立派なコケがびっしりの木!誰の顔に見えるか……は置いておいて、今日はこのコケを使った壁面緑化のスゴイ技術革新のお話。街中が緑の壁だらけになる日も遠くないかも!
このたび、スゴイ技術を開発したのは大阪府立大学教授の村瀬氏。なんでも、従来の4分の1の期間で育てることができる緑化用の「スナゴケパネル」の開発に成功したのだという。手入れが容易で冬でも枯れないスナゴケは、建物の緑化にも最適。しかも、パネル状にしたことで、軽量で、傾斜のある屋根や壁面でも簡単に取り付けられるようになった。
これまでもスナゴケによる緑化技術はあったが、育てるのに2~3年かかっていた。これが約4分の1となる半年で育つという今回の技術は、スナゴケを窒素やリンなどを含む特殊な養液に入れて育てた後、温度や光の量を管理した室内に置くことによって実現したもの。これが壁面緑化の普及においてどのような意味を持つのだろうか?
まず、現在の壁面緑化の普及状況を見てみよう。
国土交通省が行った調査「全国屋上・壁面緑化施工面積調査(平成12年~18年)」によると、合計緑化面積は毎年20~30%ほどの伸びを見せ、順調に増え続けているが、壁面緑化面積は屋上緑化の約15分の1ほどしかない。屋上よりも面積では数倍多いはずの壁面緑化が進まない原因はなんだろう?
まずそのひとつには設置の難しさと、それゆえの高コストの問題があるだろう。壁面緑化の半数以上の事例では植栽を垂直の壁面に貼り付ける方法をとっているが、やはり工事が大がかりになる上、壁自体の強度・耐久性に問題があり施工できない場合もある。また、メンテナンスにおいても不良部分の取替えが大がかりになるなど、コストの問題が付きまとう。
もうひとつは、その育成期間の長さ。壁面緑化に使われる植物は、阪神甲子園球場のようなツタなどツル性植物を主体とするものが全体の約8割を占める(同調査より)が、設置後、ツル性植物が育ってある程度のボリュームが出るまでに3~5年もかかってしまう。最初から育ったツタを設置する方法もあるが、こちらはかなりのハイコストを覚悟しなくてはならない。
甲子園のような立派な緑の壁になるには長い年月が必要だった
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この2つの側面を考えると、今回のスナゴケパネルが開発されたことの意味はかなり大きいだろう。壁面緑化におけるコケ植物の割合は現在のところわずか3%ほどしかないが、低コストで実用化すれば今後、壁面緑化の代表格になるかも!?
地球環境保全に役立つ科学技術は日本の得意とするところ。CO2削減につながることはもちろん、壁を覆う緑があふれる街なんて、なんだかワクワクしますよね。今後の商品化、実用化に期待しよう!
いったいどんな技術?村瀬教授の所属する「生命環境科学研究科」ホームページへ!
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