野山を走るときはマウンテンバイク、舗装された道路で快適なのはロードバイクと、自転車には、用途に応じて様々な種類のものがある。では、道路が未整備なうえ、自転車を買うお金がない人々のための自転車は?
そこで登場したのが、発展途上国のための自転車「Worldbike」。デコボコ道にも耐えうるほど丈夫で、修理やメンテナンスがしやすく、しかも低価格という三拍子そろった画期的なこの自転車について詳しくみていこう。
いま世界では、10億人以上がアクセス手段の不足に…。それゆえ、遠くの市場や学校・病院まで徒歩で移動せざるを得ず、必要な医療サービスをすぐに受けられなかったり、学校に通う子供たちが通学途中に危険に遭ったりと、様々な問題が起きている。この課題に対して、自転車は有効な解決策だ。徒歩の3倍の速さで移動することができ、バイクや自動車に比べて安いという利点がある。そこで「Worldbike」は、重い荷物を乗せて凸凹の地形を走行しても大丈夫という耐久性を備えた自転車を設計した。発展途上国の状況をかんがみ、安価で販売できるよう低コスト化に努めるのみならず、修理やメンテナンスも現地でカンタンに実施できるような設計になっている。以下の画像はその一例で、運搬用に設計された自転車だ。
では、実際、「Worldbike」が村をどう変えたのだろう?以下のスライドショーでは、その様子が紹介されている。ケニアのある村では、「Worldbike」の自転車を取り入れたことにより、人々の生活が大幅に改善されたそうだ。たとえば、病院へのアクセスが容易になったことから、出産間近の妊婦への医療が行き届くようになり、乳幼児の死亡率の低下につなげることができた。また、それまでは通学時の安全面のリスクにより進学を断念していた多くの女の子たちが、自転車による学校の送り迎えが可能になったことで、中学校に通えるようになったそうだ。従来、アクセス不足により過剰に輸送コストがかかっていた農村部では、自転車を活用することで安く速く肥料や苗・種を仕入れることができ、その分、収益性が向上したという。
2003年に開始した「Worldbike」の活動は、ケニアのみならずセネガル・ルワンダなどのアフリカ諸国、キューバ・メキシコなど中米、タイを中心とするアジア地域でも展開している。また、彼らの“デザインを通じて社会を変える”という取り組みは広く注目され、発展途上国の課題解決を実現するデザインを推進している米プロジェクト「Design for the Other 90%」でも秀逸な事例として採りあげられた。
発展途上国に自転車を届ける活動としては、不要となった自転車を修理して発展途上国に寄贈するという「Baisikeli」や「Bikes for Africa」といったものもあるが、「Worldbike」とこれらとの違いは、自転車そのものを発展途上国の実状にあわせて設計しているという点だろう。社会的課題に対する解決策を考え、デザインというカタチに表し、そのデザインを製品として実現する。「Worldbike」の取り組みは、デザインが持つ社会変革へのパワーを改めて教えてくれる一例といえよう。
「Design for the Other 90%」イチオシのデザインを調べてみよう。
「Worldbike」の活動に参加しよう。