザインって思っていたよりも広い意味なんだ!」と感じたそうです。

吉田さん お寺のお供え物を恵まれない子どもに寄付する仕組みなんですが、デザイナーではなくお坊さんが考えられたのを知って、私たち職員こそ仕組みを考えることもできる立場であるし、そうした発想を持てる職員が増えれば、神戸市はすごくよいまちになっていくと感じました。

神戸市役所職員の吉田さん。

天宅さん うんうん、そう気づける職員が増えるのは神戸市にとってデカいですよ。

吉田さん自身、それぞれの部署の相談を受けていく中で、クリエイティブディレクターがいることで、色・モノ・かたちだけでない仕組みも含めたデザインとして、これまでと違った着眼点の相談が増えてきたという実感があるといいます。

しかし任期まであと数ヶ月の天宅さんは、就任した頃はもっと多くの職員の方と出会えると思っていたと言います。

天宅さん 3年ではぜんぜん出会えなかったという実感です。職員が1万5000人以上もいるというのもありますが、一回でも私や平野と話ししてくれた人が増えて、その人が異動先でクリエイティブディレクターの活用を伝えてくれれば広がっていくと思っています。初代の山阪さんとはよく「私たちの役割は漢方薬みたいやなぁ」と話していました。すぐに効き目はないけれど、じわじわと効いてくる(笑)

時間などの制約があり、多くの職員と出会えない現状をふまえて、これからは課題が見えてきた部分やプロジェクトのビフォーアフターなど自分たちがやってきたことをアーカイブして可視化し、共有することで、自分の頭で考えて能動的に行動するきっかけや、もっと職員にデザインを伝える機会を増やしていきたいと語っていました。

そんな天宅さんの想いを引き継ぐ新たなクリエイティブディレクターを、いま神戸市では募集中です。

平野さんは自分自身、神戸に来る前はクリエイティブディレクターと呼ばれる仕事はしたことがなかったそう。それでも、神戸市のクリエイティブディレクターとして能力を発揮しています。「新たに仲間になる方も、クリエイティブディレクションの経験がなくとも、自分のやってきたデザインに対してしっかりと専門性をもってやってきたと語れる人に来てもらいたい」と言います。

これを読んで少しでもピンときた方は、彼らといっしょにまちの魅力をアップデートできる仕事に取り組んでみませんか。

神戸市クリエイティブディレクター求人

募集要項の確認やエントリーは、下記WEBページからお願いいたします。

申込締切:2020年2月10日(月)※募集は終了しました。

詳細&募集ページ

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