今年6月に行われた、若者のグッドアクションを応援する「E-ideaコンペティション」(主催:ブリティッシュ・カウンシル、協力:LRQA(ロイド レジスター クオリティ アシュアランス)ジャパン)。これまで3本の記事で、受賞者の声とプロジェクトの概要をご紹介してきました。
「3E-ideaってこういうこと!受賞プロジェクトを生んだ未来の社会起業家に突撃インタビュー【その1】」
▼2等(石橋秀一さん、吉田明子さん、菊地格夫さん)
「助成金獲得でプロジェクトの今後は!?E-idea受賞者インタビュー【その2】」
▼1等(藤岡恒行さん、川口才文さん)
「1等は竹の食器とiPhoneアプリ!世界を変えるE-ideaコンペ受賞者インタビュー【その3】」
あれから約3ヶ月。受賞者の方々は今、どうしているのでしょうか。
プロジェクトの進行状況は?
気候リーダーとしての活躍は?
今、どこで、何を感じているの?
今回は、受賞をきっかけに大きく動き出した2つのプロジェクトのその後について、リーダーのおふたりにお話を聞きました。
ランタンを手に、ネパールの孤児院へ—菊地格夫さん
まず一人目は、オフセットの概念で日本とネパールを結ぶ「オフセットカフェ・オフセットティーを飲んで途上国の孤児へ灯りを」(※)で2等を獲得した菊地格夫さん。受賞から1ヶ月後の7月後半、菊地さんはネパールにいました。
(※)ネパールの孤児院にソーラーパネル充電設備とソーラーランタンを設置して電気を提供し、日本でその発電分の環境価値を上乗せしたオフセットコーヒー、ティーを販売するプロジェクト。詳細はこちらの記事をご参照ください。
助成金を資金とした今回の渡航の目的は、ネパールの孤児院にソーラーパネル充電設備とソーラーランタンを届けること。菊地さんにとって2009年3月以来、二度目の現地への訪問です。
現地・ネパールでは、このプロジェクトに関わる3団体間の同意書への調印を済ませ、Bal Mandir(バルマンディール)孤児院に訪問、ソーラーランタン45個の受け渡しを行いました。子どもたちは見たこともない不思議な機器に興味津々だったようです。
菊地さんは、今回のネパールへの渡航について、
「まさにサステナブルなプロジェクトがスタートしたと実感しています」
と話してくれました。それまでは、うまく現地に受け入れてもらえるか不安もあったとのことですが、孤児や関係者の声を直接聞くことにより、その不安は自信に変わっていったそうです。さらに、「現地関係者の反応が思った以上によかった」といううれしい驚きも。現地の歓迎を受け、関係者と十分に交流することができた今回の渡航は、プロジェクトにとって大きな成果となったようです。写真からも現地での充実した様子が伝わってきますね。
次は「おやつ」で秋田とネパールをつなぐ!?
さて、今回の現地訪問を経て、プロジェクトはまた、次なるステージへと動き出しそうです。
「孤児院の栄養改善プロジェクトを秋田の発酵技術を使って行いたいという構想ができました。蒸した米に麹をふりかけて放置することで、麹が生えて 米そのものの栄養価が上がります。その材料を使ってお菓子を作るプロジェクトを考えています」
菊地さんによると、ネパールの人々は朝晩の二食がメインで、昼にはおやつ程度の軽食しか摂っていないそうです。今回、栄養が十分とは言えないおやつを食べる孤児院の子どもたちを目の当たりにし、手軽に摂れて栄養価の高いおやつを作ることを思いついたと言います。そこで菊地さんが着目したのは、地元・秋田の発酵技術。今後、秋田県内でおやつレシピのコンペを開き、孤児院の料理人に伝授したいという構想も聞かせてくれました。
これ、あるものを有効活用しながら秋田とネパールをつなぐナイスなアイデアですよね!秋田の方にとっても、ネパールの子どもたちにとっても、楽しみながら新たな気付きが得られる有益なプロジェクトになるのではないでしょうか。菊地さんの現地での経験から、またひとつ新たなグッドアイデアが生まれました。今後がますます楽しみです。
プロトタイプがついに完成!—石橋秀一さん
さて、次はガラリと変わって、家庭内での電力消費量を可視化するツール「Energy Literacy Platform」(※)の開発プロジェクトで2等を受賞した石橋秀一さんにお話を聞きました。
(※)家庭内電力に関するリテラシーを高めていくことを目的とし、普段私たちが意識することのない家電製品ごとの消費電力を可視化するツールを開発、製品化していくプロジェクト。詳細はこちらの記事をご参照ください。
「3ヶ月とても忙しく有意義な時間を過ごすことができました」
と言う石橋さんの言葉が物語る通り、受賞をきっかけに、事業化に向けてプロジェクトは大きく進行しました。そして9月末、ついにプロトタイプが完成!できたてほやほや、完成版画面はこちらです。
え?iPhone画面?と驚いた方も多いでしょう。そう、このプロジェクトでは電力量をスマートフォンでも見られるようにする予定なのです。これなら無理なく毎日、家電ごとの電力量をチェックできそうですよね。もちろん、PC版もあります。
そして、電力量を計るために電源と家電をつなぐモジュールがこちら。
電源モジュールは、当初の想定よりも大きくなってしまったため再デザインを検討しているとのことで、もっとコンパクトなものになりそうです。
3ヶ月でここまで完成度の高いプロトタイプを作ってしまうとは、今後への期待が高まりますね!
