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ゆるさも大事、ダイナミズムはもっと大事!ワークショップ・デザインを学ぼう ーgreen drinks Tokyoレポート

greenz/グリーンズ gdTokyo

いよいよ開催が近づいて来たgreenz.jpの新プロジェクト「green Workshops fes 2010 in 房総」。greenz史上最大とも言えるイベントにドキドキワクワク。スタッフ一同、鋭意準備を進めています!

でもその前に、ワークショップっていったい何者なのでしょう?言葉としては認知も広まり、ワークショップ系イベントが各地で行われていますが、よく考えたことはない、という方が多いのではないでしょうか。

そこで、8月のgreen drinks Tokyoでは、みんなでワークショップについて考えてみました。テーマはズバリ「ワークショップのデザイン!」。3名のゲストをお迎えして、この幅広い概念にてついてディスカッションしました。奥深いワークショップの世界が垣間みられた当日の様子をレポートでお届けします!


この日は、会場に集まった方の半数以上が初参加。しかもトーク開始前にほぼ満席状態という、いつにない熱気と緊張感を漂わせながら、トークがスタートしました。

プレゼンテーション

今回のゲストはそれぞれの立場から、ワークショップに関するユニークな取り組みをされている3名の方々。まずは自己紹介がてら、皆さんの活動についてプレゼンテーションをしていただきました。

中西紹一さん

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ワークショップについて体系的にまとめた書籍『ワークショップ—偶然をデザインする技術』の著者であり、ビジネスでもNPOの現場でもワークショップを活用して問題解決を実践されている中西紹一さん。ワークショップ歴は13年にもなるという、この道の先駆者的存在でもあります。

まずは、ワークショップデザインの基本の話として、中西さんが実践されている“創発型ワークショップ”の具体的アクティビティから基本プロセス、実践例までをスライドを使って説明いただきました。

中西さんによると、ワークショップの基本的な推進プロセスは、次のように定義されます。

「つくって、さらして、振り返る」というアプローチを繰り返すことで、テーマや課題に対しブラックボックス化していた事実をカタチにあらわし、その経験を通じて、参加者自らが社会への認識を新たにするとともに、自己の世界を再構成する契機を与える一連のプロセス

その具体的な実践例として、大学生を対象に2日間に渡り実施した共層型ワークショップ「イメージをカタチにする」の成果を紹介いただきました。これは、“お菓子メーカーの主力商品の受容層の拡大”をテーマに、その広告制作全プロセスを体験させるもので、今回の商品は、おつまみの定番「柿の種」。この商品イメージを変え、購買層を若者にも拡大させる戦略を学生に考えさせたもので、最終的にはCM撮影まで行う本格的ワークショップです。変なカタチの眼鏡を使った自己紹介アイスブレイク、学生のあらゆる行動を説明させるというファシリテート、実際にプロがデザインしてカタチにすることでモチベーションを上げる手法など、参考になる事例をたくさん紹介いただきました。このワークショップは、お菓子メーカーの担当者からも、非常に多くの気付きを得たとの評価をもらったそうです。

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中西さんによると、ワークショップにおいては「参加する=学ぶ」という状況を必ずつくること(認知的徒弟制の考え方)が非常に重要で、その考え方をワークショップのプロセスに落とし込んだものがこちら。

当日使用スライドより

当日使用スライドより

このプロセスの中でも中西さんが一番強調されていたのは「探求」でした。「探求」することで、ワークショップに関わった全ての人が「学び」を経験し、結果として教える人が誰ひとりいない状況ができあがることがポイント。これが、セミナーや講義とワークショップの大きな違いであり、ワークショップにおける成功状態を表すとのことでした。この辺りに関してはまた後ほどのトークで詳しくお聞きしましょう。

井口奈保さん

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お次はファシリテーションのバックグラウンドを持ちながら、TEDxTokyoコミュニティのコアメンバーとしてプロジェクトを展開する井口奈保さんの登場。“ワークショップ的”とも言えるTEDxイベントの作り方や、井口さんが考える「コミュニケーション・プロセス・デザイン」のお話を手書きスライドを用いてお話しいただきました。

社会変革を起こす意志を持った人たちが集い、プレゼンテーションやコミュニケーションを図る場である「TEDxTokyo」のイベントを運営している井口さん。そのチームメンバーはとても円滑なコミュニケーションが出来上がっているそうです。その秘訣について聞くと、井口さんは、「TED」という明確なブランドコンセプトの上に立つ「組織システムのデザイン」「ネットワークリソース」「コミュニケーション力」の3要素を挙げて説明してくれました。

