いわゆる“派遣切り”など仕事を失う労働者が多い昨今だが、農業分野では従事者の高齢化と人手不足が深刻である。しかし、農業という仕事も他の仕事と同様に熟練労働であり、失業したから農家に就職しよういうわけには簡単にいかない。農業体験などをした人ならわかると思うが、収穫をするにしたって道具を運ぶにしたって勘所がわからなければ力が要るし、一日仕事をしただけで体のあちこちが痛くなってしまう。
そんな農業が抱える問題を解決するかもしれないツールが東京農工大の遠山茂樹教授らが開発した農業用アシストスーツなのだ。気になる詳細動画は下記に。
これはいわゆる“パワードスーツ”で、これを装着すると人間の筋肉の動きを補助してくれて、通常より少ない力で作業することが可能になる。福祉分野では“HAL”というパワードスーツ(ロボットスーツ)が実用化されているが、農業分野では初めてである。
開発したアシストスーツは、8つの超音波モータを人間の関節に当たる部分に配置した。超音波モータというのは駆動するための振動周波数が超音波領域になるモータで、通常のモータと比べると静止時の保持力が大きく、無通電で保持できるのが特徴。腕を上げたり腰をかがめたりしたまま姿勢を維持して作業を行うことが多い農業分野ではこの超音波モータが大きな力を発揮するのだ。
2、3年後の実用化を目指し、重量を現在の25kgから約半分に軽量化、販売価格は100万円以下に抑える予定だ。これによって農業への従事が容易になり、デザインも格好いいものになれば、農業が若者に人気の職業になるかもしれない。それは農業をすべての基本とするサステナブルな社会にとって非常に喜ばしいことだ。
ところで、東京で最もマイナーな国立大学と言われる東京農工大は、これまで有名なものといえば「生協の白石さん」くらいだったが、その白石さんを「東京農工大学広報大使」に任命して変革を図ろうとしている。
任命の様子
その内容は男女共同参画の推進、国立大学のネットワーク化、植物性廃棄物からの接着剤開発などである。このアシストスーツも含めて農業分野でのエコスゴイ未来につながる技術が開発されれば明るい未来を切り開くリーダーになれるかもしれない。ぜひ頑張ってほしい。