今年7月~10月、100日間に渡り開催される瀬戸内国際芸術祭2010。「海の復権」をテーマに、瀬戸内海に浮かぶ島々を舞台にした現代アートの祭典が、いよいよこの夏、幕を開ける。
美しい風景に囲まれ、古来より豊かな固有の文化が育まれてきた瀬戸内海の島々。近年の過疎化が進む中、2004年より直島福武美術館財団による現代アートを導入した直島の地域活性が行われてきたことはご存知の方も多いだろう。この芸術祭では直島を含む合計7つの島々(直島、豊島、女木島、男木島、小豆島、大島、犬島)と香川県高松市に舞台を広げ、瀬戸内海全体からその魅力を世界に発信する構想となっている。会場となる地域では100を越えるアーティストが参加したプロジェクトの準備が着々と進められているようだ。
今日は、先日行われた企画発表記者会見の様子をお伝えするとともに、芸術祭の見所を探ってみよう。
記者会見は、香川県知事、総合プロデューサーの福武聡一郎氏(財団法人直島福武美術館財団理事長)、総合ディレクターの北川フラム氏、グラフィックデザイナー原研哉氏はじめ9組の参加デザイナー・アーティストが参加して盛大に行われた。
知事による開催挨拶のあと、登場するなり「東京は狂っている」という強い言葉から語り始めたのは、総合プロデューサーの福武總一郎氏。刺激と物に溢れ、常に競争の中にある東京。そこには、物質的には豊かでも精神的には孤独で寂しいという気持ちを持っている人々が多く生活している。幸せを求めて生きているのに、なぜ幸せになれないのか?その答えは、「幸せな地域にいないから」。幸せな地域にいないと、ひとりひとりがいくら幸せであっても本当に幸せを感じることができないのだ、と福武氏は言い切った。
では「幸せな地域」とはなんだろう?福武氏は、それを「お年寄りの笑顔のいいところ」と表現した。人生の達人であるお年寄りがいきいきと笑顔で生きている。そういう地域にこそ、本当の幸せがある。芸術祭の成功には、お年寄りも現代アートに参加し、楽しみ、元気になってもらうことも欠かせない要素として考えられているようだ。
「瀬戸内海を世界で一番の楽園にし、精神的な本当の“豊かさ”を発信していきたい」
「東京ではなく、瀬戸内海が日本の、アジアの中心であるということを世界に知らしめたい」
そんな総合プロデューサーの想いをカタチにするのが、次に登場した総合ディレクター北川フラム氏が統括する80組を越える参加アーティストたちだ。
この芸術祭のテーマは“海の復権”。現代アートによって、瀬戸内海がかつてのような活力を取り戻し、地球上のすべての海の「希望の海」となることを目指しているが、重要なのは、そこに暮らす人々との協働により作り上げていくこと。外からアート作品を持ち込むのではなく、現代アート作家や建築家と地元の方々が共にアートという結晶を作り上げていく。壊して作るのではなく、あるものを再生して、活かしていくことを前提としているため、紛れもなくこの地でしか生まれ得ないアート作品が誕生することとなるだろう。
この日、多くのアーティストが自身の作品を発表する中、最も盛り上がりを見せたのは、鈴木康広氏によるファスナー型の船。
上空から見ると水面を切り開いて走るように見えるファスナー型の船を、水上タクシーとして運行する予定だという。瀬戸内海を開くファスナーのような船、開いたその先に見えてくるものは?想像しただけでもワクワクするプロジェクトだ。
また、もうひとつの重要なポイントは“100日間のお祭りでは終わらせない”ということ。芸術祭の開催自体が目的ではなく、会期終了後も島が継続的に元気になっていくことを目指している。そのため、島民の方々との協働プロジェクトを引き続き行っていく予定だという。
そのひとつとしてこの日発表されたのが、日比野克彦氏による船の上の美術館「海底探査船」プロジェクトだ。かつてア レクサンドリア湾の海底に潜り水中スケッチを行った経験から、海底の世界に魅せられた日比野氏。これまで“見えないから見ようとしなかった”海底の世界を見ていこうと提案する壮大なプロジェクトの構想を語った。実際、直島の海底にも鎌倉時代の焼き物が眠っているとのことだが、そこはたかが6メートルの深さの場所だという。水中遺跡関連団体などと協力しながら、会期中にはパネル展示などを展開し、その後も海底探査船プロジェクトとして進めていくとのことだ。実現すれば、瀬戸内海の新たなカルチャーを生み出すことにもつながるだろう。
日比野氏による水中スケッチの様子はこちらの動画をぜひご覧ください!
全体を通して、作り手側のワクワク感がストレートに伝わってくる記者会見で、私たちに大きな期待感を与えてくれた。この夏、日本の中心のひとつは、間違いなく瀬戸内海になるだろう。その会期後も継続して世界中の海にとっての「希望の海」となるかどうかは、あなた自身の目でぜひ確かめてみてはいかがだろう。
名称 瀬戸内国際芸術祭「アートと海を巡る百日間の冒険」
http://setouchi-artfest.jp/
開催期間 2010年7月19日(海の日)ー10月31日(日)
会場 直島、豊島、女木島、男木島、小豆島、大島、犬島、高松港周辺
主催 瀬戸内国際芸術祭実行委員会
会長: 真鍋武紀(香川県知事)
総合プロデューサー: 福武總一郎(財団法人 直島福武美術館財団理事長)
総合ディレクター: 北川フラム(アートディレクター)
構成団体: 香川県
高松市
土庄町
小豆島町
直島町
(財)直島福武美術館財団
(財)福武教育文化振興財団
香川県市長会
香川県町村会
四国経済産業局
四国地方整備局
四国運輸局
四国経済連合会
香川県商工会議所連合会
香川県商工会連合会
(社)香川経済同友会
香川県農業協同組合
香川県漁業協同組合連合会
(株)百十四銀行
(株)香川銀行
香川大学
四国学院大学
徳島文理大学
高松大学
香川県文化協会
(財)四国民家博物館
(社)香川県観光協会
(社)日本旅行業協会中国四国支部香川地区会
(財)高松観光コンベンション・ビューロー
香川県ホテル旅館生活衛生同業組合
四国旅客鉄道(株)
高松琴平電気鉄道(株)
香川県旅客船協会
(社)香川県バス協会
香川県タクシー協同組合
(財)香川県老人クラブ連合会
香川県婦人団体連絡協議会
(社)日本青年会議所四国地区香川ブロック協議会
香川県青年団体協議会
さぬき瀬戸塾
オブザーバー: 岡山市、玉野市、岡山県商工会議所連合会、岡山大学
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