麻生首相は4月9日の日本記者クラブのスピーチで太陽光発電の規模を2020年までに現在の20倍にし、太陽光世界一奪還を目指すと発言した。果たしてそんなことが可能なのか、そして日本と世界の太陽光発電の現状は? 気になるところをまとめてみた。
まず日本における太陽光発電容量は2007年の実績で190万kW(キロワット)で、ドイツ(386万kW)に次ぎ2位、2008年末時点ではさらにスペインに抜かれ3位になったという。2004年まで1位だったことを思うと、一気に世界に追い越された感がある。
麻生首相の「太陽光発電の規模を20倍」という発言の意味はこれを2020年には約4000万kWにするととることができる。さらに政府は2008年7月の「低炭素社会づくり行動計画」で2030年までに2005年の約40倍となる5321万kWにするという目標を掲げている。
実際に発電された電気の量は2007年で20億kW程度とされているから、これも20倍されて約400億kWとなるはずだ。現在の日本の総発電量は1兆1000億kW、この発電量自体が変わらないとすれば、2020年には太陽光発電でその4%をまかなうことができるようになるというわけだ。
しかしそれでも4%、政府は同時に原子力発電の拡充も方針として掲げており、日本の電力が再生可能エネルギーでまかなわれる道筋が立てられているわけではない。もちろんやらないよりはましだけれど、これだけで日本のエネルギー政策が世界のトップを行くといえるかどうかには疑問符がつく。
「太陽光発電を20倍にする」なんていう発言はセンセーショナルでインパクトが強い。しかし、本当に重要なのは必要とする電力自体を減らすことなのではないか。そのためにはひとりひとりの使用量を減らすことも重要だが、現在の大規模な発電所に電力供給が集中するシステムを改め、スマートグリッドの導入などによってシステム自体を効率化することだ。大規模な発電所に電力供給が集中するシステムでは送電時の電力のロスが大きく、実際に必要とする以上の電気を発電する必要が出てくる。
そのためにはまずできるのは家庭や学校といった建物への太陽光発電の普及だろう。麻生首相は電力会社が現在の2倍程度の金額で家庭で発電される電力を買い上げるというプランも発表している。私が注目したいのはむしろこちらのほうで、太陽光パネルを設置することによって利益が出るのであればみな競って太陽光パネルを設置するだろうと思うのだ。そうすれば20倍なんていう数字のまやかしでごまかす必要もない。
「こんなことをやるぞ、すごいだろ」という発言ではなく、みんなが積極的に太陽光発電に取り組みたくなるような具体策を発表することこそ麻生首相と政府の人気を上げることにつながることになると思うのだが…。
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