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自分で自分をムービング!排気ガスでエンジンを動かす”自給自足型”カー

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Love-hearts exhaust pipe: Creative Commons. All Rights Reserved. Photo by evan_stanbury

R水素ネットワーク」やgreenz記事でその復活を紹介した蒸気自動車など、新旧の叡智を結集させ、次世代に向けた持続可能なクルマづくりが世界中で進んでいる。その中でも画期的な試みのひとつ、エンジンの排気ガスを燃料とする”自給自足型”の自動車についてご紹介しよう。

米デバイスメーカーAmerigon Incorporatedの傘下にあるBSSTは、自動車のエンジンから出る排気ガスを変換し、これを燃料にして自動車を走らせるというエネルギーシステムを開発している。このプロジェクトは、米エネルギー省(Department of Energy)からの助成を受け、グローバル自動車メーカー・BMWや米自動車部品メーカーVisteon Corporationなどの民間企業、カリフォルニア大学サンタクルーズ校(University of California, Santa Cruz)や国立再生可能エネルギー研究所National Renewable Energy Laboratory)などの研究機関とともに2005年から取り組んでいるもので、2010年3月までに一連の開発が完了する見込みだ。

以下の画像で示しているとおり、そもそも、燃料のうち実際に自動車の動力として使われるのはわずか25%ほど。残りのうち約50%は排気ガスとして大気中に排出される。そこで、このエネルギーシステムでは、自動車のエンジンからの排気熱を取り込み、電力に変換して動力とするという”循環型動力”を実現しようとしている。燃料効率の向上につながるのみならず、温暖化ガスの排出量も削減できるという”一石二鳥”のエンジンモデルといえよう。

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Basic Structure of “Recycle” Fuel: Copyright(C)2009 BSST, All rights reserved.

このプロジェクトでは、フェーズ1でこのエネルギーシステムの概念に関する技術的可能性を分析した後、フェーズ2~3でシステムの設計や検証作業を実施。先ごろ完了したフェーズ4では、BMWの6気筒エンジンに以下の画像のような熱電気エンジンを搭載し、テストしたところ、燃料効率が12%も向上したことが確認された。

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Catalytic Convertion System: Copyright(C)2009 BSST, thanks to BMW Group, All rights reserved.

この”循環型”エネルギーシステムは、他の分野でも応用できるとみられている。たとえば、以下の動画で紹介されているSolartaxiような太陽光を用いた電気自動車でも、このエネルギーシステムを活用することで燃料効率を向上させることができるそうだ。

ちなみに、2009年上半期、日本で最も売れた新車トヨタ自動車のハイブリッドカー「プリウス」。ガソリンから電力へ、さらには水素やバイオ燃料などへと、自動車の燃料をより環境負荷が低く、持続可能性の高いものに代えていこうという試みは多くみられるが、BSSTのエネルギーシステムのように、自動車の動力そのものを再生可能にしようという発想から生まれた”自給自足”型の仕組みは世界でもまだ例が少なく、画期的な技術として注目されている。実用化までにはまだ多少の時間を要するかもしれないが、持続可能なクルマの有望株として今後も期待大だ。



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