世界が注目する現代美術作家・高嶺格(たかみねただす)が、先日開催した個展「The SUPERCAPACITOR/スーパーキャパシタ」。高嶺氏はインスタレーション・映像・パフォーマンスなど様々なフィールドで活躍しており、今回の個展では夢の蓄電システム「スーパーキャパシタ」をテーマに取り上げた。
ちょっと聞きなれない「スーパーキャパシタ」。大容量蓄電を可能にするもので、エネルギー転換の鍵を握る重要な技術として注目を浴びている。
詳しく解説すると、これは電気二重層を利用したエネルギー蓄積・供給のデバイスのこと。電気二重層とは、固体と液体のような異なる二相が接する面に電気が蓄えられるという現象をいう。ここに電気分解が起こらない程度の電圧をかけると、それぞれの面にイオンが吸着し、電気が蓄えられるという仕組みだ。
構造に使われている活性炭は、細かい穴が無数にあいていて表面積を稼ぐことが出来る。それにより、従来にくらべて大容量かつ低等価直列抵抗(ESR)を実現した。
このデバイスの優れている点は4つ。
・物理的な吸着・離脱で充放電を行うため、特に劣化するところがなく、原理的に寿命は半永久的
・イオンの移動は化学反応よりはるかに早いため、バッテリには真似のできない急速充放電が可能
・低温でもその働きが低下することが少なく、バッテリが動作不能となる極低温(-25℃まで)でも問題なく動作する
・重金属を使用していないので、環境負荷を軽減できる。屋外の設置も可能
つまりは、耐久性のある無害な蓄電装置なのだ。今、アブダビ首長国の自然エネルギーだけで電力をまかなう人工都市「マスダール・シティ」の建設が始まるなど、脱化石燃料へ向けた動きは世界中で進行している。このデバイスがあれば、飛躍的な発展をとげることが可能だろう。また、私たちの生活においても、携帯電話やパソコンの長寿命化や自動車の効率的なエネルギー利用が可能になる。
しかしこれだけ夢のある「スーパーキャパシタ」だが、高価格という問題点もある。普及させるためには、なんとか低価格にして、自然エネルギーで生活するという夢を現実化していきたいものだ。