当日のスライドより

Copyright by Naho Iguchi

中でも「組織システムのデザイン」に関する具体的手法は非常に興味深いものでした。「TEDxTokyo」は、チームメンバーの全員がボランティアとしてイベントを支えています。その組織を組み立てる際は、まずメンバーを「知る」ことに重点を置き、初期の段階で、チームメンバー、スピーカー、スポンサーなどイベントに関わる全員に対し、非常に長いアンケートを課しているそうです。書くのにも相当の労力が必要なこのアンケートにより、その人の今の情熱や、これまでの経験、実現したいことなどを知ることからコミュニケーションがスタート。その後も、定期的な「アクションミーティング」によってこまめにメンバー間の状況や想いを共有する場を作るなど、メンバー間における非常に丁寧なコミュニケーションの設計が垣間みられます。

また、人的リソースを最大限に生かしてメンバーを集めるための「ネットワークリソース」、本業を持ちながらのボランティアだからこそ重要度が増す細かな「コミュニケーション力」など、よいチームの作り方に関するヒントが随所に見られるプレゼンテーションとなりました。

坂田直樹さん

"greenz/グリーンズ gdTokyo

最後に登場したのは、マーケティングクラウドソーシングのプラットフォーム『Blabo!』のプロデューサーである坂田直樹さん。“ワークショップ的”とも言えるウェブサービスを手がけた経験から、オンラインブレストのファシリテーションについてお話を伺いました。

以前こちらの記事でも紹介した『Blabo!』。まずはサービスの説明と、これまでの事例をご紹介いただきました。中古車の「ガリバー」の例では、女性客を取り込む戦略として、参加者から「色ごとにならべてはどうか?」という具体的なアイデアが提示され、実際に店舗で実験的に導入するに至るなど、現状、合計7つのアイデアが採用される予定だとのこと。サービス開始直後ではありますが、企業側にもその有用性が認められつつあるのがわかります。

クリエイターが集うオンライン企画会議室「Blabo!」

クリエイターが集うオンライン企画会議室「Blabo!」

さて、『Blabo!』のように100%オンラインで行う企画会議においては、多数の参加者をまとめるファシリテーターが非常に重要な役割を果たしています。坂田さんによると、ファシリテーションを行っているのは、ラジオ番組の構成作家なのだとか。無数のハガキ職人たちを相手にしている構成作家は、顔の見えないアイデアマンたちを取りまとめるのに適任だそうです。それはウェブサービス特有のものなのでしょうか、それとも……?このファシリテーション手法に関する話題もトークタイムにじっくりとお聞きしましょう。

トークタイム

さて、若いおふたりのプレゼンを聞いた中西さんからは、「がんばってますねー」とひとこと。まずは若い世代へのアドバイスからトークがスタートしました。

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悩む前に表現することが大事

若い人を中心にワークショップに接する機会が増え、ファシリテーションを学ぶ人も多くなってきている現状を、中西さんはどのように感じられているのでしょうか。

わかった気になることとわかることは違う。わかった気にさせるワークショップは怖い。

中西さんはズバリ、現状への危惧を示されました。特に学生などは、これまで経験したことのないワークショップを体験すると、一時的に“わかったような気”になってしまうという状況があるそうです。

そうならないようにするには、どうしたらよいのでしょうか?

わからなくても迷っても、まず表現し、さらにそれを言い換えることを繰り返すことが大事

と中西さん。これに対し井口さんも、TEDxTokyoの弟分とも言えるTEDxTokyo_yzの作り方を例に取り、

未完成でも思ったことをそのまま表現し、振り返り、一度内面化するというプロセスを取り入れることにより、一瞬の体験ではなく、日々の経験にしていくことを大事にしている

と発言。さらに井口さんは、氷山の図を用い、メンバー個々の見えないニーズを引き出しゴールに導くための手法を説明してくれました。

当日のスライドより

Copyright by Naho Iguchi

この図においては、氷山が解けたり、傾いたりしないようにバランスを保ちながら、チームを育てていくことがポイント。そのために、ワークショップにおいては海面の下の見えていない部分(潜在意識や個々のニーズ)を引き出しながらも、氷山の見えている部分(明確に掲げたビジョンや目標)に随時立ち戻るファシリテーションを心がけているとのことでした。

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さて、井口さんのように体系付けて考えられたワークショップデザインに対し、坂田さんの手がける『Blabo!』はウェブ上で、強制力もない言わば“ゆるい”関係。こちらのワークショップデザインにはまた違ったコツがありそうです。

坂田さんによると、『Blabo!』では参加のモチベーションを上げるため、さらには続けて参加してもらうためのサービスの設計として、いいアイデアに評価する仕組み「Fine Play」を導入したり、長期間にわたる会議には、アイスブレイクからリサーチ、ブレスト、最後の集約に至るまでの設計を施したり、といった工夫をしているとのこと。お金目当てではなく、「アイデアが役に立つことに喜びを感じてもらう」ための設計に、非常に細かい配慮を施している様子です。さらに今後は、ウェブシステムを越えた議論が必要と判断した場合は、『Blabo!』の仕組みをリアルな場に持ち込むなど、新たな展開も検討しているとのことです。

ゆるさのデザイン?

