「絵本カーニバル」。この名前を聞いて、あなたは何を想像しますか?
絵本がいっぱい売ってる子ども祭り?
絵本の世界に迷いこんだような催し物?
いえいえ。「絵本カーニバル」は、絵本をたくさん置いて、子どもたちが自由に読める空間をつくる移動式イベントです。単純に言えばこういうことなのですが、それだけであり、それだけでない。大人のあなたにもぜひ知ってほしい「絵本カーニバル」の世界を、少し覗いてみましょう。
先日、新宿で行われていた「絵本と家具のカーニバル」の会場に足を運んでみました。まずは、この空間をご覧ください。
おしゃれなインテリアが並ぶ空間に、絵本が丁寧に、全て前を向いて並べられています。普段なら少し気後れしてしまうほどおしゃれな家具のショールームが、絵本が加わっただけでなんだか居心地のいい、やすらぎの空間に。まるで絵本が語りかけてくるような感覚。子どもたちの笑い声さえ聞こえてきそうです。
これが、絵本の持つ時間と空間を変えるチカラ。本棚に並んでいては気付かないことですが、こうして絵本を並べ、生かしてあげることにより、その空間は子どもたちの、そして子ども時間を大切にする大人たちのための場所になります。照明、音楽にもこだわり、絵本の魅力を余すことなく発揮した見事な空間デザインです。
「絵本カーニバル」という空間を作り続けてきた目黒実さんは、
絵本は、子どもの心と体にいつまでも寄り添って歩く真実の友人
だと言います。絵本カーニバルの空間で私が味わったあの感覚は、懐かしい友人に再会した喜びと安らぎから来るものだったのかもしれません。
「絵本カーニバル」が始まったのは、実はもう13年も前のことです。兵庫県篠山市の「チルドレンズ・ミュージアム」、福島県霊山町の「遊びと学びのミュージアム」など子どもの居場所作りを手がける目黒さんが、東京国際フォーラム開館記念事業として「遊ぼう!絵本・えほんカーニバル ’97」を開催したのがその始まりでした。思いがけない大反響。これをきっかけに、“出かけて行く”子どもの居場所作りが始まったのです。
その後、全国80箇所で開催されてきた絵本カーニバルは、時を変え場所を変え、各地で「地域の中の第三の子どもの居場所」を作り続けてきました。街の公民館で、科学館で、学校で、そして福祉施設でも。絵本カーニバルは、様々な場所を子どもたちのための、そして大人が子どもの時間に出会う場所に変えてきました。2010年10月、NPO法人として新たなスタートを切り、さらに活動の幅は広がって行きそうです。
それにしてもこの「絵本カーニバル」という名前、いかにも楽しそうで聞いただけでワクワクしてしまいますよね。この日、トークショーのため会場にいらっしゃった目黒さんにその由来について聞いてみました。
「カーニバル」と聞くと「お祭り」をイメージする方が多いと思いますが、私は「見る者と見せる者が一体化している場所」つまり、「見せあう場」と捉えています。みんなが参加し一体感を持って楽しむことはもちろん、人間関係をつないでいく役割を意識して、「カーニバル」と名付けました。絵本も子どももそれぞれ自分の物語を持っていて、一体化する場所。それが、「絵本カーニバル」なのです。
さて、絵本カーニバルはこの先、どこへ旅して行くのでしょうか?
ミュージアムとライブラリーがあって、シアターとガーデンがあって。いつかそんな子どもたちの理想の居場所をつくりたい。そして、できたらその側に、子ども病院と子どもホスピスがあったらと、思う。自分の責任ではないのに病気になって長期入院している子どもたち、幼くして死と直面している子どもたちに、たくさんの絵本とたくさんの空間が、少しでも、生きる気持ちと勇気を与えられればと思います。
医療現場での絵本カーニバルの取り組みは、今後NPO法人としてさらに広げていくとのこと。真実の友人を、居場所を、必要とする子どもがいる限り、絵本カーニバルは旅を続けていくことでしょう。
公式ホームページで絵本カーニバルの世界を知ろう