ブリティッシュ・カウンシル主催、若者のグッドアクションに総額500万円の助成金が贈られる「E-ideaコンペティション」。前回の3等紹介に引き続き、今回は受賞者紹介第二弾として、2等(賞金60万円)に輝いた3名の方々をご紹介します。
今回も、未来をワクワクに変えるアイデアやプロジェクトが続々と登場します。気になる助成金の使い道も、こっそり聞いちゃいました!
「Energy Literacy Platform」石橋秀一さん
日常の電力量を可視化することで、日本人のエネルギーリテラシーを高めていきたい。
あなたの家の冷蔵庫、毎日どのくらいの電気を消費しているかご存知ですか?「Energy Literacy Platform」は、家庭内電力に関するリテラシーを高めていくことを目的とし、普段私たちが意識することのない家電製品ごとの消費電力を可視化するツールを開発、製品化していくプロジェクトです。
下記のイラストのように、コンセントと各家電製品の間に接続する「ELPモジュール」、モジュールからの情報をパソコンで受信する「ELPレシーバ」、エネルギーの使用量を確認するための「ELPウェブサイト」で構成されるツールは、現在プロトタイプの制作を行っている段階とのことです。
お話を聞かせてくれたのは、現在大学院に通う石橋秀一さんはじめ、3名の皆さん。電子機器のデザインを研究していた彼らが、スキルを活かして、もっと社会に関わることができないかと考えたことがきっかけとなり、プロジェクトがスタートしました。そして修了後の起業も考え始めた頃、このコンペをTwitterで知り、応募に至ったとのことです。
始まったばかりのプロジェクトですが、実は既にホームページもでき上がっています。今後、一年以内にはプロトタイプを完成させ、家庭での実証実験を経た後、製品化していきたいとのこと。卒業後はこのビジネスで勝負したいという意気込みも聞かせてくれました。3人はとてもチームワークがよく、仲間でこのプロジェクトを進めているという充実感にあふれている様子が印象的でした。
日本人は、エネルギーリテラシーが低すぎると言われています。このツールで消費量を感覚的に学習することができれば、無駄な消費電力を抑え、家庭内におけるエネルギーの利用効率化が促進されることも期待できます。社会的意義も大きいこのプロジェクト、ビジネスとしての成功も期待したいですね!
「水 Do!(スイ・ドゥ)キャンペーン」吉田明子さん
多い人は一日に2本、3本買うのが普通になってしまっているペットボトル。でも、どうにかできるはず!
以前greenzでもご紹介した「水 Do!キャンペーン」が、見事受賞!ペットボトルなどの使い捨て容器に入った飲料ではなく、安全でおいしい水道水を選ぶことで、CO2、ごみ、そして社会的なコストを削減していこうと呼びかけるキャンペーンです。
受賞者の吉田明子さんは、国際環境NGO「FoE Japan(Friends of the Earth Japan)」で気候変動・廃棄物政策担当として活動されています。担当されている「脱・使い捨てプロジェクト」においては以前より、ファストフードなどでのリユース容器(マグカップやグラス)利用を推進する活動をしてきましたが、今回は、便利だけれど買うときにはいつも「もったいない」と感じるペットボトルに注目したそうです。真剣なまなざしで語る表情に、吉田さんの問題意識の高さを感じます。
プロジェクト立ち上げ後すぐの受賞となりましたが、今後、自治体に使い捨て容器を減らす取組みを呼びかけたり、街のオアシス(水飲み場や給水スポット)を発見し、増やしていく活動をしていくとのこと。キャンペーンのホームページでは、一緒に活動するボランティアも募集しているので、興味のある方は、一度ホームページを覗いてみてはいかがでしょう。
吉田さんによると、海外には街全体でペットボトルの販売を禁止した例もあるなど、世界中で水道水を見直す動きが広がっているとのことです。日本においては、まず、「リサイクルすればいい」という意識を、「まず、ごみを減らす」という根本的なところへシフトしていくことが必要なのかもしれません。合い言葉は「水 Do!(スイ・ドゥ)!」。のどが渇くこの季節、みんなで呼びかけていきましょう!
