グリーン電力として期待が寄せられる風力発電だが、発電用の風車が設置可能な場所が限定されたり、住宅地の近くでは振動や騒音が問題になったりと電力が必要な都市部で風力発電を行うにはさまざまな困難が伴う。しかしその問題を解決する“Green Power Express”というシステムがアメリカでまもなく実現しようとしている。果たしてそれはどんなシステムなのだろうか……。
この“Green Power Express”を推進するのはミシガン州に本社を置くITCホールディングス社で、ノースダコタ、サウスダコタ、ミネソタ、アイオワ、ウィスコンシン、イリノイ、インディアナの7州を対象にグリーン電力を供給するネットワークを構築する計画だ。
上の地図で色の濃い部分は風力発電に適した地域、色の薄い部分は風力発電に適さない地域となっている。そして、適さない地域にはイリノイ州のシカゴやミネソタ州のミネアポリスといった大都市が存在している。
となれば、風力発電に適した地域で発電を行って、シカゴやミネアポリスに運べばいいということになるのだが、問題はそのための送電網である。ITCホールディングスはグリーン電力を効率よく都市に運ぶための送電網として“Green Power Express”の構築を計画しているのだ。
計画ではその送電網は765kVという高電圧での送電が可能で、約5000kmの長さになるという大プロジェクトである。送電線の電圧は高いほど効率よく伝記が送れるわけだが、たとえば日本の場合だと現在は500kVが最大。首都圏では1000kV対応のものも設置されているというが実際の運用はまだ500kVで行われている。つまり765kVという高電圧でグリーン電力を送る送電網はまさに“Green Power Express”(グリーン電力の高速道路)だといえるのだ。
ITCホールディングスは、この“Green Power Express”によって年間12000メガワットの電力の供給(一般的な石炭火力発電所約9機分)が可能で、二酸化炭素を3400万トン(アメリカ合衆国の総排出量の約0.6%)削減できると予想している。現在FERC(連邦エネルギー省)への申請が行われており、2020年のサービス提供開始を目指しているという。
風力発電用の風車の設置自体が難しい日本では実現は困難だが、アメリカのように風力発電や太陽光発電に適した広大で未利用の土地を持つ国にはぜひこういったシステムをどんどん導入してもらいたいものだ。
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