この2人の話を聞いた中西さんは「真面目だねー」と一言。(ちなみに、中西さんはこの時点でビール4杯目をオーダー!笑)

この言葉には、「何事にもある程度の“ゆるさ”が必要だ」という中西さんの想いがあるようです。中西さんの会社は、机と椅子だけのシンプルな空間にしているとのこと。クリエイティブな組織の人間は、会社を飛び出し、いろいろなことに接する時間を持つべきだとおっしゃいます。「会社が居心地がいいと、ごく普通の日常風景から離れてしまうのが怖い」と。これと同様に、サービスがきちんと設計されすぎることを危惧されている様子です。

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「ゆるさのデザイン」について尋ねられると、坂田さんは、「ツイッターというゆるいプラットフォームを利用しているために根本的にゆるく、またファシリテーターの工夫により、ディスカッションにもゆるさを演出しています」とのお答え。一方で、井口さんが心がけているのは、「Let it be」(なるがままに)の心。反するアイデアが出ても一旦は受け入れる、ということを念頭に置きファシリテートしているそうです。

中西さんは、

変わり続けることは力がいることです。あなたたちにはゲリラ的なダイナミズムさを持ち続けてほしい。

と言い、活躍する若いおふたりに、そして会場に集まった方々にエールを送っていました。

“全員が学び、全員が教える”学びの共有(Shared Learning)

さて、最後に中西さんがワークショップ・デザインにおいて最も重要と考えるポイントについてお聞きしました。それは、「三者間の実施による学びの共有(Shared Learning)」です。

二者間ではフラットになることは難しいのですが、三者に役割が分担されることにより、それぞれ教え合う関係ができあがり、気がついたら全員が教えているという状況が成立するとのこと。

まさにこれは、この日のトークの「3名のゲストのみなさん」「YOSH(ファシリテーター)」「会場のみなさん」の関係。三者の立場が交わることで、誰もが教える、学ぶ関係作りが成り立つ場となるのです。

これがやはり、ワークショップの本質であると誰もが納得した瞬間でした。

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みなさん、参加しませんか?

さて、この日のトークの最後には、greenz編集長の鈴木菜央がマイクを取りました。これは、

greenz.jpは『Blabo!』で何をしたいのですか?

という質問を受けてのことです。お答えしましょう。そしてみなさん、参加しませんか?

参加しませんか?その1:「greenz.jp相談室」

先日、こちらの記事でもご紹介したのでご存知の方もいるかもしれませんが、現在、『Blabo!』では「greenz.jp相談室」が開設されています。

greenz.jp相談室

greenz.jp相談室

これからは単なるウェブマガジンから脱皮して読者がgreenz.jpという
コミュニティに参加できるインタラクティブなメディアになりたい!と思っています。
一方通行じゃなくて、語り合って、ときにはリアルに会って話して。
そんなコミュニティメディアを目指しています。

このgreenz.jpをどうやったら「コミュニティメディア」にできるか
アイデアを一緒に生み出していきたいとおもっています。

このような趣旨で皆さんのご意見を大募集中なので、ぜひぜひご参加ください!期限は8月27日までの予定です。

参加しませんか?その2:「green Workshops」

そして冒頭でもお伝えした「green Workshops」。千葉県いすみ市にあるgreenz.jpの「森の家」を舞台に、21世紀のサステナブルな暮らしをカタチにする「greenz Workshop fes 2010 in 房総」を開催します。

workshopfes

各プログラムの受付締切は8月24日(火)!皆さんのご参加をお待ちしています!!

greenz/グリーンズ gdTokyo

ワークショップについて学んだ今回のgreen drinks Tokyo。この場を皮切りに、greenz.jpはネットで、リアルで、ワークショップを実践していきます。ここから何が生まれるか、それは参加者のみなさんの手にかかっています。みんなで教え合い、学び合い、新しいビジョンを描いていきましょう!

Ustream映像

flickrスライドショー

green drinks Tokyo、次回開催は9月9日(木)!

green drinks Japan、全国で続々開催中!