以前こちらでも紹介したGoogleのPower2.0 (スマートグリッド)への参入。その中核を担うのが、家庭での電力消費量をリアルタイムに見ることを可能にするガジェット、「Google PowerMeter」だ。そのウェブの巨人に立ち向かい(?)、自力で自宅の電力消費量をリアルタイムに把握して、おまけにウェブで公開してしまうつわものが現れた。
それが、「Do-It-Yourself Smart Grid Monitor」(作者自称)だ。分電盤にクランプメータを取り付け、電流(アンペア)を測定し、そこから電力(ワット)を推計する。その結果をioBridgeでサーバに配信し、Google Chartsでグラフ化しているという仕組みだ。
クランプメータとは、電流によって生まれる磁場を測定し、電流の大きさを測る機器だ。電気回路に手を入れずに電流を測定できるメリットがある。また、ioBridgeとは、電気・電子機器をウェブブラウザから制御・監視できるようにする装置だ。近年、情報系DIYで人気を集めている。たとえば、ioBridgeを使って、iPhoneを傾けるとビールが注がれる機器を作ってしまった人もいる(以下の動画参照)。
ちなみに、この「Smart Grid Monitor」を作ったJason Wintersさんは、ioBridgeの創設者だそうだ。GoogleやIBM、GEなど、名立たる大企業に個人で立ち向かう、というよりは、「ioBridgeを使って遊んじゃいました」というノリが強いのかもしれない。
GoogleのPowerMeterしかり、Greener Gadget Design Competitionの記事で紹介したこんな機器しかり、エコの世界でも「見える化」がトレンドとなりつつあるようだ。スマートグリッド自体は、以下の補足にあるように、「見える化」よりも、電力系統の効率的な運用に主眼を置いているが、Googleの見解にあるように、この「見える化」のトレンドは、個人が自分の電力消費量をリアルタイムで把握したいというニーズの大きさを示していると言っていいのではないかと思う。
日本では、家庭用太陽光発電システムやエコ住宅の広がりに伴い、エネルギー・モニターを備えた住宅、という形で、電気・エネルギーの「見える化」が進んでいる。こうした動きによって、人々のエネルギー意識・環境意識がさらに高まっていくことを期待したい。
※スマートグリッドの補足:
オバマ政権では、太陽光や風力など、自然エネルギー(再生可能エネルギー)の導入を推進している。自然エネルギーによる発電は、原子力や火力と異なり、その名の通り自然任せで電気が作られる。電気は「生モノ」であるため、作られたそばから消費されないと無駄になるばかりか、供給と需要のバランスが崩れると、電力系統が不安定になる。それが、自然エネルギー導入の障壁とされていた。
スマートグリッドの中核技術は、リアルタイムに変動する自然エネルギーによる発電量に合わせて電気料金を変動させたり、相互接続された他の電力系統と電力を融通し合ったりするような電力の流通制御だ。また、老朽化しつつあるアメリカの電力系統を刷新し、送電時のロスを排除するなど電力の利用効率を高めたり、大規模停電の発生を防いだりすることもスマートグリッド導入の重要な目的の一つだ。
日本では、電力中央研究所でスマートグリッドの研究が2008年から始まっている。
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