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エコデザインマテリアル入門(1)~未利用資源を有効活用した”光遼板(コウリョウバン)”~

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greenzのYOSHです。あたりまえの話ですが、モノを作るためには素材や材料が必要です。環境に配慮した製品やグリーン建築が一般にも広がりつつある現在、素材が環境に与える影響にも関心が向けられるようになってきています。そのような環境配慮型の素材を、「エコマテリアル」と呼ばれています。しかし、メーカーから見ると「エコマテリアル」の情報がない、素材メーカーはせっかく「エコマテリアル」を作ったのに、なかなか製品作りにつながらないという現状があるようです。

そこで、東京造形大学発のベンチャー”LLPサステナブルプロジェクト“は、サステナブルな社会を実現するための、これからの素材”エコデザインマテリアル“のデータベースを構築して、エコマテリアルの普及を促進させようとしているわけです。彼らがまず作ったのは、今現在手に入れられるエコマテリアルが一目で分かる充実のサンプルキット。そのできばえと愛情に感動したgreenz.jpメンバーから、LLPコアメンバーの島津洋平さんにお願いし、数回にわたって「エコマテリアル」が分かる解説コラムを書いていただくことになりました!エコマテリアルから未来が見えてくる!?


「何か茎のような物が集まっていて、しかもキャラメルの香ばしい匂いがしておいしそう」最初に見た時のインパクトは忘れられない。同じ柄が一つとしてなく、集成された迷路のような茎をずっと眺めていても飽きないおもしろさがある。

この素材「光遼板」はアメリカ、インド、中国など世界各地で食用として生産される1年草でイネ科の高粱(コウリャン)の茎部分を使った多目的なボード。木材など収穫までに数十年かかるようなことはなく、毎年コンスタントに収穫が可能である。そして、乾燥にも強い。米や麦などが育たない所でも栽培が出来てしまう。バイオプラスチックの一つである「ポリ乳酸」の原料にもなるトウモロコシの実など食用部分ではなく、いままで使い道がなかった茎の部分(未利用資源)を使っているのもサステナブルなポイントである。


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高粱の畑

実は開発の経緯も面白い。司馬遼太郎の対談集のなかにある「高粱の茎は竹のように堅い・・・」という一節をヒントに開発が始まった素材なのだ。集成するときに必要なバインダー(接着剤)もホルムアルデヒド等の有害物質を含まない接着剤を使用していて、健康面の配慮についても高い基準で作られている。また、様々な方向で集成されているので反りづらいという集成材の特徴も持っている。


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ギター

気になる使い道はどうか?多目的利用が可能な素材とあって実際に様々な物に使われている。一般的には家具、店舗什器などの材料として使われているが、上記の写真のように楽器(ギター)などもあり、用途は考え方によっては無限大である。

素材を実際にカットするには一般木材と同じ加工機械が使用できるのも便利である。しかし、普通の木材と同じように家具や什器を製作するにはコツがいるので注意が必要。それでもエコデザインマテリアルの中では非常に加工しやすい部類だろう。 もし、この素材で出来たテーブルが家の中にあったら、美味しそうでお腹がグーグー鳴りそうだ。


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ただし、環境問題やサステナブルな社会背景まで考えると、エコマテリアルだからといってどんどん使うことが良いことなのか?ということにも想像を広げたい。素材の生まれた過程やバックグラウンドまで考える必要がある。例えば、「素材のライフサイクル」。どこで取れて、どのような方法で生産されて、どこで、誰が使うのか?そしてどのように廃棄、またはリサイクルするのかといった、全体のプロセス(環境効率)を考えて使う事が重要だ。


LLPサステナブルプロジェクトでは「エコ」、「サステナブル」、「デザイン」といったキーワードで集められた「エコデザインマテリアル」をデータベースにして公開しています。光遼板のお問い合わせは光洋産業株式会社、または有限責任事業組合/LLPサステナブルプロジェクトまで