「オフセットカフェ・オフセットティーを飲んで途上国の孤児へ灯りを」菊地格夫さん
環境価値を使うことがこのプロジェクトのミソ。いつか秋田にカフェを開きたいです!
最後にご紹介するのは、排出してしまった二酸化炭素分のお金を支払う「オフセット」の概念で、日本とネパールを結ぶプロジェクト。ネパールの孤児院にソーラーパネル充電設備とソーラーランタンを設置して電気を提供し、日本でその発電分の環境価値を上乗せしたオフセットコーヒー、ティーを販売する仕組みです。孤児院の子供たちに快適な環境を提供すると共に、日本人にオフセット、フェアトレードの考え方を伝えることを目的としています。
秋田県地球温暖化防止活動推進センターで働いている菊地格夫さん。仕事の中で環境価値やオフセットの考え方を学び、このプロジェクトを立ち上げました。フェアトレードの概念も盛り込んだのは、JICAで国際協力にも携わった経験も影響しているとのこと。コーヒーや紅茶といった身近なものをフェアトレードやオフセットのものに変えることにより、「ちょっとしたブレイクタイムにふと、途上国の子供のことを考える時間を持ってもらえたら」と考えたそうです。
淡々と、でもしっかりとした口調でプロジェクトにかける想いを聞かせてくれた菊地さん。今後、7月後半にはネパールに渡ってランタンを設置し、帰国後は日本でコーヒー、紅茶販売のイベントも計画しているとのことです。この受賞を機に、プロジェクトは一気に進行していきそうです。
そして、「いつかは秋田県でカフェを作り、いつでもオフセットコーヒーを飲んでいただけるようにしたい」という夢も聞かせてくれました。他の受賞者が関東圏に集中する中、この日秋田から受賞式に出席するために上京してきた菊地さん。このプロジェクトは、情報の集まりにくい地方の方たちにとっても注目の活動となっていきそうです。
コンペ通過でプロジェクトの今後は?
以上、3組の受賞者の皆様をご紹介しましたが、今回受賞者のお話を聞いて改めて感じたのは、このようなコンペティションが、起業家たちにとって非常に重要な価値を産み出しているということです。
ひとつはもちろん、資金面。今回の賞金の使い道について聞くと、石橋さんはプロトタイプ開発に、吉田さんはウェブサイトとリーフレット作成に、菊地さんは現地への渡航費やランタン購入に、と、それぞれ明確な用途を聞かせてくれました。中には他のコンペティションもいくつか同時に応募している方もいらっしゃったのですが、こういったコンペティションの助成金が、彼らの活動の重要な資金源になっていることは間違いないようです。最初から潤沢に予算のあるプロジェクトなんてありません。キラリと光るアイデアの卵を大きく羽ばたかせるための最初の一歩として、助成金は大きな意味を持っているのです。
そしてもうひとつ重要なのは、精神面のバックアップです。受賞者の方のインタビューでは、自らのプロジェクトについて話をするみなさんの自信に満ちた表情がとても印象的でした。それは今回の受賞により、「これで勝負をするんだ」という責任感を兼ね備えた自信を得たことの現れでしょう。これからのプロジェクトにとって、それはお金以上の価値を産み出していくはずです。
受賞者は今後、ブリティッシュ・カウンシルの「気候リーダー」となり、海外での研修やイベントにも参加することもできます。そのような経験を経て、リーダーの彼ら、そしてプロジェクトがどのように成長していくのか、greenzでは今後も見守り続けて行きたいと思います。
次回はいよいよ、1等受賞者のお2人を紹介します。お楽しみに!
「E-ideaコンペティション」は、LRQA(ロイド レジスター クオリティアシュアランス )ジャパンがサポートしています。
LRQA [ http://www.lrqa.or.jp/ ]
授賞式当日の様子と受賞プロジェクト紹介映像
3等受賞者はこちらの4名!受賞者紹介記事を読む。
「E-ideaコンペティション」って?コンペ紹介はこちら。