1年以内にもサービス・インへ!
さて、プロジェクトの次なる展開は?
「今後はまず、様々なイベント等へ露出していきたいと考えています。このプロトタイプを持って様々な協力先を探していく予定です。そして、出来れば1年以内のサービス・インを目指しています」
6月に取材した際は「1年以内にプロトタイプを」と話してくれた石橋さん。既に3ヶ月と言う短期間でプロトタイプが完成してしまったところを見ると、全体の進行スピードは間違いなく速まってきているようです。サービス・インまでには法務的にクリアしなくてはならない部分など、数々の課題もあるようですが、1年後、どんなサービスとなってデビューするのか、そしてどのように普及していくのか、期待を持って見守りたいと思います。
資金面以外のサポートも大きな力に!
さて、菊地さんと石橋さんのお話でとても興味深かったのは、ブリティッシュ・カウンシルによる助成金以外のサポートのお話です。E-ideaコンペティションの受賞者は、同時にブリティッシュ・カウンシルのグローバルネットワークの一員(気候リーダー)となり、各種研修やネットワーキングイベント、各国の指導者との意見交換などへの参加が可能となります。
プログラムに参加した石橋さんは、
「資金面に限らず、PRをサポートしてくれたり、有識者との意見交換の場などを設けてもらえるためプロジェクトとしても大変助かっています」
と言い、他のコンペティションにはない受賞後のサポートを有益に感じている様子です。さらには、国連気候変動会議(COP)や G8といった国際会議で、若者代表として意見を伝える機会も与えられるとのこと。プロジェクトの直接的なサポートではありませんが、これも、リーダーたちにとって貴重な経験になることは間違いないでしょう。
一方の菊地さんは、
「イギリスの公的な国際文化交流機関からのサポートということが 周囲の評価につながり、メディアの反応がよかったことはとても大きいです」
と、受賞者ならではの実感を聞かせてくれました。まだまだメディア力の弱いプロジェクトの初期段階において、こちらも注目すべきメリットと言えるでしょう。
このように、助成金以外の様々な側面から見ても、E-ideaコンペティションの受賞者が享受できるサポートは、プロジェクトにとって大きな意味を持っているようです。そしてこのサポートをチャンスと捉え、有効活用しているプロジェクトリーダーたちのたくましさには、とても驚かされました。陳腐な表現ですが、「水を得た魚」とでも言いましょうか。その姿に、目的と意志を持った人間の強さを感じることができました。
さて、今回は【3ヶ月後編】として2つのプロジェクトリーダーの「今」をご紹介しました。こうなると当然、他のプロジェクトの動きも気になりますよね?greenzでは引き続き受賞プロジェクトのその後を取材していきます。次回はどのプロジェクト、そしてプロジェクトリーダーの成長に出会えるのでしょうか。
どうぞお楽しみに!私も、とても楽しみです。
「E-ideaコンペティション」は、LRQA(ロイド レジスター クオリティアシュアランス )ジャパンがサポートしています。
LRQA [ http://www.lrqa.or.jp/ ]
授賞当時の菊地さん、石橋さんのインタビューをもう一度!
「E-ideaコンペティション」って?もう一度おさらい!