えっ、本の中から植物!?
目を疑うような光景だが、これは合成写真でもパロディでもない。本物の本の中に土を詰め、植物を植えることができる植木鉢、その名も「本鉢」だ。ただ本のカタチをしているだけでなく、不要になった古本をリユースして植木鉢にリプロダクトしたという、本好きにはたまらない一品。外見だけじゃなく、コンセプトも興味深い。
この商品を開発したのは、デザインとエデュトリアルを得意とする東京ピストル。そもそものきっかけは、2月に世田谷美術館分館・宮本三郎記念美術館で開催した「花と本」という展示会において花屋とコラボレーションしたことだった。植物と本の独創的なディスプレイが好評を得て、その後商品化することが決まった。
とはいえ、商品化には何かと苦労を伴った。まずは材料である古本屋を巡ることから始まり、“ツブシ本”と呼ばれる劣化して不要となった古本を買い上げ、一点一点、本文のみを手作業でくり抜いて植木鉢に仕上げていった。しかも、くり抜かれ紙くずとなった部分はどうなるのかといえば、そのまま捨ててしまうのはもったいない、というこちらの気持ちを察するかのように、この部分は東京ピストルで梱包材として使われ、ここでもまったく無駄がない。
当然考えられる防水加工などは、
本自体が朽ちて土に還る
というコンセプトから外れてしまうため、特殊な処理は施していないという。それでは本から水が染み出てしまわないか心配になるが、水をやりすぎず、土が乾いたら濡らす程度の少量の水をあげれば大丈夫なのだそうだ。(ただ、室内向けにはトレーを敷くことを推奨しているので、念のため。)
キットの植物には室内で育てやすいピレア、ワイアープランツ、カランコエなどをセレクトしてあるので、その点は初心者も安心だ。
そして、植物が育つと同時に本が朽ちていくのもこの商品の楽しみのひとつ。ご覧の写真のように自然な風合いが増してきて、ますます味わい深い外観になってくる。
「本鉢」は、6月16日より東京ピストルホームページにて発売を開始。サイズは大・中・小の3通りで、土と植物の苗もセットになっている。しかし、一品物のため、当然ながらそのとき入荷する本によって形状も色も異なる。ホームページでは、古本と植物の在庫状況も確認できるので、自分の好みの本に出会えるまで待ってみるのもひとつの楽しみかもしれない。
大胆な発想と遊び心、そして明確なコンセプトから生まれた本鉢。そのものも土に還る古本から命が育つ光景は、私たちに物を大切にする心と生命の尊さを感じさせてくれるに違いない。
本鉢の公式サイトを見てみよう!